2023-02-10

2030年のSDGs達成に向けて、OECD諸国はいまどこにいるのか

2030年のSDGs達成に向けて、OECD諸国はいまどこにいるのか、という報告です

美しいデータの可視化が印象的です✧

The Short and Winding Road to 2030 Measuring Distance to the SDG Targets 全日本語訳です。

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» ニュース「持続可能な開発目標を2030年までに達成するというOECD諸国の歩みは鈍い(日本語)
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「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は前例ない野心を持っています。17の目標、169の具体的な目標に支えられたアジェンダの複雑で統合された性質を考えると、各国は大きな課題に直面しています。OECDは各国政府の実施支援のため、SDGsの目標と具体的目標間の進捗を、時間経過にそって比較できる独自の方法論を開発しました。

この報告は、持続可能な開発目標のためのグローバルな指標を集めた枠組みに基づき、国連とOECDのデータを活用したものです。OECD加盟国の2030アジェンダの目標と具体的目標のパフォーマンスを高水準で評価します。

本報告書は、OECD加盟国のSDGs目標達成までの距離を、現在入手可能なデータを用いて評価します。さらに、一歩進んで長期的な傾向を特定し、COVID-19によってどのように影響を受けるかも考慮し、分析を深めました。

データを可視化して分析。新たな発見を得よう!(スライド)

2030年への短く曲がりくねった道

要約

2015年9月25日、国連で世界のリーダーによって採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、「誰一人取り残されない」という包括的な目的のもと人、地球、繁栄のための広範かつ野心的な行動計画です。中核は、17の持続可能な開発目標(SDGs)と、目標達成のための169の具体的目標です。

OECDは、SDGs達成の支援に全力を尽くします。この取り組みは、2016年12月にOECD理事会で承認された「SDGsに関するOECDアクションプラン」で強調されています。

行動計画は、OECDが法的手段、政策分析の専門知識、統計・指標・パフォーマンス監視システムを通じて2030アジェンダを支援する方法が説明されています。この広範な計画の一環として、OECDウェルビーイング・インクルージョン・持続可能性・機会均等センターは、OECD加盟国がSDGの目標を達成するために必要な距離を測る独自の方法論を開発しました。

本報告書『2030アジェンダへの短く曲がりくねった道』は、国連とOECDのデータを活用し、2030アジェンダの目標とその具体的目標にわたるOECD加盟国のパフォーマンスを高水準で評価したものです。現在、第4版となる「SDGs目標への距離の測定」報告書は2016年に試験的調査として初めて公開されました。

本報告書は、これまでの作業を基に作成します。現在の達成状況と最近の傾向の両方、つまり各国が目標に向かって進んでいるのか遠ざかっているのか、2030年までに約束を果たす可能性がどの程度あるかを調べるとともに、COVID-19パンデミックの影響をどのように受けそうかを検討し、分析を深めたものです。このため本報告書は、SDGs指標に関する機関間・専門家グループが監修したグローバルな指標の枠組みと密接に連携します。

SDGsは、将来の世代に対する私たちの約束であり責任です。すべての人々の包括的かつ持続可能な未来の実現のために、国が協力して取り組む唯一無二の機会です。この点で、OECDは政策とデータに関する専門知識を通じ、いくつかの国のSDGs実施の取り組みを支援します。この報告書は、加盟国が2030アジェンダ達成の優先設定、評価、モニタリングに向けた取組の更なる支援が目的です。

謝辞

本報告書は、OECD統計政策委員会(CSSP)の各国代表から寄せられた初期ドラフトに対する有益なコメントをもとに作成されたものです。彼らの貢献と助言に感謝するとともに、この報告書が彼らの業務に役立つことを願います。※名称略

見解・解説

この社説が書かれている今、ヨーロッパで戦争が勃発しています。

2022年ロシアのウクライナ侵攻 – 2022年2月24日に開始されたロシア連邦によるウクライナへの全面侵攻 / 出典: Wikipedia
    ウクライナの領土 ロシアの占領地域

ロシアによるウクライナへの大規模侵略によって引き起こされた恐ろしい危機は、明確な国際法違反です。ルールに基づく国際秩序にとって深刻な脅威です。ヨーロッパ大陸の平和と安定への直接的な脅威であり、基本的人権が危険にさらされています。持続可能な開発目標(SDGs)達成の可能性にも暗雲を投げかけています。

危険は現実です。ヨーロッパ大陸をはるか超えて世界平和と安全が破壊される可能性があり、世界中の多くの国がこの侵略による経済的・社会的影響を受けることが予想されます。

ロシアのウクライナへの攻撃は、低所得国や新興国を含むほとんどの国が、依然としてコロナパンデミックからの脱出やその影響への対処に苦闘している最中に起こっています。本報告書が示すように、パンデミックは多くの経済的・社会的な不均衡を悪化させ、多くの目標・目的達成を困難にしています。

世界中でパンデミックは雇用の見通しや生活水準に長期的なダメージを与えるとともに、公的資金の財源を圧迫します。脆弱な人々は、その影響を最も強く受けます。たとえば、若者は危機によって特に大きな打撃を受けるため(適切な行動がなければ今後も)、将来も危ういことを意味します。

けれども、SDGsを進める各国政府の努力は無駄になってはいません。2015年に2030アジェンダが採択されて以来、たとえばジェンダー平等の推進、温室効果ガス排出の抑制、暴行・殺人による死亡の減少に進展に見られるように、OECD諸国の大半はSDGs実施に向けて重要なステップを踏んできました。

興味深いことに、ほぼすべてのOECD加盟国が、環境保護地域の拡大や若者の雇用のための国家戦略、政策、規制の枠組みを採用しました。測定にも大きな進展がありました。SDGsの採択以来、統計上の格差は大幅に小さくなり、2016年には半分以下だった目標が現在は、ほぼ8割を追跡できるようになりました。この重要な時期、世界が直面する地政学的、経済的、社会的な厳しい課題にもかかわらず、楽観的になる理由が少なくとも3つあります。

1つ目、ウクライナにおける国際法違反と人権侵害の可能性に対して、OECD加盟国と同じ価値観を持つ世界中の民主主義国と国々が一致団結していることです。ウクライナへの連帯表明は、世界のあらゆる地域、あらゆる階層からなされています。政府、市民、市民社会、企業のすべてが、ウクライナ国民とその民主的に選出された政府を支持する姿勢を示しています。これは、SDGsの中核である平和、法の支配、強固で結束力ある制度への共通のコミットメントを浮き彫りにしています。

2つ目、COVID-19では、多くの政府や国民がこの規模の世界的危機への備えがなかったことがわかりました。けれども、世界全体としてはこの試練から学ぶことができました。これらの教訓は、より効果的にパンデミックに対処し、さらなる深刻な事態発生を防ぐために活用されました。

OECD地域では、たとえば大規模なワクチン接種キャンペーンの展開や、前例ない財政的対応を見ることができます。パンデミックは終わっていませんが、OECD諸国の衛生対策はパンデミック期間中も改善され続けています。

3つ目、2030年以降を見据えた長期的視点に立ち、人類が直面する重要な共通課題の気候変動に対応するため、各国が積極的に行動していることが挙げられます。

本報告書は、海洋酸性化、海洋ゴミ、富栄養化、生物多様性の損失など、SDGsの一部が達成から遠ざかっていることが示されています。けれども、COP26(国連気候変動枠組条約 UNFCCC の第26回締約国会議)の成果や、最近の生物多様性条約における生物多様性のグローバルな枠組みの進展が示すように、国際的行動の勢いは強いものがあります。SDGsを前進させるチャンスです。

残された時間が短いことを考えると無駄にするべきではありません。チャンスを捉えるためには、2030年アジェンダにおける各国の立ち位置、目標に向けた進捗の速さ、行動の優先順位について理解する必要があります。

これが、2016年初版発行、今回で第4版となるOECD報告書「2030年への短く曲がりくねった道: SDGs目標への距離の測定」の目的です。

この報告書は、SDGsに関するOECD理事会行動計画の主要な柱の一つで、OECD諸国がSDGs目標に対して現在どのような状況にあり、どこにいるべきかの確認に役立ちます。これは、エビデンスに基づいた持続可能な道筋を提案します。それは、SDGsに関連する公共政策の、経済・社会・環境分野における専門知識、データ、良い実践、基準の主要な供給源としてのOECDの役割を再確認するものです。

そして、OECDの特徴的アプローチを用いることで、SDGs実現に役立つより良い、より首尾一貫した政策の「トップへの競争」を促します。OECDのSDGs目標への距離測定報告書は、国連とOECDの情報源から高品質な統計を活用し、グローバルなモニタリングのために国際的合意の指標に基づき、2030アジェンダの目標とその具体的目標におけるOECD諸国のパフォーマンスを高く評価します。

すべての人にとっての持続可能な未来は、正確な情報とデータなしにはあり得ません。この報告書はその証しです。

要旨

2030アジェンダは、人、地球、繁栄のための野心的な目標を掲げています。
OECD諸国はSDGs達成に向けて、どの程度進んでいるでしょうか?
COVID-19パンデミックは各国の進捗にどのような影響を与えたでしょうか?
OECD諸国の立ち位置の評価は、現在わかっていないことにどれだけ影響を受けているでしょうか?

OECDの報告書『2030年までの短く曲がりくねった道: SDGs目標への距離の測定』は、加盟国がSDGsに関して現在どの位置にいるかを評価し、最近の軌道の方向性とペースを評価し、さらなる努力が必要な領域特定を目的とします。

また、SDGs達成と、この広大なアジェンダの中で何を優先させるべきか、双方にどのような影響を及ぼすか、まだ分かっていないことがどれだけあるかを示し、今後の統計的アジェンダを提示します。

OECD諸国は2030年の目標達成に関してどのような状況にあるのか?

残り10年を切った今、2030年アジェンダを達成するためには、より強力な政策行動が求められます。これまでOECD地域全体では、パフォーマンスを測定できる112の具体的目標のうち10を達成しました。さらに、18(主に基本的ニーズの確保、政策手段・枠組みの実施に関するもの)について達成に近づいていると考えられます。けれども、まだやるべきことは多いです。21のターゲットは達成には程遠く、どれも進捗があるとは言えません。

特に、誰も取り残されない、制度への信頼回復、自然環境への圧力を制限など、いくつかの重要な分野では各国の努力を強化する余地があります。けれども、2030アジェンダは本質的にグローバルなものであり、OECD諸国は国境を越えた努力を継続すべきです。

OECD諸国は包摂を促進すべきです。OECD 諸国の住民の8人に1人は所得的に貧困状態であり、過去数十年の間ほとんどのOECD諸国は貧困削減に向けて前進していません。女性、若年層、移民など多くのグループは、一般の人々よりも大きな課題に直面しています。

たとえば、進歩はしているものの女性の権利と機会は私的・公的、両方の領域でまだ制限されています。さらに、社会経済的に低いグループに多く見られる栄養失調やタバコの消費などの不健康な行動、教育における格差はさらなる不平等を助長する傾向にあります。

パンデミックによって民主主義にとっての信頼の重要性が浮き彫りになりましたが、OECD諸国は依然として目標達成には程遠い状態です。信頼と透明性は、社会が衝撃を受け入れ、立ち直るために不可欠です。けれども、入手可能なデータは、先進国における人々の制度に対する信頼が長期的に低下していることを示します。

政府に対する信頼は市民と政府との間の、経済的、社会的、政治的な相互作用の組合せを反映するものです。OECD諸国は公共機関へのアクセス性、説明責任、透明性、多様性など、信頼にとって重要な分野に関連する指標に対して、まだ十分な進捗を遂げていません。

環境に対する圧力は高まっています。OECD諸国では資源や汚染を多用する生産の海外移転によって、いくつかの分野で一定の進展がみられました。けれども、経済成長を支えるための物質的資源の使用量は依然として多く、貴重な物質が廃棄物として処理され続けています。気候面では、温室効果ガス排出量の削減がある程度進んでいるにもかかわらず、経済成長率に影響を及ぼす可能性があります。

また、G20 諸国が非効率的な化石燃料への補助金廃止を約束したにもかかわらず、主要国は依然として化石燃料の生産と消費を支援しています。生物多様性に関しては、生態系の保護に関するいくつかの心強い進展にもかかわらず、陸上および海洋の生物多様性への脅威は増加し続け、2020年までに達成されるべき21の生物多様性愛知指標のうち、すべてのOECD加盟国が達成していません。

COVID-19パンデミックはSDGs達成の進捗にどのような影響を与えているか?


2030アジェンダの目標に向けたOECD諸国の進捗
は、2019年後半からのCOVID-19パンデミックの発生により大きな影響を受けています。2021年11月の時点で、OECD諸国はCOVID-19による230万人を超える死亡を報告しました。死亡者数が多いことはもちろんですが、パンデミックによって引き起こされた危機は多くの面で前例のないものです。

一方、パンデミックは、いくつかの良い展開ももたらしました。COVID-19危機による経済活動の縮小は、環境条件の一時的改善につながりました。COVID-19危機はまたマクロ経済政策に関する前提条件を見直すようOECD各国政府に促し、過去50年間に観られなかった規模の財政対応を導いています。ほとんどの OECD 加盟国政府によって展開された復興策は、「より良いものに再建する」機会を提供し、将来のショックに対処するシステム的な強化の機会です。

このスナップショットはデータ欠落によってどのように影響を受けるか?

すべての国がSDGsに向けた進捗の追跡能力を持つことは、2030アジェンダ全体の成功にとって、またCOVID-19復興対策がSDGsと広く整合することを保証するためにも重要です。OECD政府が依然として直面する課題の一つはSDGsに関する進捗状況や、2030年までの道筋をどの程度理解しているかについて、まだ多くの盲点があることです。データの欠落は、2030年アジェンダに向けた進捗状況の評価に影響します。慎重に理解されなければ、偏った結論に至る可能性があります。

たとえば、SDGs報告の枠組みが不完全であったり、最新のものでなかったり、最新トレンドの包括的な評価をできない場合、政策の効率についての推論は間違ってた結論につながるかもしれません。

利用可能なデータによって169の具体的目標のうち136をカバーできますが、データの中には現在の成果や時系列でのパフォーマンスを適切に評価できないものがあります。入手可能性だけでなく適時性や粒度など、他にも多くの欠落が2030アジェンダへの進捗状況の理解に影響を与えます。

概要

2015年に国連の全加盟国が採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、前例ない野心を持つ一方、各国に複雑な課題を突きつけます。この報告書は、OECD加盟国がSDGsを監視・報告する義務を果たすためデータが存在するSDGsの各指標の達成状況について、OECD加盟国がどの程度進んでいるかの調査を目的としています。

この章では、いくつかの具体的目標はすでに達成されているものの(主に、まともな生活水準の確保や政策手段、枠組みの実施に関するもの)、多くの分野でOECD諸国はまだ長い道のりを歩んでいるとわかりました。特に、OECD諸国は誰も取り残されないための取組を強化し、制度に対する信頼を回復し、自然環境への圧力を抑制する努力をする余地があります。

OECDのデータの取組の中心は、2030アジェンダを監視するために設置された世界規模の指標の枠組みに貢献することですが、「2030年までの短く曲がりくねった道: SDGs目標への距離の測定」報告書は、2030アジェンダの目標および指標にわたる加盟国のパフォーマンスについてハイレベルな図を提供します。

SDGsのフォローアップと評価のためのグローバルな枠組み

2030アジェンダには、17の「持続可能な開発目標」が含まれています(図1.1)。コミュニケーション上、これらの目標は5つの大きなテーマ「5P」に分類されることがあります。

  • 人々(目標1~5に大 別 ) 
  • 地球 ( 目 標 6 、 12 、 13 、 14 、 15 ) 
  • 繁栄( 目 標 7 ~ 11 ) 
  • 平和( 目 標 16 )
  • パートナーシップ(目標17)

これらの目標およびその基礎となる指標のほとんどは、特に開発、環境、人権に関するこれまでの国際的な合意に基づきます。

図1.1.持続可能な開発目標

SDGsの17の目標は169の具体的目標に支えられており、いくつかは2030年までに達成すべき成果や展開すべき政策が明記されています。これらの目標に対する進捗を監視するため、2015年に国連統計委員会(StatCom)は、各国統計局(NSO)の専門家と国際機関(OECDを含む)のオブザーバーからなるSDG指標に関する機関間専門家グループ(IAEG-SDGs)を設置し、グローバルな指標の枠組みを開発・実施することとなりました。

これは、2030アジェンダのゴールと具体的目標のための指標です。これら指標は開発段階が異なり、既に方法論が確立され定期的にデータが収集されているものもあれば、まだ概念開発やデータ収集の初期段階にあるものもあります。これらのグローバル指標はIAEG-SDGsによって、その方法論の発展とデータの利用可能性に基づき以下のように3層に分類されています。

  • 階層 I 指標は、概念が明確で、確立された方法論と基準に基づき、各世界地域の人口の少なくとも50%を占める国が定期的に収集している。
  • 階層 II 指標は、概念的に明確で、確立された方法論と基準に基づくが、各国によって定期的に収集していない。
  • 階層 III の指標は、まだ方法論や基準が確立されていない。

IAEG-SDGsは、グローバルな指標の枠組みに含まれる方法論やデータの利用可能性が時間とともに進化し続けているため、定期的に指標の階層分類を改訂しています。この報告書の作成時点では、グローバルな指標の枠組みに含まれる231の指標のうち、130の指標が階層 Iに、97の指標が階層 IIに、そして1つの指標が階層 IIIに分類され、残りの4つの指標は複数の階層(指標の異なる構成要素が異なる階層に分類されている)を持っています。

指標の階層レベルは目標によって異なります。たとえば、以下に関する指標の80%以上が階層 I に分類されています。

  • 健康と福祉(目標3)
  • 手頃な価格のクリーンエネルギー(目標7)
  • 産業・イノベーション・基盤整備(目標9)

一方、以下に関する指標の3分の1 未満が階層 I に分類されています。

  • ジェンダー平等(目標5)
  • 気候行動(目標13)
  • 持続可能な都市とコミュニティ(目標11)
  • 平和・正義・強い制度(目標16)

毎年、国連事務総長は、世界的な指標枠組みを起点とした地域・世界レベルでのSDGsの進捗状況の概要を作成し(UN, 2021)、各国政府は各国での達成状況を監視・報告する責任があります。SDGsは世界規模に達成されるものですが、2030アジェンダでは国レベルでの実施は各国の事情に応じたものとされています。

“持続可能な開発目標と具体的指標は、統合的かつ不可分であり、世界規模の性質を持ち、普遍的に適用可能であり、異なる国の現実、能力、開発レベルを考慮し、国の政策と優先順位を尊重します。”(国連、2015)

SDGsモニタリングに向けたOECDの貢献

2030アジェンダ実施において国際社会やOECD加盟国・パートナー国を支援するため、OECD理事会は2016年12月に「SDGsに関する行動計画」を採択しました(OECD, 2016)。行動計画の目的は以下3つです。

  1. 各国がSDGsに関連して現在どのような状況にあり、どのような状況にあるべきかを特定し、エビデンスに基づく持続可能な道筋の提案を支援すること。
  2. OECDがSDGsに関連する公共政策の経済、社会、環境領域における専門知識、データ、良い実践、標準の主要な情報源としての役割を再確認すること。
  3. OECDのアプローチ(例: 相互レビューと学習、監視と統計報告、政策対話、ソフト法規)活用を通じて、SDGs達成に役立つより良い、より首尾一貫 した政策のための「トップへの競争」を奨励すること。

これらの目的を念頭に置き、OECDは4つの主要な行動分野を特定しました。

  • OECDの戦略や政策ツールに「SDGsレンズ」を適用する。
  • OECDのデータを活用し、SDGs実施の進捗を分析するのに役立てる。
  • 国レベルでの統合された計画と政策決定に対する OECD の支援をアップグレードし、SDGsのための統治に関する経験を各国政府が共有する場を提供する。
  • SDGsがOECDの対外関係に与える影響について考察する。

OECDは、OECD行動計画の実施状況について加盟国に毎年報告し、OECDの分析と勧告によって加盟国の実施努力を支援します。OECDの活動の多くはSDGs関連です。これには、国際協力やグローバル・ガバナンスの重要性だけでなく、「誰も取り残されない」(LNOB)という包括的原則や、OECDの業務プログラムに組み込まれている「5P」(=人、地球、繁栄、平和、パートナーシップ)に関する政策作業など、2030アジェンダの普遍的価値観が含まれます。

2015年以降、OECDは、多くのOECDレビュープロセス(環境パフォーマンスレビュー、投資政策レビュー、パブリックガバナンスレビュー、デジタル政府研究レビュー、開発援助委員会ピアレビューなど)や分析論文やその他の出版物にSDGsの視点を組み込む措置をとっています。

SDGsのモニタリングに関して、OECDは国連のSDGs指標に関する機関間・専門家グループ(IAEG-SDGs)のオブザーバーとしてSDGsグローバル指標枠組みの構築に貢献しました。また、OECDはグローバル指標の枠組みで取り上げられる多くの指標のカストディアン(顧客の資産を管理・保管業務を行う企業や機関)、またはパートナー機関でもあります。

それは、政府開発援助(ODA)やその他の国際的フロー、ジェンダーに基づく法的差別(OECD開発センターの社会制度とジェンダー指数(OECD, 2019)に関する作業を活用)、また民事司法へのアクセス(OECD, 2021)、生物多様性に関する政策手段(カルーサス, 2018)に関するデータをSDGグローバルデータベースに直接供給しています。

本報告書の目的と性格

2016年に初めて発表され、今回で第4版となる「OECDによるSDGsへの距離測定」報告書は、国連とOECDのデータを活用し、国レベルでの2030アジェンダの目標およびその具体的目標にわたるOECD加盟国のパフォーマンスについて高レベルの評価を提供します。これら報告書は、SDGsに関するOECD行動計画、特に行動領域2「SDGsの実施における進捗分析に役立つOECDデータの活用」に寄与するものです。

これらの報告書は、OECDの各局が実施するテーマ別レビューに取って代わるものではなく、むしろ、加盟国が2030アジェンダに署名する際に約束した政策公約を満たすために、以下の形で支援することを意図します。

  •  SDGsのアジェンダの中で戦略的な優先順位を設定し、進捗を追跡するために各国が利用できる比較指標を特定すること。
  • 各ターゲットに対するOECD加盟国の最新のポジションを評価し、OECDの平均値と比較することで背景を理解すること。
  • 進捗を確認するため、あるいはSDGs目標の政策的推進要因の理解を進めるために、統計の整備が特に重要となる主要なデータギャップを強調すること。

今回の「SDGs目標への距離の測定」は、これまでの作業を基に作成されています。現在の達成状況と最近の傾向の両方、つまり各国が目標に向かって進んでいるのか遠ざかっているのか、また最近の傾向から2030年までに公約を達成する可能性がどの程度あるのかを調べ、さらにCOVID-19の流行によってどのような影響を受ける可能性があるかを検討することで分析を深化させるものです。

この目的のために本報告書は、グローバルな指標の枠組みに沿った国連とOECDのデータを利用し、同時にSDGsグローバルデータベースをOECDの素材で補完して、特定の問題の分析を深めます。

加盟国は、これまでの「SDGs目標への距離の測定」報告書をモニタリングプロセスの指針として自国の指標の頑健性を検証し、自国のベースラインを策定するために利用してきました。各国のSDGs実施プロセスの一環としてOECD加盟国のいくつかは、これらの報告書からのエビデンスを以下のように利用してきました。

  • SDGsに関するコミュニケーションや、国別モニタリングの演習に比較の視点を加える(デン18マーク統計局, 2017、スロベニア共和国政府, 2018、オランダ統計局, 2018)。
  • 国別モニタリングと報告システムを開発する(チェコ共和国政府事務所, 2017、Bureau fédéral du Plan, 2019)。
  • 政策に関連する行動領域を議論する(Slovak Academy of Sciences, 2017)。

SDGsに関して、OECD諸国はどのような状況にあるか?

いくつかのSDGsの目標は平均してほぼ達成されていますが、持続可能な開発のための2030アジェンダの17の目標全体ではパフォーマンスは非常に不均衡です。図 1.2 は 17の目標それぞれについて入手可能なデータに基づき OECD の目標に向けた進捗状況のスナップショットを示しており、特定の目標を検討する場合でも目標までの距離や時間的なトレンドには大きな違いがあります。

  • 平均して、OECD諸国は17の目標のうち12の目標について、少なくとも25%をすでに達成しているか、達成に近づいています(図1.2のパネルAの薄青色)。逆に、ジェンダー平等(5)、気候変動対策(目標13)、格差是正(目標10)に関する目標(図1.2のパネルAでは中程度青色)は、達成が近いと分類される目標が存在しません。

  • OECD諸国は、ジェンダー平等に関する目標5、地球に関する目標のうち3つ(清潔な水と衛生に関する目標6、気候変動対策に関する目標13、水中生活に関する目標14、安価でクリーンなエネルギーに関する目標7に対して平均して前進しています(緑と黄色で示した図1.2パネルB参照)。

  • ほとんどの場合、2030年までに目標を達成するには、進捗が不十分です(黄色)。逆に、人に関するすべての目標について2030年の目標達成に向けて進んでいるものもありますが、ほとんどの場合、進捗は遅れているか逆に減少しています(赤色)。

図1.2. 目標までの距離の分布と時系列での傾向(OECD 平均)

注:1~17の数字は目標を表しています。
1: 貧困ゼロ、2: 飢餓ゼロ、3: 健康で豊かな生活、4: 質の高い教育、5: 男女平等、6: 清潔な水と衛生、7: 安価でクリーンなエネルギー、8: まともな仕事と経済成長、9: 産業、イノベーション、インフラ、10: 不平等解消、11: 持続可能な都市と地域、12: 責任ある消費と生産、13: 気候変動対策、14: 水の下の生命、15: 陸の生命、16: 平和、正義と強い制度、17: 目標へのパートナー シップ を表すものです。これらの目標は、5つの大きなテーマ(”5P”)に分類されます。人々、地球、繁栄、平和、パートナーシップの5つのテーマで構成されています。

パネルAは、2030年までに達成すべき目標レベルからの距離という観点から、ある時点におけるOECD諸国の平均的パフォーマンスを示します。パネルBは、各指標の最近の動向に基づいてOECD諸国が平均的にどのような成果を上げているかを示します。これは、最近の傾向に基づいて「2030年までに各目標を達成する可能性」を示します。OECD平均は、データが入手可能なOECD加盟国全体の単純平均として測定されます。各目標の平均は、与えられた目標に関連する各ターゲット間の距離の単純平均に基づくものです。パーセンテージは、データが入手可能なターゲットについて計算されたものです。
出典:UNDESA, 2021SDGs Global Database, OECD.Stat, StatLink 2

これらの結果は、「持続可能な開発目標のための10年の行動」(UN, 2020)が不確実性に満ちていることを示唆します。SDGs達成まで残り10年を切った今2030アジェンダを成功させるためには、より強力な政策行動が必要でしょう。また、OECD加盟国の目標と課題に対するパフォーマンスには大きな異質性があります。

本報告書では4つのテーマ別の章を設け、それぞれの目標に対するOECD諸国の達成状況をより詳細に記述しています。4つの章は、OECD諸国が異なる目標を達成する上でどのような立場にあるかをより包括的に示し、国別プロファイルは各国のパフォーマンスとデータの利用可能性の詳細に踏み込んでいます。本章では、OECD諸国の主な強みと弱みを概観します。

ボックス1-1.SDGs測定における主な課題

本報告書は、IAEG-SDGs1が監修した世界規模の指標の枠組みと密接に連携しています。ですので、2030年アジェンダを設定する際に国連加盟国が合意した野心レベルを反映しています。これにより、SDGsの目標に対する各国の達成度を把握できます。ただし、これらの推定値は以下の点に留意して解釈する必要があります。

⚫︎SDGsを実施するための戦略的優先事項を特定しようとする場合、国は目標やさらに広いカテゴリー(5P)に注目するのではなく、具体的目標に対するパフォーマンスに注目すべきです。目標レベルでの達成度は、特定の目標を考慮した場合でも大きく異なります。目標レベルでの平均的な目標レベルの距離は、それらの違いを覆い隠し、より強力な政策行動が必要な特定の目標を特定する妨げとなるかもしれません。

⚫︎目標レベルで国のパフォーマンスを評価する場合、データ欠落に起因する多くの盲点に注意を払う必要があります。たとえば、「地球」カテゴリーに属する指標の70%近くは現在データが利用可能ですが、堅牢な時系列データがないため経時的にモニタリングできるのは3つに1つです。

⚫︎目標水準は可能な限り2030アジェンダの文言を参照して設定されていますが、これら目標には野心の大きな格差が見られます。たとえば、気候変動関連の指標(主に目標13)については、SDGsの合意から1年以上後に気候変動に関するパリ協定が発効したため野心度が特に低く、2030アジェンダはパリ協定の野心度を下回って見受けられます。

また、SDGsのターゲットは、具体的目標によって表現が異なります。
・強い規定動詞で表現された具体的目標
→「根絶する」(例: 目標1.1「極貧の根絶」)
→「終わらせる」(例: 目標5.1「すべての女性及び少女に対するあらゆる形態の差別の終結」)
・より緩やかな定義
→「ごみの発生を大幅に削減」(目標12.5)

さらに、本報告書に含まれる予測は潜在的な進歩の規模を示しているに過ぎず、OECD諸国が過去10年間に達成したと同ペースで前進し続けた場合、2030年までにどこまで到達し得るかを示すと解釈されるべきです。その結果、入手可能なデータの遅れを考慮すると表示された進捗ペースは、すでに発表または制定されたものの、まだその効果を十分に発揮していない措置を反映しません。また、進捗ペースはパンデミックが各国の軌道に与えた影響を反映しません。

注:本報告書で使用したすべての指標と時系列はグローバルな指標フレームワークと密接に連携していますが、場合によっては、OECD加盟国間の比較可能性の必要性を認識しつつ特に現在比較可能なデータがない指標や目標のモニタリング、あるいはOECD諸国が直面している政策課題に合わせた分析のために世界規模の指標の枠組みを超えています(詳細は方法論付属書を参照)。このような世界規模の指標枠組みに含まれない指標は、テーマ別の章において強調されています。


目標に対する進捗状況主な成果

SDGsの進捗には、169の具体的目標の考察に基づく各国の強みと弱みのきめ細かい理解が必要です(図1.3)。

  • 現在の達成状況(内側の円)
  • OECD諸国が2030年の公約達成の軌道に乗っているか、少なくとも進んでいるか(外側の円)

全体として、いくつかの目標はすでに達成されています(主として、基本的ニーズの確保と政策手段および枠組みの実施に関する目標-表 1.1参照)。けれども、多くの領域において OECD諸国はまだ長い道のりです(図 1.3)。特に、OECD諸国は誰も取り残されないようにし、制度に対する信頼を回復し、自然環境に対する圧力を制限する努力を強化する余地があったかもしれません(表1.2参照)。

図1.3.OECDのSDGs目標達成までの平均距離


出典:すべてのデータは、(UNDESA, 2021)、SDGs Global Database, および(OECD, 2021)から引用・翻案しています。OECD.Stat,(accessed on 29 October 2021).

OECD地域は全体として、その人口に対し適正な生活水準を確保しています。
表1.1にはOECDの距離(平均)が最も小さい目標が列挙されています。これによると、OECDの平均は10の目標に対してすでに目標レベルを超え(つまり平均距離ゼロ)、さらに18の具体的目標が達成に近いと考えられます(平均距離は標準化測定単位0.5未満)。

例: 以下の基本的快適性のアクセス提供に関して、OECD諸国の平均距離はゼロかとても小さいです(2030年までにゼロとなる可能性)。

  • 極貧(目標1.1)と飢餓(目標2.1)撲滅
  • 衛生(目標1.4と6.2)
  • 淡水(目標6.1)
  • エネルギー(目標7.1)

OECD諸国は以下を達成しました。

  • 妊産婦と乳児の死亡率減少(ターゲット3.1と3.2)
  • 幼児教育へのアクセス確保(ターゲット4.2)
  • 近代的な教育施設(ターゲット4.a)
  • すべての国民に法的身分証明を提供(ターゲット16.9)
  • 主要統計能力を開発(ターゲット17.18と17.19)

OECD諸国の多くは、2030アジェンダに記載されている一握りの政策手段をすでに採用、または実施しています。本報告書に含まれるデータシリーズのいくつかは、いわゆる「バイナリー指標」( 「イエス」or「ノー」の指標)であり、さまざまな政策手段や枠組みの採択および/または実施追跡が目的です。

これらのほとんどについて、大多数のOECD 諸国はすでに関連目標を達成しています(さまざまな措置をすでに採用または実施)。結果、このような二律背反的な措置に依存する目標について目標までの平均距離はとても小さいです(あるいはゼロ)。

たとえば、データが入手可能なすべてのOECD加盟国は以下を達成しています。

  • ターゲット12.7──公共調達慣行の促進
  • ターゲット16.10──情報公開の保証

また、以下についても、ほとんどの国が達成済です。

  • ターゲット11.a──都市計画を支援する国家都市政策または地域開発計画の策定
  • ターゲット15.8──侵略的外来種の導入を防止するための措置の実施

けれども、いくつかのケースでは目標との距離が小さいことはデータの質が良くないことを示すこともあります。SDGsの具体的目標の中には、多面的であったり一般的な言葉で表現されていたり、異なる解釈が可能なものがあり、進捗を監視するために複数の指標が必要であることを示唆しています。このような場合、単一指標に依存することは誤った結論を導くかもしれません。

例:ターゲット4.2──幼児教育の質に言及
  👉利用可能なデータは教育の量(つまり組織的学習への参加率)のみを捉えている

その他にも、世界的な指標枠組みのデータは入手可能ですが、OECDの文脈では十分に適切でない場合がいくつかあります。たとえば、グローバルな指標の枠組みは、有害な漁業補助金に関する目標14.6を、「違法、無報告、無規制の漁業と闘うことを目的とした国際文書の実施度合い」と捉える政策指標で監視することを提案します。

この措置は状況の概要を提供するかもしれませんが、広範な評価を行うには、このような指標でカバーされていない側面を考慮する必要があります(「地球」の章参照)。

同様に、グローバル指標の枠組みにおいて、ICTへのアクセスに関するターゲット9.cのモニタリングは、モバイルネットワークへの接続数に関するデータを用いて行うことを提案しています。けれども、「繁栄」の章で詳述したように、この指標に頼ることは重大な接続性の格差を覆い隠す可能性があります。

このような場合(そして可能な限り)、本レポートではOECD加盟国特有の状況を反映するためにOECDデータベースから入手した追加のデータシリーズを含んでいます(詳細はテーマ別の章に掲載)。

表1.1.OECD平均距離が最も短い、最近の傾向
OECD諸国がSDGs目標をすでに達成、または達成に近づいている目標

  ターゲット 平均距離 トレンドの評価
1.1 2030年までに、世界中のすべての人から極度の貧困を撲滅する(現在、1日1.25米ドル未満で生活する人々として測定)。 0.00 目標達成または達成の見込み。
達成済。
1.4 2030年までに、特に貧しい人々や脆弱な立場の人々を含め、すべての男女が経済的資源の平等な権利、基本的サービスへのアクセス、土地やその他財産、相続、自然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに対する所有権と制御権を持つようにする。 0.00 目標達成または達成の見込み。
達成済。
2.1 2030年までに、飢餓を終わらせる。特に貧困層や脆弱な立場にある人々、乳幼児を含む全ての人々が、一年中安全で栄養価の高い十分な食物にアクセスできるようにする。 0.28 進展がない、またはSDGsから遠ざかっている。
2.c 極端な食品価格の変動を制限するために、食品商品市場およびその派生商品の適切な機能を確保する。食品備蓄を含めた市場情報に適時アクセスできるよう措置を講じる。 0.00 目標達成または達成の見込み。
達成済。
3.1 2030年までに、世界の妊産婦死亡率を出生10万人当たり70人以下にする。 0.00 目標達成または達成の見込み。
達成済。
3.2 2030年までに、新生児と5歳未満の子どもの予防可能な死亡をなくす。すべての国が新生児死亡率を少なくとも12%未満に抑えることを目指す。1,000人当たりの出生数、5歳未満児の死亡率を少なくとも 25%に低減する。 0.00 目標達成または達成の見込み。
達成済。
3.b 主に途上国に影響を与える伝染病、非伝染病のためのワクチン、医薬品の研究開発を支援し、公衆衛生を保護するための柔軟性に関する知的財産権の貿易関連の側面に関する協定の規定を途上国が十分に利用する権利を確認。特に、すべての人に医薬品へのアクセスを提供するTRIPS協定と公衆衛生に関するドーハ宣言にしたがって、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。 0.37 目標達成または達成の見込み。
達成済。
4.2 2030年までに、すべての女の子と男の子が質の高い幼児期の発達、保育、および就学前教育にアクセスできるようにする。彼らが小学校教育に適した状態になる。 0.24 目標達成または達成の見込み。
達成済。
4.a 子ども、障害、ジェンダーに配慮した教育施設を建設・改善する。安全で非暴力的、包括的かつ効果的な学習環境をすべての人に提供する。 0.05 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
6.1 2030年までに、すべての人が安全で安価な飲料水に普遍的かつ公平にアクセスできるようにする。 0.15 目標達成または達成の見込み。
達成済。
6.2 2030年までに、すべての人々が適切で公正な衛生施設や衛生状態にアクセスでき、野外排泄を根絶。女性や女児、脆弱な立場にある人々のニーズに特別な注意を払う。 0.35 進展しているが、目標達成に不十分。
7.1 2030年までに、安価で信頼できる近代的なエネルギーサービスへの普遍的なアクセスを確保する。 0.00 目標達成または達成の見込み。
達成済。
8.10 銀行、保険、金融サービスへのアクセスを奨励・拡大するために、国内金融機関の能力を強化する。 0.45 目標達成または達成の見込み。
達成済。
8.b 2020年までに、若者の雇用に関する世界戦略を策定・運用し、国際労働機関のGlobal Jobs Pactを実施する。 0.45 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
9.c 2020年までに、情報通信技術へのアクセスを大幅に拡大する。後発開発途上国において普遍的かつ安価なインターネットアクセスを提供するよう努力する。 0.36 進展はしているが、目標達成に不十分。
11.6 2030年までに、大気質や自治体などの廃棄物管理に特別な注意を払うなどして、都市の一人当たりの環境負荷を低減させる。 0.49 進展はしているが、目標達成に不十分。
11.a 国や地域の開発計画を強化することにより、都市部、都市周辺部、農村部の間の経済、社会、環境の前向きなつながりを支援する。 0.23 目標達成または達成の見込み。
達成済。
12.1 持続可能な消費と生産に関する10年間のプログラムの枠組みを実施。すべての国が行動を起こし、先進国が途上国の発展や能力を考慮した上でリードする。 0.00 目標達成または達成の見込み。
達成済。
12.7 国の政策と優先順位に従って、持続可能な公共調達の実践を促進する。 0.00 目標達成または達成の見込み。
達成済。
14.5 2020年までに、国内法および国際法に基づき、入手可能な最善の科学的情報に基づき、沿岸および海洋地域の少なくとも10%を保全する。 0.38 進展はしているが、目標達成に不十分。
14.6 2020年までに、過剰生産能力や過剰漁獲の原因となる特定の形態の漁業補助金を禁止。違法、無報告、無規制漁業の原因となる補助金を排除し、新たな補助金導入を控え、途上国や後発開発途上国の適切かつ効果的な特別かつ差動待遇が漁業補助金に関する世界貿易機関の交渉に不可欠であると認識する。 0.36 目標達成または達成の見込み。
達成済。
15.8 2020年までに、陸上および水上の生態系への侵略的外来種の持ち込みを防止。その影響を大幅に軽減するための対策を導入し、制御または管理する。 0.30 利用可能なデータではトレンドを評価できない。

平均してOECDの住民の約8人に1人が、各国の所得中央値の半分に設定された相対的な閾値に基づく所得貧困者とされました(目標1.2と10.2)。過去数十年間ほとんどのOECD諸国はこの指標に基づく貧困削減に向けて進展を遂げていません(「人々」章の目標1と「繁栄」章の目標10について詳細を参照)。

また、女性や若年層を含む多くの人口集団がさらなる課題に直面しており、彼らを対象とした具体的目標には大きな距離があることを意味しています。進展があったにもかかわらず、女性の権利と機会は、私的領域と公的領域の両方において、まだ制限されています。

たとえば、どのOECD加盟国も政治、経済、公的生活のより高いレベルの意思決定において男女平等の代表を達成し、賃金における男女格差や、有給・無給労働に費やす時間の格差(目標5.4および5.5)を縮めることはできていません(「人々」の章で目標5についての詳細を参照)。

教育における不平等は、社会経済的背景、性別、居住地などさまざまな要因によって人生の早い時期に始まり、時間経過とともに悪化する傾向にあります(ターゲット4.5)。全体として、あまりにも多くの子ども、若者、大人が、積極的で責任感のある市民(ターゲット4.6)となるために必要な基本的スキルを欠いています (「人々」の章のゴール4の詳細を参照)。

不健康な行動(栄養不良やたばこの摂取を含む)は、不平等をさらに悪化させる可能性があります。喫煙(目標3.a)、有害なアルコール使用(目標3.4)及び肥満(目標2.2)は、多くの慢性健康状態の根本原因であり、COVID-19による人々の死亡リスクを高めます(OECD, 2021)。このような不健康な行動は、社会経済的に低いグループに多い傾向があります(Murtin et al., 2017; Placzek, 2021)。

多くのOECD加盟国で喫煙は減少していますが、平均的なOECD加盟国では成人の17%が今でも毎日喫煙しています。不健康な食事と座りがちな生活スタイルにより、すべてのOECD加盟国で肥満率が上昇し、成人の平均60%が体重過多または肥満です。

けれども、疾病予防への支出は比較的低いままであり、OECD加盟国全体で平均して総医療費の2.7%を占めるに過ぎません(OECD, 2021)。また、ほとんどのOECD加盟国で国民皆保険が適用されているにもかかわらず多くの世帯が医療費を十分支払うことができず(目標3.8)、アクセスへの障壁が残っています (「人々」の章の目標2および3の詳細参照)。

表1.2.OECD最大の目標からの平均距離と最近の傾向
OECD諸国が平均してSDGs目標達成から最も遠ざかっている目標

  ターゲット 平均距離 トレンドの評価
2.2 2030年までに、幼児期の成長不全や栄養失調を含むあらゆる形態の栄養不良を終わらせる。2025年までに5歳未満の子供たちにおける成長不全や栄養失調に関する国際的に合意された目標を達成する。思春期の女性や妊娠中・授乳中の女性、高齢者の栄養ニーズに対応する。 2.46 進展がない、またはSDGsから遠ざかっている。
2.5 2020年までに、国際的に合意された通り、種子、栽培植物、家畜や家禽、それらに関連する野生種の遺伝的多様性を維持するために、国内、地域、国際レベルで適切に管理され、多様化された種子と植物銀行を通じて、遺伝資源の利用から生じる利益へのアクセスと公正かつ平等な共有を促進する。 3.59 進展がない、またはSDGsから遠ざかっている。
3.8 全ての人々に対して普遍的な健康保険を実現する。財政リスク保護、質の高い必須保健サービスへのアクセス、安全で効果的で質の高く、手頃な必須医薬品やワクチンへのアクセスを確保する。 1.79 進展はしているが目標達成に不十分。
3.a 適切な場合には、すべての国で世界保健機関フレームワーク条約のタバコ規制の実施を強化する。 2.65 進展はしているが目標達成に不十分。
4.6 2030年までに、すべての若者と、男女を問わず成人のかなりの割合が、識字と計算能力を身につけることを確実にする。 1.57 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
5.4 国に適した形で、公共サービス、インフラストラクチャー、社会保護政策の提供を通じて、無償の介護や家事労働を認識し、価値を与え、家庭や家族内での責任の共有を促進する。 1.79 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
5.5 政治、経済、公的生活のあらゆるレベルの意思決定において、女性の完全かつ効果的な参加と、リーダーシップの機会均等を確保する。 1.89 進展はしているが目標達成に不十分。
6.6 2020年までに、山、森林、湿地、川、帯水層、湖など、水に関わる生態系を保護・回復する。 2.12 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
8.1 国内事情に従って、特に最も貧しい国では、国民1人あたりの経済成長を維持する。年間国内総生産の少なくとも7%の成長を目指す。 1.89 進展がない、またはSDGsから遠ざかっている。
8.2 高付加価値かつ労働集約型のセクターに焦点を当て、多様化、技術のアップグレード、革新を通じて、より高い経済生産性のレベルを実現する。 1.77 進展がない、またはSDGsから遠ざかっている。
8.6 2020年までに、雇用・教育・訓練を受けていない若者の割合を大幅に削減する。 1.69 進展がない、またはSDGsから遠ざかっている。
10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出身、宗教、経済的またはその他の地位に関係なく、すべての人々の社会的、経済的、政治的包摂を促進し、権限を与える。 1.54 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
10.c 2030 年までに、移民送金の取引コストを 3%未満に削減する。5%より高いコストの送金回廊を廃止する。 2.21 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
12.b 雇用を創出する。地域の文化や製品を促進する持続可能な観光のための持続可能な開発の影響を監視するツールを開発し、実施する。 1.87 進展がない、またはSDGsから遠ざかっている。
14.1 2025年までに、特に陸上活動から生じる、海洋ゴミや栄養塩汚染などあらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。 1.83 進展はしているが目標達成に不十分。
14.4 2020年までに、科学に基づく管理計画を実施して、漁獲を効果的に規制。過剰漁獲、違法、報告されていない、規制されていない漁業、破壊的な漁業行為を終了。最短時間内に魚種を回復させ、少なくとも生物学的特性に基づいて最大持続生産量を生産できるレベルまで回復させるために必要な措置を講じる。 1.78 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
14.b 零細な職人漁師に水産資源と市場へのアクセスを提供する。 1.64 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
16.3 国内および国際的なレベルで法の支配を推進する。すべての人が平等に司法にアクセスできるようにする。 2.33 進展がない、またはSDGsから遠ざかっている。
16.6 あらゆるレベルにおいて、効果的で説明責任を果たし、透明性の高い制度を構築する。 2.26 進展はしているが目標達成に不十分。
16.7 すべてのレベルにおいて、応答的、包括的、参加型、代表的な意思決定を確保する。 1.85 利用可能なデータではトレンドを評価できない。
17.15 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策を確立し実施するための各国の政策空間とリーダーシップを尊重する。 2.32 利用可能なデータではトレンドを評価できない。

出典:すべてのデータは、(UNDESA, 2021)、SDGs Global Database、OECD,2021 から引用・翻案しています。OECD.Stat,(accessed on 29 October 2021

パンデミック直前の数年間、マクロ経済の状況はすでに厳しいものでした。下の節(COVID-19パンデミックの2030アジェンダ目標達成におけるOECD諸国の進捗への影響)で詳述するように、経済は貿易、雇用、所得とともにパンデミックによる衝撃から回復していますが、その復活はアンバランスでした。マクロ経済指標は最もタイムリーなものであるため、表1.2で報告されている目標までの距離の中には、すでにパンデミックの影響を捉えているものもあります。

パンデミックは信頼と透明性が民主主義にとっていかに重要であるかを浮き彫りにしましたが、OECD諸国は依然として目標から程遠い状態にあります。信頼と透明性は、社会が衝撃を吸収し、そこから立ち直るために不可欠です(OECD, 2021)。けれども、入手可能なデータは1970年代以降、先進国における人々の制度に対する信頼が著しく低下していることを示します(UNDESA, 2021)。政府への信頼は多面的であり、市民と政府との間の経済的、社会的、政治的な相互作用の組合せを反映するものです。

それでも、表1.2の目標16に関する利用可能なデータによれば、OECD諸国は、公共機関へのアクセス性、説明責任、透明性、多様性など、信頼にとって重要な分野に関する指標(ターゲット16.3、16.6、16.7)を達成するにはまだ長い距離を移動しなければならないことがわかります(目標16に関する詳細は「平和とパートナーシップ」章で参照)。

2030アジェンダは、政府、国際機関、非政府組織、民間セクター、市民社会に対し、国境を越えてSDGs実施を支援するための努力を結集するよう求めています。けれども、入手可能なデータによれば、開発援助委員会(DAC)加盟国による政府開発援助(ODA)の総額は、ドナー・コミュニティが合意した目標(GNIの0.7%)の半分以下であり(目標17.2)、ODAの配分方法を決める際に被支援国が所有する成果枠組みや計画ツールを利用しているOECD諸国はごく少数な(目標17.15)ことが分かっています。

また、途上国への送金は最大の開発資金の流れの一つであり、アジェンダ2030の達成に向けて貢献する可能性を秘めていますが、送金先から送金元国への送金コストが高いため、その可能性を十分に発揮することができません(目標10.c)(「平和とパートナーシップ」章の目標17の詳細参照)。

同時に、環境に対する圧力も高まっています。いくつかの例外(主に海洋と海洋生物多様性に関する目標14に関するもの)を除き、地球目標を支える目標までの現在の距離は他分野よりも平均して小さく見えます(図1.3)。けれども、これは主に環境危機による社会的・経済的損害が現在ようやく顕在化し始めた事実を反映しています。場合によっては、これらの具体的目標の野心度が低いこと8(ボックス1.1参照)、またデータの欠落に関連する不確実性が高いことも反映しています(図1.5参照)

現在のパフォーマンスよりも経時的な変化を見ることで、これらの目標に対する OECD 諸国のパフォーマンスをより冷静に評価することができます。

利用可能なデータでは大多数の指標についてそのような動的評価を行うことはできませんが、評価可能な指標については、分析によると、飲料水へのアクセス(目標6.1)、水質(目標6.3)、森林資源の利用(目標15.2)に関するものを除き、地球関連目標のいずれも2030年までに達成する見込みはないことが示されています。

全体として、OECDのテーマ別作業でさらに詳述されているように、「OECDの環境指標から浮かび上がる絵はせいぜい混在しています」(OECD, 2020)。資源集約的あるいは汚染集約的な生産の海外移転(そして、より低い程度ではあるが技術進歩と政策措置)により、エネルギー集約度、水使用、都市ゴミ管理などのいくつかの分野において一定の進展が見られました。

けれども、経済成長を支えるための物質資源の使用量は依然として多いです。多くの貴重な物質が廃棄物として処理され続けています(「地球」の章の目標6と12、「繁栄」の章の目標7について詳細参照)。

気候面では、温室効果ガスの排出量を人口とGDP成長から切り離すという点では一定の成果を上げているものの排出量はほとんど減少しておらず、すべてのOECD加盟国が化石燃料の生産と消費を支え続けています(「地球」の章、目標13の詳細を参照)。

生物多様性に関しては、生態系保護におけるいくつかの心強い進展にもかかわらず、陸上および海洋の生物多様性に対する脅威は増大し続けています。結果、より断固とした行動がない限りOECD諸国はこの分野における目標を達成できないことになります(「地球」の章の目標14と15を詳しく参照)。

ボックス1-2.2020年を期限とするSDGs目標

すべてのSDGsの進捗には緊急の行動が必要ですが、2030アジェンダでは、21のターゲット群について2020年という早めの期限を設定しました(ターゲットの全リストは図1.4参照)。全体として、入手可能なデータから、これらのターゲットの多くで進捗がないことが明らかになっています。

けれども、入手可能なデータの遅れを考慮すると目標に対する「現在の」距離は、2020年までの実際の達成状況を反映していない可能性があります。このため、入手可能なデータにより2020年の成果を評価できる場合でも、パネルBでは過去の軌道を記述することにより測定を補完しています。

この21の目標のうち、12は2011年から2020年までの生物多様性条約(生物多様性条約愛知目標、ABT)に関連するものです。ABTは、国連の生物多様性条約(CBD)の締約国が、生物多様性の保全、持続可能な利用、遺伝資源の利用から生じる利益の衡平な配分に関する国家公約の枠組みとして使用することに合意した5つの戦略目標と20のターゲットを包含するものです。

入手可能なデータによれば、OECD諸国は2020年末までに平均してABTのいずれも達成できない可能性が高いです。けれども、これは国やターゲットによって大きく異ります(図1.4. 図に関する方法論の考察は付属書1.Aを参照)。

図1.4.OECD諸国における目標までの距離と経時的傾向、2020年期限付き目標
Shinwell, 2020
注:入手可能なデータの遅れを考慮すると、目標までの「現在の」距離は2020年までの実際の達成度を反映していない可能性がある。パネルAはSDGsの各目標到達に必要な距離の観点から、OECD諸国の分布を示した。距離は標準化単位(s.u.)で測定、入手可能な直近の年における各国の達成度のばらつきを反映している。各国の距離は、0.5s.u.未満の小距離は薄緑色、0.5s.u.から1.5s.u.までの中距離は中緑色、1.5s.u.より大きい距離は濃緑色の3グループに分類。パネルBは、各ターゲットの指標における最近の変化から見たOECD諸国の分布を示す。各指標の近年の変化から、各国の進捗状況を3つのクラスターに分類。2020年までに目標達成するために最近の進捗ペースが十分であると考えられる国は黄色、2020年までに目標を達成するには最近の進捗が不十分であると考えられる国はオレンジ、最近のパフォーマンスが停滞しているか2020年の目標からさらに離れている国は茶色で示す。また、現在の距離や進捗のペースを評価するためのデータがない国(白色で表示)も示す。時系列データは、各国とも2点(またはそれ以下)しかない場合、欠測とみなし、指標はOECD加盟国20カ国未満で入手可能な場合、欠測とみなした。

前述のように、OECD諸国は枠組みや政策の実施を追跡する多くの「プロセス指標」において肯定的な結果を示しています。生物多様性の分野では、SDGsグローバルデータベースのデータによれば事実上すべてのOECD加盟国が違法、無報告、無規制の漁業と闘うことを目的とした国際的な制度をすでに実施し(目標14.6)、侵略的外来種を防止・管理する国内法を採択した(目標15.8)ことが示されます。

測定面では、すべてのOECD加盟国が環境経済会計システム(SEEA)に従って生物多様性の価値を国の会計・報告システムに統合する措置をとっています。このような政策ツールやフレームワークの導入は、包括的なものではありません。たとえば、有害廃棄物やその他の化学物質の管理に関する国際協定の実施にはOECD加盟国間で大きな格差が残っています(ターゲット12.4)。

さらに、目標14.6を支える政策手段は、OECD諸国が過去15年間に違法、過小報告、無規制(IUU)漁業に対する政策の採用・実施において大きな進展を遂げたことを示唆していますが、すべてのOECD諸国において規制の抜け穴と政策ギャップが残っており、IUU漁業は引き続き持続的海洋経済発展の妨げとなっています(OECD, 2020)。

生態系の保護に関連する目標(アウトプット指標による裏付け)は、良い結果を示しています。図1.4は、すべてのOECD加盟国が過去20年間に保護区を拡大したことを示しています。

・2020年までに27ヶ国が国土の少なくとも17%保護する目標15.1(およびABT 11)を達成
・20ヶ国が沿岸および海洋地域の少なくとも10%を保護するSDG目標14.5(およびABT 11)を達成(本報告書に含まれる要約数値に関する考察についてはボックス1.1参照)。



さらに、世界の森林は乱開発、断片化、劣化、他の土地利用への転換により脅威にさらされていますが(目標15.2)、OECD諸国の森林・林地面積は安定または増加傾向にあり(OECD, 2020)、ほとんどの国が森林資源の持続的利用を達成しています。

けれども、成果指標では生物多様性の傾向が低下し続けていることが確認されています。1970年以降、世界の陸上生物多様性の10分の1、淡水生物多様性の3分の1が失われ(OECD, 2018)、2050年までにさらに10%の陸上種を失う方向にあります。目標15.5の根拠となるデータでは、OECD加盟国の3国に2国以上で生物多様性が失われていることが示されています。

地域品種と家畜に焦点を当てたターゲット2.5について、利用可能なデータは地域家畜品種の非常に高い割合が絶滅危機にあり、進展しているOECD諸国はとても少ないことを示唆します。

ABT以外にも、交通事故(ターゲット3.6)から若者の雇用(ターゲット8.6と8.b)、ICTへのアクセス(ターゲット9.c)、南北協力(ターゲット4.b, 13.a, 17.11, 17.18)まで幅広いターゲットが2020年を目標日として設定されました。図1.4は、経時的にパフォーマンスをモニターできるターゲットについては進捗が確認できたことを示しています。特に、ほぼすべてのOECD加盟国において交通事故による死亡が減少し、ICTへのアクセスが拡大しました。



さらに、約40%の国々において雇用・教育・訓練を受けていない若者の割合(NEET)は過去20年間に減少しています。けれども、OECD諸国は平均して2020年の公約を達成するには程遠いです。最も顕著なのは、ニートの割合(ターゲット8.6)が目標水準から最も離れていることです(表1.2参照)。繁栄の章で詳述したようにOECD諸国の大部分において、若年成人の10人に1人以上が雇用、教育、訓練を受けておらず、その割合はメキシコ、イタリア、トルコ、コロンビアで5人に1人を超えています。


注意事項
1. ATBを支えるどの指標もインプット指標として分類できないが、広義の2030アジェンダには全土地面積に占める森林面積(目標15.1)、生物多様性に関連する経済手段から得られる収入と動員される資金(目標15.a)など、関連指標がいくつかある(詳細はボックス1.1 参照)。

2.i)生物多様性の世界的な持続に大きく貢献している場所。
ii)IUCN のレッドリストで絶滅の危機に瀕しているか絶滅危惧種と評価されている少なくとも1種の全個体が実質的に生息している場所。
iii)旧バージョンの生物多様性重要地域基準のもとで特定された生物多様性重要地域。
これら3つのサブセットは、他の種や生態系にとって重要なサイトを特定する他のメカニズムとともに、これらアプローチを統一したグローバルスタンダードを用いて再評価される。詳細についてはSDG指標メタデータリポジトリ参照。

3. 海洋・沿岸生態系の管理と保護に関する目標14.2の期限は2020年にもかかわらず、この目標に付属する指標(生態系ベースのアプローチを用いて管理される国の排他的経済水域の割合)はSDGsグローバルlデータベース(UNDESA, 2021)からまだ欠落している。


COVID-19パンデミックのOECD諸国における達成状況への影響

2030アジェンダの目標

2030アジェンダの目標達成に向けたOECD諸国の進捗は、2019年後半からのCOVID-19パンデミックの展開により大きな影響を受けています。2021年11月までに、COVID-19による230万人の死亡がOECD諸国で報告されました(OECD, 2021)。

けれども、死者の多さ以上にパンデミックによって引き起こされた危機は、これまでの経済危機ともパンデミックとも異なる前例のないものです(Cohen, 2021)。パンデミックは、すべての国や世界の地域に影響を与え、人々の生活のあらゆる側面に触れ、必要なスピードと規模で対応する政府の能力が試されています。

COVID-19のパンデミックによって引き起こされた不況は、第二次世界大戦以降で最も深刻であると同時に最も短いものでした(Cohen, 2021)。ほとんどのOECD諸国は、人と人との接触や伝染の広がりを制限するために経済・社会活動を意図的に制限する措置を実施しました。生産高成長率への影響は、どの国でも大きく2020年はOECDのGDPがほぼ5%減少することになりました(OECD, 2021)。

OECDの労働市場に対する初期の影響は、2008年の世界金融危機の最初の数ヶ月間に観察されたものの10倍でした(OECD, 2020)。

けれども、その反動は政府や中央銀行による前例のない支援とワクチン接種の進展に支えられ、より早急なものとなりました(「繁栄」の章参照)。並行して、社会的セーフティネット、雇用維持制度、食糧支援制度が、危機による貧困と飢餓への短期的影響を緩衝しました(「人々」の章を参照)。

それでもなお、パンデミックは OECD諸国の長年にわたる構造的弱点を悪化させ雇用見通しと生活水準に長期的な損害を与える危険性があります。加えて、危機の影響が極めて部門的なものであったため一部の労働者が負担の大部分を負い、他の労働者は被害が少ないだけでなく回復の恩恵をより早く受けることになりました(OECD, 2021)。

若者は一般に安定した職に就いておらず、宿泊・飲食サービス業など被害が大きかった産業の労働者に多く見られるため危機の影響を特に大きく受けています(OECD, 2020)。また、若者はメンタルヘルス、社会とのつながり、主観的ウェルビーイングにおいて最も大きな減少を経験しています(OECD, 2021)。

この危機は制度に深刻な影響を及ぼします多くの国でウイルス拡散を防ぐために人々が医療施設に通ったり、学校に通ったりすることが制限されています。パンデミックは予防と治療のためのヘルスケアシステム、パンデミックへの備え、医療機器の配給といった既存の脆弱性を明らかにし、増幅させました。学校の閉鎖は若者の教育に害を及ぼし、彼らの労働市場への統合をより困難にしています(OECD, 2021)。

このような混乱は今後、長期にわたってOECD加盟国に課題を与える可能性があります(「人々」の章を参照)。教育や保健制度への影響にとどまらず、COVID-19危機は政府を厳しいストレステストにさらし、多くの政府が異なる制度の役割の間にギャップや重複を経験しました(OECD, 2020)。

パンデミックは公的資金の供給源も圧迫しました。OECD諸国が実施した大規模な景気刺激策は、家計と企業を支援する上で不可欠であり、かつ成功しました。けれども、これらプログラムは公的債務を大幅に増加させました。

SDGsの資金調達における「はさみ効果」(すなわち、ニーズの増大と資源の減少)は、パンデミックへの対応の必要性によって拡大しました。さらに、政府の内部プロセスは、しばしば協議、透明性、監督または管理の基準が低くなっています(「平和とパートナーシップ」の章を参照)。

COVID-19危機に伴う経済活動の縮小は、短期的には世界の温室効果ガス排出量の減少、水路や沿岸域の水質の一時的改善、生物多様性への圧迫の軽減など、環境条件の一時的改善につながりました。このことは、人間による環境への干渉の重要性をより一層浮き彫りにしました。

気候、生態系、生物多様性など、その恩恵は永続的ではありません。復興はすでに、より劣悪な環境条件と結びついています(「地球」の章を参照)。

各国は概して、例外的な状況下で必要とされる規模とスピードで危機に対応しましたが、ほとんどの政府は危機に立ち向かう準備ができていませんでした(OECD, 2021)。現在、ほとんどのOECD加盟国が対象者のほぼ2回ワクチン接種を行ったため、入院や死亡の新たな大きな波の脅威は薄れつつありますが、多くの不確定要素が残っています。

感染率は依然として高く、ワクチン接種率が低い国はさらなる感染拡大のリスクにさらされています。さらに、多くの低・中所得国ではワクチン接種率がまだ低く、より危険なウイルスの亜種が出現する格好の場となっています。新興国や発展途上国へのワクチンの供給は、2022年と2023年に改善されると予想されていますが、まだニーズを下回っています。ワクチンが亜種との競争に勝たない限りパンデミックは今後数年間、世界経済の結果を左右する要因であり続けるでしょう(OECD, 2021)。

最近、私たちの生活や仕事に影響を及ぼしている混乱は、COVID-19の大流行だけではありません

巨大な山火事(特にシベリアとオーストラリア─おそらく観測史上最大─、カリフォルニア、トルコ)、前例のない熱波と干ばつ(北アメリカ西部など)、極寒現象、破壊的な洪水(ドイツ、ベルギー、カナダ西部など)は、数千人の死者と大きな財産破壊、経済活動の崩壊を引き起こしています。

2021年8月下旬から9月上旬にかけて発生したハリケーン・アイダは、米国史上最もコストのかかる暴風雨の一つでした。2021年12月、ストーム・バラはスペインとフランスで過去数十年で最悪の洪水を引き起こしました。このような暴風雨は他の気象関連災害と共に、海水温や気温の上昇により、より頻繁かつ深刻になっています。(OECD, 2021; IPCC, 2021; World Meteorological Organisation, 2021).

COVID-19危機は、OECD各国政府にマクロ経済政策の役割に関する長年の前提を見直させ、第二次世界大戦以来の規模の財政対応につながりました。ほとんどのOECD 加盟国政府が導入した復興策は「より良い復興」を目指し、将来の衝撃に対応するためのシステム的な回復力強化の機会を提供するものです。

気候変動や生物多様性の損失だけでなく人口の高齢化、デジタル変革、社会契約への挑戦など、将来の主要な課題が抑制されなければCOVID-19によるものよりはるかに大きな社会的・経済的影響をもたらす可能性があります。

ですので、危機の発生以来、展開されてきた大規模な公共投資計画は重要なインフラのアップグレード、環境に配慮した取組の移行に向けた進展、デジタル・デバイドの解消、将来のショック回避と緩和のために重要な鍵となります。今後の課題は、復興の強さを示す短期的目標をSDGsの中長期的な目標に合わせて調整し、復興を自然環境に配慮し、誰も排除されない、しなやかなものにすることです。

SDGsに関する今後の統計・研究課題

本報告書の結果は、2030年までの8年間におけるより強力なアクションの必要性を指摘する一方、SDGsに対する各国の立ち位置の理解には盲点が残されることも指摘します。データギャップは依然として大きいです。全体として、さまざまなな指標のレベルに関する利用可能なデータにより17のSDGsを支える169のグローバルな具体的目標のうち136をカバーすることが可能です。

図1.5に示すように、指標のカバー率は17の目標間で不均一です。たとえば、OECD諸国のデータでは、17の目標のうち11の具体的目標について80%以上をカバーすることが可能ですが以下の目標ではカバー率がこの基準より低くなっています。

  • 食料と飢餓(目標2)
  • ジェンダー平等(目標5)
  • 水辺の生活(目標14)
  • 持続可能な都市(目標11)
  • 平和・正義・制度(目標16)
  • 目標のためのパートナーシップ(目標17)

目標までの距離を測る指標を見ると、データギャップはより顕著です。入手可能なデータによって169の目標のうち136をカバーすることが可能ですが、いくつかは現在のパフォーマンスを適切に評価できません(詳細は方法論的付属文書参照)。実際のカバー率は以下のようになっています。

  • 良好な健康・福祉」「質の高い教育」(目標3・4)・・80%を超える
  • 「目標のためのパートナーシップ」(目標17)・・40%以下

SDGsに関する各国のパフォーマンスをダイナミックに評価する場合、堅牢な時系列情報の利用可能性に関連し、さらなるデータ上の課題が生じます。1.5を見ると、主に「地球」に関連する以下7つの目標の60%以上の具体的目標で、時間経過による進捗状況を測るデータが欠けていることが分かります。

  • 責任ある消費と生産(目標12)
  • 気候変動対策(目標13)
  • 水中生活(目標14)
  • 陸上生活(目標15)
  • ジェンダー格差(目標5)
  • 持続可能都市(目標11)
  • 目標のためのパートナーシップ(目標17)

図1.5.少なくとも一つの指標でカバーされている2030アジェンダの指標の割合(目標別)

データの入手可能性以外にも、多くのギャップが2030年アジェンダに向けた進捗の理解に影響を及ぼしています。データの可用性は、2030年アジェンダの下でのコミットメント達成に向けた各国の進捗をより強固に評価する上で最も顕著な課題の一つです。けれども、適時性や粒度のような他の統計的なギャップも評価に大きな影響を与えます。

たとえば、利用可能なデータの遅れを考慮すると、パンデミックが現在の距離と軌道に及ぼす影響は私たちの推定にはほとんど反映されません(図1.6)。より一般的には、SDGsの報告の枠組みが不完全であったり、最新でなかったり、重要な層を見逃していたりすると、良い政策とは何かについて推論することは危険です。

図1.6.利用可能なデータの適時性

結論: 2030年以降のアジェンダのための教訓を学び始める

SDGsの2030年という期限が近づくにつれ、国連や国際社会全体はグローバルな政策行動のための新しい枠組みに取り組まなければなりません。SDGs達成まであと8年、いくつかの分野では進展が見られるものの目標や国、地域によって改善には、ばらつきがあります。SDGsが生み出した勢いを持続させるためには、2030年以降の後継となる枠組み、つまり2030アジェンダの強みを生かしつつ既存のSDGsの欠点にも対応した枠組みの設定が鍵となります。

これまで提起された測定やモニタリングの課題に加え、異なる目標、具体的目標、指標間の相互連関や全体的な一貫性をどのように捉えるのか、より深い考察が必要でしょうほとんどの目標は経済、社会、環境の側面を持っていますが、具体的目標や指標はそれらについて部分的視点を提供していることが多いです。例として、プラネットSDGsとそれに関連する目標や指標においてジェンダーに焦点が当てられていないことが挙げられます。

プラネットの指標のうち、ジェンダーに関連するものとして枠組で特定されているのはわずか5%です(OECD, 2021)。データの入手可能性は明らかにいくつかの指標の範囲を広げるための主要な制限ですが、フレームワーク自体は多くの目標間の可能な相互連関を捉えるべきです。

2030アジェンダは本質的にグローバルです多くの場合、各国のパフォーマンスに焦点が当てられることで欠点が生じる可能性があります。気候変動への適応と緩和のための行動には必然的に国の要素が含まれますが、そのモニタリングと評価はグローバルで一国の単独の権限をはるかに超えています。

共通の指標を開発するためには、環境経済計算システム(SEEA)のような世界的測定機器や会計システムが不可欠です。それらは、まさに世界の貧困や世界の不平等を測定・監視するような古典的な公共財です。(Kanbur, Patel and Stiglitz, 2018

もう一つの方法論的な側面として、政策手段の測定と最終的な成果の測定をどのようにうまく区別するかについて、さらなる検討が必要なことを分けて報告します。

COVID危機の直後に各国が展開した短期復興計画が2030年アジェンダの長期目標とどの程度整合しているかを評価するためには、この2種類の措置が不可欠です。SDGsの枠組みは政策や投資の決定がもたらす不可避のトレードオフ、スピルオーバー(漏れ出し効果)、意図しない結果を考慮し、全体的な方法で進捗を検討すべきだと認識しています。

けれども、17のSDGsは(その一般的な定式化と詳細な具体的目標への仕様の両方において)、インプットからプロセス、アウトプット、アウトカムへの因果連鎖に沿った側面が混在しています。インプット─アウトプット─アウトカムの連鎖に沿って広がる多数の目標と指標は、評価と査定に明らかな課題を提起しています。

最後に、SDGsは進捗状況の監視に使用される指標セットを広げる引力と、少数のトップレベルの指標に焦点を当てる必要性との間の、避けることのできない緊張を強調していますこの緊張は、国家レベルの国連の目標とターゲットの優先順位付けを通じてのみ解決できます。SDGsに至る過程では、一方では完全性と徹底性を求め、他方では明確性を求めるという緊張関係が明らかです。

もちろん、収集した情報が詳細であればあるほど、またデータが細分化されていればいるほど何が起こっているのかをより完全に把握することができます。SDGsの169の具体的目標と247の指標は、有用なプラットフォームを提供し国際的に合意される長所もあります。

けれども、その実施は各国のニーズや優先順位、そして限られた資源への配慮が必要です。説明責任と主権は合理化と、具体的目標と指標の選択が国際的な枠組から情報を得た国内対話の文脈で行われるべきであることを意味します。(Stiglitz, Fitoussi and Durand, 2018)

著作はOECD事務総長の責任のもとで出版されたものです。表明された意見や採用された議論は必ずしもOECD加盟国の公式見解を反映するものではありません。文書、およびデータ・地図は、いかなる地域の地位または主権、国際的な境界線・境界の画定、いかなる領土、都市または地域の名称をも害するものではないものとします。イスラエルに関する統計データは、イスラエルの関連当局から提供され、その責任の下に提供されています。OECDによるデータ使用は、ゴラン高原、東エルサレム、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地の国際法上の地位を損なうものではありません。
OECD (2022), The Short and Winding Road to 2030: Measuring Distance to SDG Targets, OECD Publishing, Paris,https://doi.org/10.1787/af4b630d-en. 表紙©デザイン:Sonia Primot (Statistics and Data Directorate). © OECD 2022参考文献は省略

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