2024.11-2025.1月(日刊 news letter)

※最終更新2024.11.06.22:00 今日の更新はこちら👇 次回更新:11/7

【翻訳とは何か?『翻訳の授業 東京大学最終講義』で深まる知見】
2024.11.6|ウェルビーイング応援サイト

こんにちは!今日も風間先生の夏のおすすめ本をご紹介します。以前にも少し触れましたが、今回はこの本が問いかける「翻訳とは何か」という深いテーマに迫り、翻訳の本質について一緒に考えてみたいと思います。

風間正弘先生の紹介:
「翻訳の授業 東京大学最終講義」という書籍が、翻訳とは何か・今後の翻訳研究の方向性について、「意味空間」という観点で整理されていておもしろかったです。

翻訳とは、原文を読んで心に浮かぶ世界(意味空間)を、別の言語で忠実に表現するという行為であると説明している。それは、「意味のコミュニケーション」を公理として、「言語表現に展開される前の、意味の充満した空間」を出発点とするもの。
テキストには、実用テキストと文学テキストの2種類。実用テキストは情報伝達が使命であり、自動翻訳によって翻訳可能だが、文学テキストは「その形姿、スタイル」にこそ意味があり、自動翻訳では翻訳が難しい。これからの翻訳研究では、文学テキストの翻訳が中心となり、文学的な言語の使い方を探求。

著者の考え方が、大規模言語モデル(LLM)の構造に似ていて興味深かったです。また、現状のLLMが、音韻的特徴や文化特有の芸術様式などの文学的要素を含む文学テキストをどこまで翻訳できるかは、おもしろそうだなと思いました🐕

こんにちは!今日も風間先生の夏のおすすめ本をご紹介します。以前にも少し触れましたが、今回はこの本が問いかける「翻訳とは何か」という深いテーマに迫り、翻訳の本質について一緒に考えてみたいと思います。

1. 翻訳とは何か:意味空間を通じた表現
本書では、翻訳を「意味空間」に基づく行為と定義し、異なる言語の間でその空間を再現するプロセスだとしています。翻訳者は、原文から得たイメージを再現し、異文化間の深いコミュニケーションを目指します。

2. 実用テキストと文学テキストの違い
実用テキストは情報伝達が目的で、機械翻訳にも対応しやすい一方、文学テキストは感性やスタイルに重きを置くため、人間による翻訳が不可欠です。

3. 翻訳のスタイル:直訳と意訳
原文の文化や意図をそのまま伝えるか、異文化に馴染む形で意訳するか、翻訳者は「同化翻訳」と「異化翻訳」の選択が求められます。

4. AIと翻訳の未来
実用的な翻訳にはAIの活用が進む一方、文学的な表現や文化のニュアンスは人間の手による翻訳が求められる、と本書は述べています。

5. 実例から学ぶ翻訳の奥深さ
川端康成の『雪国』やディケンズの『クリスマス・キャロル』の訳例を通して、どのように言葉を選び、文化的背景を汲み取るかを示しています。たとえば『雪国』の「夜の底が白くなった」のような表現は、文化や時代背景を深く理解しないと適切に訳出できないとされています。

6. 翻訳研究の意義と新たな視点
著者は、翻訳とは「言語の置き換え」以上に、「世界の共有」を目指す出来事であると述べています。翻訳者が原作の深い意味や作者の意図をくみ取り、それを異なる言語文化圏に届ける使命を持っていると捉えています。

この本は、翻訳が単なる言葉の置き換えではなく、文化や感性をつなぐ橋であることを再認識させてくれます。翻訳という行為が、言葉を超えた深い理解の冒険であることを、ぜひ感じていただければと思います!

ウエルの感想
翻訳って、ただ言葉を入れ替えるだけじゃないんですね
一つの言葉でも、どう表現するかで全然意味が変わっちゃうなんて、おもしろいです。特に文学みたいな難しいテキストは、読んだ人が同じ気持ちになるように、心で感じる“意味空間”をちゃんと伝えることが大事なんですね。実用的な翻訳にはAIが活用されているけれど、文学みたいな感性的な部分は、やっぱり人間の力が必要なんだって。少なくとも今は、こういうところで人間の手が差をつけてるんですね。

それに、原文をそのまま伝えるか、それとも日本のみんなにもっと分かりやすい形で伝えるか、翻訳者が考えるところもウエルはよく悩みますー「そのまま伝えるのがいいのかな?」「日本らしく伝えるのがいいのかな?」って。こうやってたくさん考えるから、翻訳って奥が深いんですね🐰

【『アジャイル開発とスクラム』第2版】
2024.11.5|ウェルビーイング応援サイト

こんにちは!今回ご紹介するのは、野中郁次郎先生らが手掛けた『アジャイル開発とスクラム』第2版です。風間正弘先生が推薦する、職場で「変化に対応しながら成果を上げる」ための実践的なヒントが詰まった一冊です。

アジャイルとスクラムとは?
ビジネスのスピードが加速する現代、企業は市場や顧客の変化に迅速に対応する必要があります。アジャイルとスクラムは、この「変化」に柔軟に応えるための方法論です。

アジャイル開発
「アジャイル」とは「機敏な、柔軟な」を意味し、ソフトウェア開発から生まれた手法です。アジャイル開発は、長期計画に縛られず、短期間の目標を立てて実行し、その都度改善を繰り返します。これにより、顧客のニーズに合わせて柔軟にプロジェクトを進められます。

スクラム
「スクラム」はアジャイルを実現する具体的な方法で、チーム全員が一体となって進める枠組みです。ラグビーのスクラムから名付けられ、協力して一つの目標を達成するイメージです。

アジャイルとスクラムが注目される理由
従来の計画主導型では、変化によって計画と現実がずれ、無駄が生じやすいですが、アジャイルとスクラムには以下のようなメリットがあります:

1. 早期の成果提供:短いサイクルで部分的にリリースし、早い段階でフィードバックを得られます。
2. 無駄を減らす:リアルタイムで改善を繰り返し、変化に適応し続けられます。
3. チームの一体感:全員が同じゴールを共有し、自律的に動ける環境が生まれます。

たとえば、プロダクトオーナー(事業責任者)が目標を示し、スクラムマスター(サポート役)が環境を整えることで、各メンバーが自律的に動けるようになります。この協力体制が、「変化に強い組織」を実現する鍵です。

ビジネス現場での活用
特に、顧客や社内のニーズが変化しやすいプロジェクトや、新しいアイデアを求められる場面で、アジャイルとスクラムは大きな効果を発揮します。

明日から実践できるスクラムのキーポイント
1. 毎朝のデイリースクラム:各メンバーが進捗を共有し、問題点を解消する短いミーティング。同じゴールに向かっている一体感が生まれます。
2. 振り返り(レトロスペクティブ):成功したこと、課題、改善策をスプリントごとに見直し、チーム全体で学び、改善を重ねます。
3. タスクかんばんで見える化:壁やボードにタスクを貼り、進捗を一目で確認できるようにすることで、必要なサポートも把握しやすくなります。

本書の重要メッセージ
リーダーシップは「管理」ではなく「場づくり」。スクラムマスターの役割は、チームが自律的に動ける環境を整えることです。これは、エンジニアに限らず、あらゆるリーダーにとっての「明日からの課題」かもしれません。

ウエルの一言
見える化して、チーム全員がやることを把握できるって、仲間と一緒に走ってるみたいで力が湧きますね…!💪🐰 夏の疲れが少し残っているけど、このニュースレターで紹介する本や研究、そしてあなたも一緒に走ってくれる仲間だと思うと、また頑張れそうです。皆さんの職場ではどんな工夫をしていますか?💡

【風間先生と知的探求のひととき】
2024.11.4|ウェルビーイング応援サイト

毎回ご覧いただいているかもしれませんが、これは夏の自由研究のスタートに描いたAIイラストです。
ウエルは七変化なので、毎回様子が変わりますが、これは果たしてウエルと言えるでしょうか。
かわいすぎてちょっと心配です。😞”ペコリ

こんにちは!今日は3連休の最終日。ゆっくり過ごしている方も多いかと思います。今回は軽めのニュースレターで、夏休みに素晴らしい本を紹介してくださった風間正弘先生の投稿を取り上げます。

風間正弘先生の近況
RecSys2024論文読み会が無事終わって良かった。 育休から仕事に戻ってのてんやわんやの1ヶ月間の溜まった疲れもあって、3連休後半はずっと寝ていた。

風間正弘先生は、Ubie株式会社の機械学習エンジニア兼データサイエンティストであり、永山晋准教授が主催する、能動的推論(自由エネルギー)の観点からウェルビーイングを提案する研究チームの一員でもあります。また、ウェルビーイング研究が専門のishikun3先生と時折共同研究を行っています。風間先生、いつも素晴らしい知見を共有してくださり、ありがとうございます!

先生が紹介してくださる本は、普段自分ではなかなか出会えないものばかりで、とても新鮮です。そして、お仕事もしながらの論文読み会、本当にお疲れ様でした。ウェルビーイング応援サイトの私たちも頭を使ったり慣れない作業に取り組んだりしたため、連休はよく寝て過ごしました。

ところで、研究者や論文を書く方々はどうして仕事の後や休日もプライベートな時間に頭を使い続けられるのでしょうか?脳の使い方が違うのでしょうか…?皆さんは、どうやって脳を休めていますか?ぜひ教えてください!

風間先生の人間味あふれる投稿に、ほっこりしました。皆さんも、しっかり休んでまた元気にお仕事に戻ってくださいね!

【文化の日に考える、哲学と経営の結びつき『直感の経営』】
2024.11.3|ウェルビーイング応援サイト

こんにちは!今日は文化の日ということで、知的探求を深める一冊をご紹介します。今回取り上げるのは、風間正弘先生が夏にお勧めしていた『直感の経営』です。
この本は、経営学の権威である野中郁次郎氏と現象学の第一人者である山口一郎氏が共著で、経営における「本質直観」とは何かを深く探求したものです。哲学的な視点と実践的な経営理論が交錯し、物事の本質をどう見抜き、直感的に理解するかを考察しています。現象学と経営学が結びついたこの本は、普段の経営書にはない知的挑戦を読者に提供してくれます。

特に、「直観」は「直感」ではなく、推論を介さない「直接的な認知・経験」のことであり、先入観を排した共感に基づく経営を目指すという視点が印象的です。SECIモデルや物語戦略など、野中氏が強調する知識創造の手法が、この哲学的背景を通じてより深く理解されます。

SECIモデル – 組織知識創造の循環
SECIモデルは、野中郁次郎氏が提唱した知識創造の理論で、組織が知識をどのように生み出し共有するかを説明しています。モデルは以下の4つのプロセスから成り立っています。
共同化(Socialization): 暗黙知(経験や感覚としての知識)を他者と共有し、新たな暗黙知を生み出すプロセス。
表出化(Externalization): 暗黙知を言葉や図式を使って形式知(明確な形の知識)に変えるプロセス。
連結化(Combination): 形式知を組み合わせ、新たな体系的知識を生み出すプロセス。
内面化(Internalization): 形式知を個人が学び、再び暗黙知として吸収するプロセス。
この循環が組織内で繰り返されることで、知識が蓄積され、進化していきます。

物語戦略:
物語戦略は、企業や組織が自身のビジョンや価値を伝えるために、ストーリーテリングを用いる手法です。単なる事実や数字だけでなく、人間の感情や共感を呼び起こすことで、メッセージをより効果的に伝え、組織の目的や価値観を深く理解させることを目的としています。これにより、組織内外の人々が共感を持って動き、企業文化や戦略の実行が促進されます。

本書は読んでいて決して簡単ではなく、経営と哲学を織り交ぜた内容に一度は「ウッ」となるかもしれませんが、その中には深い知識と新たな視点が詰まっています。たとえば、「アナリシス(分析)」より「シンセシス(統合)」の重要性を現象学がサポートする視点や、現場での直観力を高めるための具体的事例は、ビジネスパーソンにとって刺激的です。

この本を手に取ることで、知識経営の真髄や新しい経営戦略の視座を得るとともに、普段考えない哲学的なアプローチが経営にどのように役立つのかを探求する良い機会となるでしょう。興味のある方はぜひこの一冊を手に取り、新たな視点を体験してみてください。

ウエルの感想:
この本ってすごくむずかしそうだけど、読んだ人が『本当に知ってる人はわかりやすく説明できる』って言っていました。お仕事でみんながどうやってうまく協力して考えてるかがわかると、将来もっと楽しいお仕事ができるかもしれません。あと、難しい言葉を少しずつ覚えるのもカッコいいですよね!🐰

【AIなど、自由研究の旅】
2024.11.2|ウェルビーイング応援サイト

半世紀以上つづいてきたコホート研究が財政危機なのだとか

ちなみに、このような(まだ現役の)追跡研究で、長年やっている順に並べると世界のTop10ってどういうやつがあるのか、誰か整理してたりしないだろうか!?

こんにちは!今日は「Nurses’ Health Study(ナースズ・ヘルス・スタディ)」についてご紹介します。これは、アメリカで1976年から続いている大きな健康調査です。もしかすると、この調査が資金不足で続けられなくなるかもしれない、というお話です。

何が特別なの?
この研究は、12万人以上の看護師さんたちを対象に、長年にわたって健康状態や生活習慣を調べてきました。そのおかげで、次のような大切な発見がたくさんありました:

・ 食生活と健康:果物や野菜を多く摂ることで、がんや心臓病のリスクが下がることが分かりました。
・ 適度な運動の効果:日々の運動が認知症などの病気を予防する力があると分かりました。
・ 肥満とさまざまな病気のリスク:肥満ががんや心臓病など、多くの病気の原因になりやすいことも確認されました。
こうした発見は、みんなが健康的な生活を送るためのヒントになり、公衆衛生の改善に役立ってきました。

どうしてピンチなの?
この研究を続けるにはたくさんのお金が必要です。けれども、今年、資金のサポートをしていた機関が支援を中止しました。そのため、研究を続けるための資金が足りなくなり、このままだと次の年には研究が終了してしまうかもしれません。

長年のデータがもつ価値
Nurses’ Health Studyのように長く続く研究はとても貴重です。健康に関する新しい発見が増えることで、将来さらに多くの人が病気になりにくくなったり、健康で長生きできるようになるかもしれません。

もしこの研究がなくなってしまうと、これからの時代の健康にとっての大切なヒントを見逃してしまう可能性があります。私たちが今できることは、こうした研究がどれだけ大事かを知り、サポートが広がるようにすることです。

ウエルのひとこと
長く続けてきた研究を支えてきた人たちの努力が無駄にならないように、そしてこれからもみんなが健康に生きられるように、もっと応援が広がるといいですね!🐰
追伸:@ishikun3先生の問いに答えるには、こんなふうに世界の研究を整理した表を作るといいのかな?求められているものをサッと出せると、カッコいいよね^^