
日本に今必要なのは、人を尊敬する力なんじゃないか、という話をしてみました。
でも、この文化の中で、人を尊敬できる子供を育てるにはどうするか、というのは難しい問いなのかもしれない。@takuyakitagawa
尊敬するのも一つの能力だっていうことだね。これを教えるのは難しいけど、重要なことだ。
フワフワしている現象について言葉で説明できる人は本当にすごいなあ。北川さんのような頭のいい人が、みんながなんとなく感じてもやもやしていることを具体的に「まさに」という形で話す姿には本当に尊敬の念を抱きます。今からでも本気で、人を尊敬する力を身につけたいです!
目次
人を尊敬する力と日本の未来を語る
【日本人と天才論】日本人は他人を尊敬できない/AIは実験科学に生まれ変わった/More is Different/共同生活とウェルビーイングの関係
プロフィール
茂木健一郎氏: 脳科学者、理学博士。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。クオリアをキーワードに、脳と心の関係を研究。『脳と仮想』で第四回小林秀雄賞を受賞。
北川拓也氏: 経営者、Well-being for Planet Earth共同創業者兼理事。元楽天グループ常務執行役員CDO。理論物理学者として20本以上の論文を出版。Topologic社を共同創業。
竹下隆一郎氏: PIVOT執行役員、チーフ・グローバルエディター。元朝日新聞経済部記者、元スタンフォード大学客員研究員。世界経済フォーラムメディアリーダー。
本記事では、茂木健一郎氏と北川拓也氏によるPIVOT対談の後半部分を取り上げます。対談のテーマは日本における人を尊敬する力と、その育成についてです。

天才の定義と日本の教育
茂:日本のメディアって馬鹿だから、東大理三に受かった時点で天才とか言いがちじゃん。
北:日本はもう圧倒的に人を褒める力が弱いです。褒めることはできない、っていうよりかは心の底からすごい、と思えてない。尊敬することができない。
北:コンピューターサイエンスって理論的にわかったことを再現する領域だ、っていうに思ってる人も多いと思うんですけど、ChatGPTのAIに関してはパラメータ数をファーっと出してったらいきなり相転移のように、できることがワッと増えたんですね。だから、実験科学になったんだと思います。
茂:この番組、PIVOT(方針転換)って言うじゃないですか。実は俺ずっとね、北川さん見ててPIVOTだな〜と思ってて。物理やってて、そのあと楽天行って、その後ブロックチェーンの会社やってたんだよね。
北:その会社、今も一応あるんですけれども、最近のフォーカスは量子コンピュータの会社の仕組み…
茂:でウェルビーイングもやってて。だからPIVOTしてますよね。意外と。
北:そうっすね。ちょっとPIVOTしてますね。
茂:どうですか?PIVOT。
北:僕、好きなんすよ。今でも覚えてるんですけど、ハーバードで初めて行ったとき、秋なんでちょっと肌寒い季節で。英語も僕、元々そんな喋れるタイプじゃないんで。
茂:タイプって。
北:(笑)帰国子女じゃないってことですね。帰国子女じゃないんで英語はあまり、できない人間だったんで。行ったときにnobody(誰でもない)な感じですね。だから、何者でもない感覚。でも、そこにはすごいものがあるはず、っていうワクワク感をすごい覚えてて。ちょっと寒い肌寒い感じで。なんかフレッシュなエアーみたいな、空気みたいな感をすごい覚えてて。あれが結構、やっぱ好きだったんですよね。
茂:PIVOTしたときに、新しい分野に行くとnobodyだから。
北:そうです。
茂:その感じが好きなんだ。
北:その感じが好きなんですよ。
竹:じゃあ、somebody(誰かである)になったら次行く・・・
北:・・・っていう癖が若干ありますよね。
茂:竹下さんも実は朝日からハフィントンポスト行って、ここ来たからPIVOTしてますよね。今、何だっけ?
竹:チーフ・グローバルエディター。

竹下隆一郎氏 noteプロフィールより
北:良いですね。
茂:だからPIVOTしてるんですよ。どうですか?今のお話聞いて。
竹:僕も結構、共感しますね。ただ、僕はなんか「根本は伝えたい」ってのがあるんですけど。今はやっぱり映像で伝えるのが一番いいので映像にPIVOTした、っていうのは大きいかもしれないですね。
北:軸がありつつ。
竹:そう。軸がありつつ、手段がどんどん変わってる感じですね。
北:はい。
茂:うん。何なんだろうね。ハーバード、ユナイテッドのボストンの優秀さって。なんかインサイト(洞察)あります?なんか…。俺なんか通り過ぎたことしかないから。おそらくね、最長で数日しか居たことないから。何なの?

ハーバード大学キャンパス俯瞰 / 出典:Wikipedia
北:やっぱり、常に価値とは何かっていうところに関する、それぞれの人が持ってる信念がありますね。だから、今でも量子コンピュータの会社のメンバーの人、スーパー優秀な天才だらけなんですけど話してると、自分の中に世の中においての価値っていうのはこういうものなんだ、っていう、すごい強い信念があって、それをもう結構とことん実践してますよね。あそこの人たちって。っていう感覚が僕の中にはありますね。
茂:エクストリーム(過激)に実践してますよね。でも必ずしもアライン(そろえる)しないこともあるじゃん。
北:もちろんです。もちろんです。でも優秀な人になればなるほど幅広く「価値とは何か」っていう感覚を持っているので。この人の価値はこういう、すごいことを生んでいて、それに関してはリスペクトをして自分はこうだから上手く、こういう風にコラボしようってことを、よくやっていますね。
竹:そういう価値観とIndividual(人格、個性、個体)な感じと、さっきのIndividualがもしかしたら再現できるかもしれないっていうのは、どういうふうに北川さんだったら整合性とっているんですか?
北:あー。でも、それはでも難しい質問ですね。面白い質問だと思いますね。でも…。時間軸の話なんすかね。だから結局、今の生成技術って割と今ここで、たとえば画像作って絵を作って文章を作ってって話をしてますけども。
さっきの山下さんの話って、人を生むときって10年20年の熟成を経て、その経験だとか苦労だとか成功だとかを引きずって次の一歩を踏み出す、っていうキュミュレイティブ(cumulative / 積算的、蓄積的、累積的)な、イクスピリエンス(experience / 体験、知識、全経験)な活動をしてるんで、今まだAIが考え出してないのは多分そういうエンティティ(実態、存在、本質)を育てる。育てるときにどういうふうに育てるべきか、っていう議論にはまだ至ってないですね。
茂:そうなんだよ。竹下さん、よく名前間違えられる。今、山下さんっつったじゃん。俺も初回の収録で佐々木さんって言っちゃったんだよ。
竹:全部スルーするっていう方針で。
茂:何で間違えやすいかって言うと、おそらく世の中の竹下イメージと合ってないんだよ。名前変えた方がいいよ。
北:おかしいですね
茂:なんかね、竹下っぽくない。
竹:先祖代々・・
茂:山下っぽい。あるいは佐々木っぽい。
竹:でも北川さんは、北川さんぽい。
北:茂木さんは、めっちゃ茂木さんぽい。
茂:本当に…。だから、MITだとメディアラボとかよく行ってたんですけど。

MITメディアラボ / 出典:Wikipedia
MIT:米国マサチューセッツ工科大学
メディアラボ:情報技術、メディア、デザインの交差点において革新的な研究と実践
ボストンのあの雰囲気って今言ったようなことって、ひとつあると思うし。MITですげえなと思って聞いたのは1人1個、IPアドレス?、グローバルのIPアドレスを持ってて。それで何に使ってもよくて。それを何かやらかしちゃってても全然それを気にしないっていうか…とか。いろいろ聞くんだよね。
北:おもしろいっすね。思想を感じますよね。そういう話には。
茂:だよね。ハウスの話とかね。ハウスはどういう感じだったんですか?自分の居たの。
北:僕…ローウェル・ハウス(Lowell House)っていう。

ハーバード大学ローウェル・ハウスの外観。出典: Harvard Gazette
ハーバード大学ローウェル・ハウスの図書室。出典: Harvard Gazette
竹:ハウスって何ですか?
北:ハウスってあの…。ハーバードの学部生が、2年生以降になったときに住む寮の名前なんですよ。寮のことをハウスって呼ぶんですね。
茂:いろんなメジャーな方がバーっと。
北:うん…共同生活してるんで、まさにいろんな分野の方が同じ食堂でずっとご飯食べてるんで仲良くなる。
竹:北川さんのハウスは、どんなハウスだったんですか?
北:僕は基本やっぱり友達、居なかったんで。どこに住んでも同じだったんですけど。まあでも、そうですね。川沿いの、ひとつのハウスで非常に思い出深いですね。一応、雅子さまが昔住まれていたハウスと同じ。
で僕たまたま…彼女はハーバードなんですけども。1年生の寮も、2年から4年間の寮も全部、雅子さまと同じなんですよ。

ローウェル・ハウスのロシアの鐘、ハーバード大学。出典: Harvard Gazette
茂:雅子さまストーリー。
北:たまたま。っていうストーリーは聞きましたね。
茂:僕はね、どっちかというとアメリカの大学が良い、っていうストーリーばっかりは日本にベースしてる人間としては、ちょっと…何か変な感じ。僕もケンブリッジ留学してたけど。

ケンブリッジ大学トリニティカレッジ / 出典:Wikipedia
ケンブリッジの、たとえばトリニティカレッジとめっちゃ良いけど、「トリニティ良いでしょ」って言ったって。それよりも日本の大学をもっと良くした方が良いんじゃないの?って。あれ、日本の大学って何か関わったことあるんだっけ?
北:いや、あんまりないです。一応、物理学者ってところに呼んでいただいて話をするぐらいのことはありましたけど…。
茂:何かうまく…コストかけないで…そんなお金かけられないと思うんで。日本てお金ないんで。何かいいアイディアないっすかね?

北:僕の後輩で小林亮介ってご存知かもしれないですけど、ハーバード行ったやつが今、寮を日本に作ろうとしていて。下北カレッジって。下北に作ってるんですけど。寮は僕は結構、本質的に有りだと思うんです。っていうか学生の寮も、すごい有りだと思うし。
僕、二子玉に住んでいたころに実は長屋みたいな所に住んでて。大家さんが、すっげえ気のいい人で。バーベキューセットを庭のところに真ん中にボンと置いて。もうコロナの間も毎日のように肉を焼いてた時期があって。
そういった共同生活。核家族の拡大。子どもをお互い一緒に育てる、っていうか。そういう共有生活スタイルは、僕はウェルビーイングの観点でも人間の進化という観点でも非常に寄与度は高いと思うんです。
竹:それは、ウェルビーイングでよく時間の話をされているんですけど同じ時間を過ごしてる、っていうのが大事なんですかね。
北:特に、やっぱり学生の時期っていうのは教育とは、僕のなかでは新しい価値の獲得なんですね。今まで価値だと思ってなかったものを、すごいこれ価値あるねって思えることは教育だと思っていて。それって、まるで興味ないことに興味を持つ、っていう矛盾したことをやらなきゃいけないですね。
興味ないことに興味を持たせるのが「人間関係」
それを唯一起こせるチカラって僕は唯一、人間関係だと思っていて。だから共同生活は僕は新しい価値観を獲得するのに絶対、必須だと思う。
感情とAIと意識
竹:それって今後、人間にしかできないんですか?要するにバグった価値観を入れていくっていうのは人間だけができるのか。それとも何か量子コンピュータもシミュレーションして・・・
北:もっと価値があるとかないとか、の判断基準が「感情」だと思ってるんです。僕は。別に人間じゃないといけない、ってこと無いんですけども、感情というものをAIに宿らせる必要性がある。その感情って、どっから来るかっていうと結局ゆくゆくは進化論的な人間の、結局サバイバルフィット*の中からある程度出てきてるので。そういう文脈にAIを載せてしまえば、その中に感情の獲得っていうのがあり得る。
サバイバルフィット(survival fit)
生存能力や適応能力。困難な状況、競争の激しい環境で生き残るために必要な能力や特性です。具体的には、柔軟性、適応性、忍耐力、問題解決能力、ストレス耐性などが「サバイバルフィット」に関連する特徴になります。
茂:それ、ものすごくおもしろい話です。僕のライフハック(効率化の方法)は意識なんで。
すごく今Uターンしてる、っていうか安心してるのは今の人工知能の先には意識はない、っていうのは確信してるんで安心してるわけ。そこは大丈夫。ただ、本当に意識のやってる99.9%は、もうできちゃうと。AIで。そういう意味においては脅威を感じてる、っていうか。チューリングテスト*合格しちゃったし、おそらく。
チューリングテスト(Turing Test)
イギリスの数学者であり計算機科学者でもあるアラン・チューリングが提案した、人工知能(AI)の能力を評価するためのテストです。
テストでは、人間の判断力と区別がつかないほどの自然な対話を行うAIが存在するかを判断します。テストの基本的アイデアは、テスト参加者(人間)がコンピュータと対話し、人間との対話と見分けがつかないかどうか評価することです。もしテスト参加者がコンピュータとの対話を人間との対話と見分けられない場合、そのコンピュータは「合格」とされ、人間のような思考や理解を持つとみなされます。
チューリングテストは、人工知能の「強いAI」(General AI)到達を評価するための基準として使用されてきました。つまり、人間と同等の知能や認知能力を持つAIが存在するかを判断するための手段として注目されます。
心の理論、誤信念課題も、おそらく合格しちゃってるし。
北:誤信念課題って何ですか?

茂:Aってとこに入ってると思ってるんだけど実はBも客観的には映ってて。それを間違った信念を抱いてて、それを分かるかっていうのが、もうLLMは合格しちゃってるんで。
ただ今、感情って言ったじゃないですか。意識と感情って、おそらく人間の本当に微妙なところに属するんで。だから、いわゆるAI効果*ってあるじゃないですか。

AIができたってことは、もはや人間の本領ではないって思うバイアス(かたより)みたいな。どんどんハードルが上がっていく、っていうか。

逆に言うとAI効果で、この集合がもうできちゃうっていうのと、この余集合がどんどん狭くなっていくんだけど、ここが意識とか感情の領域だと思うんだよね。だから、それが狭くなっていくんだけど水が干上がっていって水たまりがもう無いよ、みたいな。そこを見据えていくのが、すごく大事だと思うんだよね。
北:逆に広がる、っていう感覚はありますけどね。狭くなるんですけど、そこに集中して我々が理解を深めることによって高評価されていると思います。普通に感じはします。
日本企業とGAFAMの競争力
GAFAMとは、Google・Amazon・Facebook(現Meta Platforms, Inc)・Apple・Microsoftの企業名の頭文字をとった呼び名で、ガーファムもしくはガファムと発音されています。
茂:あと僕、強く感じるのは北川さんもこれからアメリカの会社コミットしていくってことで。優秀な人が外国から来ちゃうじゃないですか。だって、イーロン・マスクも南アフリカから来たし。あの構造って日本で作れないんですかね。

北:作れると思いますよ。
茂:どうやったら作れる?最優秀層。ベストプラクティス(最良)。天才たちを呼んで、東京とか京都とか大阪に呼び寄せる。
北:意外とでも、そういうコミュニティって多分Tedとかのコミュニティも同じだと思うんですけど。そんなに人数いらないじゃないですか。
茂:そうだね。
北:本質的には。たとえば、量子コンピューターを作った物理学者の集合体って20人程度なんで。20人ぐらい、その人たちがすごく居心地よくなるような…
茂:居心地良い空間って何か、というね。これが重要なんだ。
竹:食べ物が美味しかったりとか。
茂:それは間違いなく。じゃ日本に来てくんないのって何が足りないんだろう?
北:何かクリティカル・マス*が無いんでしょうね。
クリティカル・マス(Critical Mass)
集団の中でたとえ大多数でなくても存在を無視できないグループになるための分岐点があり、それを超えたグループをクリティカル・マスと呼びます。
応用数学の研究グループにおけるグループサイズと研究品質の関係。グループサイズが増加するにつれて研究品質が向上するが、臨界質量を超えるとその増加率が減少します。
物理学、地理学、生物学、化学の各分野におけるグループサイズと研究品質の関係。各分野で臨界質量が異なり、グループサイズが一定のポイントに達するまで成長することの重要性が強調されています。
農業、法学、建築学、外国語、英語、純粋数学など、複数の学術分野におけるグループサイズと研究品質の関係。各分野での臨界質量の違いが視覚的に示されています。
応用数学におけるグループサイズと総合的な強度の関係。研究チームの規模が増加すると総合的な強度も増加するが、一定のポイントでその効果が飽和します。
Critical mass and the dependency of research quality on group size (arXiv)
Critical masses for academic research groups (OECD iLibrary)
茂:あー。なるほどな。
北:1人2人は当然、いらっしゃるんでしょうけど。そういうイシュー(課題)で面白い人たちは。あとは、やっぱりビジョンの共有があるんじゃないですか?その20人で集まった時に、どこに向かって何をするんだっていうビジョンの共有は、やっぱり簡単ではないですよね。
茂:サム・アルトマン(ChatGPTの生みの親。出典:Wikipedia)が、OpenAIの拠点を日本につくるとか言ってたじゃん。岸田さんに。あれが単にローカライズ、たとえば日本のデータを集めるためとか、日本語対応とか言うだけだったらスケール感小さくなっちゃうから。あれは、だから本当にOpenAIの実は東京…かどうかはわかんないけど研究拠点てすげえよ、ってするための条件って何なんだろう?
北:やっぱり・・。シェインって会ってないです?まだ。そこの代表になるシェインって僕の昔からの知り合いなんですけど実は。OpenAIに行くか行かないか、みたいな相談にも乗ったんですけど。シェインがこれからやるチャレンジだと思うんですけども。
超天才の20人を集めたときに、その20人が心の底から邁進できるような環境作りをするリーダーシップ。サイコロジカル・セーフティ(心理的安全性)とかリソースですね。お金とかOpenAIのへのアクセスだとか全部を含めて、その場作りをいかにできるか、っていう。

これでも正直、吉田松陰的な話だとは思うんですよね。志の共同体。簡単じゃないし…。
吉田 松陰:江戸時代後期の日本の武士、思想家、教育者です。山鹿流兵学師範。明治維新の精神的指導者・理論者。「松下村塾」で明治維新で活躍した志士に大きな影響を与えました。
竹:ソートリーダー(thought leader 思想的リーダー)って必要ですよね。
北:その人が、thought leadership をとるかどうかは、別なんだと思う。まあ吉田松陰はそうだったんですけども。そうじゃなくて僕はいいと思ってるんですけど。ただ、いるんですね、そういう人がね。やっぱりメディアラボとかも、そういう場所だと思うんですけど。当然トップもすごいんだけど。
まさに、そこに集まってることが、とにかくプラウド(proud)誇りで、ハッピーで、このビジョンに対しても全身全霊やっていくんだ、っていうのをすごい信じられる場所かどうか、っていう。
竹:それ日本に可能だと思います?
北:あ、全然できると思います。
茂:それやんないと駄目だよね。今まで意外と経産省とかお金はあるんだけど、あんまりちょっと言えないけど第5世代コンピュータとか。情報大航海時代とか。ちょっとね、2、3周遅れてる感じの。ただ後からトロンなんかもそうだけども、皆さんも意外と要素技術みると良いことやってる気がするんだよ。
トロンとは、あらゆる機器、施設、設備にコンピュータが内蔵され、相互に通信し連携して動作する社会を想定しているプロジェクトです。中核となるコンピュータやソフトウェアの基本設計構築を目指しています。
北:全然ありますね。
茂:ビジョンが確かに足りないんだよね。

北:後は人を褒める力だと思うんですよね。やっぱ日本は圧倒的に人を褒める力が弱いっすよね。
茂:なんでアメリカって、Awesome(最高!)ってすぐ言うんだろうね。オーサムじゃねえだろ、みたいな。良い質問だね!みたいに。
北:そうですそうです。僕も量子コンピューターの会社を手伝うときも改めていいなと思ったのが、いい仕事をしたときに、いろんな人がすごい良かったよっていうのを口に出して言うんですよね。もう圧倒的に、これいいです。やっぱり育てないと才能は。
なんで、茂木さんも昔からね。いろんな人と対談する中で、やられてたことだと思うんですけど。やっぱりメディアがですね。まさにPIVOTみたいなメディアが、まさに田中秀宣みたいな才能を褒めまくると。
竹:なるほど。まだ発見されていない人っていうことですね。メディアって、どうしても褒められてる人を褒めるっていうのは、すごいんですけど。引き上げるのは日本は得意じゃないですよね。
北:そういうのを、もっとしっかりローカルでやるべきだと。
茂:しかも、日経テレ東大学みたいなんじゃないやつ。俺この前もさ、ハーバードの医学部の女性と喋ってて、日経テレ東大学、良いんだけど褒め方が…イエール大学准教授とかさ。ああいう肩書き主義やめてくれないかな。ダサいから。
北:そうっすね。
茂:佐藤ママの本読んでたらすごく佐藤ママの息子たちって偉くて全員、灘中、灘高から理三に行ってるんだけど。取材対応が来た時に、その息子たち偉くて。僕たちは、ただ受験で受かったってだけで何もまだ成し遂げてないんでって。何かしてからマスコミの取材を依頼を受けますって。偉くない?
北:偉いですね。灘のやつは、そういうのが多いです実は。
茂:なんだけど日本のメディアって馬鹿だから、東大理三に受かった時点で天才とか言いがちじゃん。
竹:週刊誌は全部、名前とか載せてましたからね。昔は。
茂:だから、ああいうダサい褒め方じゃなくて本当に実質を見た…
竹:だから、褒め方わかんないんすよ。そういう東大とかイエールとか、、
茂:イエール大学准教授の、あのおでんみたいなメガネした成田悠輔とか…でも、成田悠輔の論文はめちゃくちゃ面白い。だからね、実質をちゃんと理解して分かればいい。
北:でも、それは、まダーパっていう。
ダーパとは、DARPA / アメリカ国防高等研究計画局は、軍隊使用のための新技術開発および研究を行うアメリカ国防総省の機関です。ARPAの時期にインターネットの原型であるARPANET・全地球測位システムのGPSを開発したことで知られます。
アメリカの軍の生き方を僕は、もう大学の頃もあったんですね。たとえば、ダーパのプログラム・マネージャーって、どの量子コンピュータのプロジェクト研究に対してお金をつけるかっていうのの判断をするんですけども。そういった人たちって、ちゃんと物理の博士を持っていて中身を超理解した上でやる。
で、投資家も同じですね。投資家もバリバリの理論的な体系を理解していてスーパー理解した上で、しっかりと投資するみたいなところがあって。
竹:なるほど。
北:評価する側…
竹:あ目利き側?
北:そう、目利き側が、めちゃくちゃインデプス(in depth / 深く掘り下げた)にプレーヤーだった目利きが、基本的にはジャッジ側にもいるんで。そのコミュニケーションがすっごいスムーズなんですよ。でも、日本はジャッジする側の人たちが、もう諦めてることが多いんですね。
論文を読まないとか、その領域に対してちゃんと時間を使って理解しようとしないとか、心の底からそういう領域に興奮してるんじゃなくて、すごいアングルかけた感じで何か興味を持ってるんですね。たとえば、なんかその…そう。そうなんです。
竹:ぐっと飲み込みましたね(笑)
茂:言いにくい言葉を(笑)
北:だから、褒めることができないっていうのは、褒めることができないって言うよりかは、心の底からすごいと思うことができていない、が正しいと思うんです。
竹:あーなるほど。
北:こいつ何なの?みたいな。
茂:なるほど。例外があってさ。
望月新一のABC予想についてのさ、「宇宙際タイヒミューラー理論」…訳わかんない。あれを作ったNHKのスタッフの中には、数学の修士か博士持ってる…
北:NHK、僕すごいと思うんです。あの人たちは分かってます。
茂:だから、あの人たちは分かってるけど…
北:ドキュメンタリー見たら、やっぱ心の底からそれを尊敬してるドキュメンタリーって分かりますよね。やっぱり。
竹:あー作り手のね。
茂:だから、ああいうことはある。あるんだけど、ほとんどは肩書きとか・・。
竹:何か半分ばかにしてるんでしょうね。肩書きしか判断できないっていうのは・・。
茂:ばかにしてるのかな。
竹:ばかにしてるっていうか・・。何ていうんですか。
北:だから、そういう・・、何か商業的価値のあるものとして扱っちゃってるっていう。
竹:商品として扱ってる。
北:だから多分…、撤回すると、褒めることができないんじゃなくて「尊敬」することができない。
茂竹:良いこと言うね〜
北:日本人は「他人を尊敬することはできない」。これがイシュー(課題)ですね。
茂:もともと、でも柔道でも何でも、礼から始まって礼に終わるっていうか。相手に対するリスペクトってのはあるはずなのに…。
北:本来的にはある。素地はあります、だから。素地はすごいあるのに、尊敬するということはどういうことかを忘れちゃってるんでしょうね。
竹:なるほど、それを思い出せば。
AIは実験科学に生まれ変わった

竹:ちょっとAIの話に戻りたいんですけど、北川さんのtweetで面白かったのは、これから何か実験科学の時代に入ってくるって…
北:これも田中秀宣の。
竹:あ、元々、田中秀宣さんの…。

北:(笑笑笑)
竹:すごい人なんですね!
茂:どういうこと?
北:コンピューターサイエンスって理論的にわかったことを再現する領域だ、ってふうに思ってる人も多いと思うんですけど。今回のchatGPTのAIに関しては、パラメータ数をバーっと出してったらいきなり相転移のようにできることがワッと増えたんですね。だから、実験科学になったってことなんですよ。そう。だから、コンピュータハウスは、これから物理とかノーベル賞を取るように現象でノーベル賞を取る時代が来る。
で、この実験科学っていうのは他のサイエンスの領域では十分に発達した領域で、どういうふうにやっていけばその分野が発達するかまで分かってるのでコンピュータサイエンスも実験科学として、これから実験科学と理論化学の両方をしっかりと伸ばしていくことが必要なんだと。
実験科学:実験を研究の主な方法とする科学です。思想と観察だけで行なわれる数学・天文学以外の自然科学の大半と心理学を含みます。
理論化学:理論的モデルや数式をもとに、既知の実験事実を説明したり、未知の物質の性質などを予言したりする演繹的*アプローチを行う化学の方法論です。
(演繹的:法則や真理に基づいて特定の事実や結論を導くため、論理的な妥当性や厳密さを重視)
竹:なるほど。
北:で、田中秀宣は、実験科学のあり方を分野として確立したいって言って今ハーバードに居るんですよ。
竹:それは自然現象みたいに今後、観察が大事になってくるんですか?こう、いろんなことを考えて…
北:まさに。観察手法というものの発展。
茂:確かに。トランスフォーマー(機械学習モデル)のアーキテクチャ(コンピュータ システムの論理的構造)が発表されたときに、まさかGPT4みたいな能力持つとは本人たちも思ってなかった・・
北:思ってなかったし、やった後に誰も理解してないです。
竹:もう、いろんなことがボコボコおこっちゃってるみたいな…。
茂:だから僕LLM(large language model)の、やっぱりずっと脳科学やってきた人間としての衝撃は本当に何であんな能力持ってるのか理解できなくて。説明できなくて。ただ、考えてみたら人間の脳もそうじゃん。これもlarge language model(大規模言語モデル)みたいなものだから。
北:ちなみに田中秀宣の専門は、AIと脳科学のブリッジング(bridging)なんで。次回ぜひ、ここに(笑)
竹:Tweet載せときますね、ここに。

北:ぜひ。
More Is Different

茂:ところでさ。フィリップ・アンダーソン(Philip Anderson)の「More is Different(量が質を変える)」の論文も最近、意外と愛引してるじゃん。ってか前から。本文の意味ってどうですか、今。
北:いやいや。もうますます正しかったなと。
茂:どういうところ?今これを見てるレイマン(layman / 素人。門外漢。専門知識のない人)に、ちょっとざっくり説明を・・
北:あ、レイマンにですね。まその、フィリップ・アンダーソンが言ったMore is Differentって思想は、いわゆる科学持っていた、いわゆる還元主義ですね。つまり、複雑なものがあったときに、どんどん物をちっちゃくしていって要素のことを理解すれば再構築できるはず、っていう科学の思想がニュートン時代から、ずっとあったと。
だから、どんどんちっちゃい、素粒子学とかそういうふうに理解が進んでいったわけなんですけども。フィリップ・アンダーソンが、1970-80年代ですかね。
茂:71年かな。あの辺りね(1972)。
北:に、もうその時にはだいぶ分かっていたんだけれども。要素を理解して構築しても、実は大きなものの理解は得られない、っていうことを数理的に実は証明した、っていうか発表した…
茂:出してる例が、オタッキーすぎるけどね。アンモニア分子の何かだよね。おたくだよね。

北:まさに。ま超おたくなんですけど。までもその当時、実はいわゆる相転移というそのコンセプトをわかりやすく説明しようとして、そういうことを言ったんですけども。言ってしまえば水分子、アンモニア分子でも良いんですけども、分子を1つで見ると…ただの分子なんですけど、それをどんどん数を増やしていって10の23乗個とかを用意すると水になったり氷になったり、いろいろすると。
で、その変化、相転移が起こる変化というものは実は、すごく再構築するのはファーストプリンシパル(第一原理)って言って、いわゆる一番基礎的な理解から積み立てていくのは極めて難しいんすよ。実はそこには、すっごいジャンプがあって。
竹:じゃ個別を見ても全体が分からない…。
北:分からない、かもしれません。
茂:それ、まさにLLMで分かったことだよね。
北:まさに。だから、それを彼は物理的な概念を使って正確に証明をしに行った人なんですけれども。それでノーベル賞取った人だったんで。たとえば、その現象というのは、より一般的であるって彼はすごい議論しようとしたんですね。つまり生物における複雑性だとか、いうものも実は元々そういう思想がもしかしたら裏にあるんじゃないかと。ってことを提案して。
僕ら普通の人からすると当たり前に感じるのが、人間もそうだよねと。1人という人間と2人という人間は、まるで違うと。2人いたら、もう友達ができる。3人になった瞬間に、2人と3人はまた全然違う。関係性が。3人と10人が違うみたいな組織論の中でも結局、還元主義みたいな考え方が成り立たない。1人ひとりがどういう性格だからグループになったらどうだよね、っていうのは全く成り立たないんで。
竹:しかも大衆だったらナショナリズムが起こったりだとか、ファシズムが起こったりしますよね。
ナショナリズムとは、国家という統一、独立した共同体を一般的には自己の所属する民族のもと形成する政治思想や運動です。
ファシズムとは、イタリアのベニート・ムッソリーニと彼が率いた国家ファシスト党が提唱した思想やイデオロギー・政治運動、および1922〜1943年までの政権時に行った実践や体制の総称です。
北:まさに。
茂:だから、この場が洒落ててね、さらにフィッツジェラルドとヘミングウェイ会話が引用されてんすよ。パリで。
竹:オシャレですね。
茂:フィッツジェラルドが言ったのかな、「何かお金持ちでいろいろ違うところあるよね」とか、いうわけ。そうしたらヘミングウェイが「そうだよね。金をたくさん持ってる」って。このラストがすごくカッコよくて。
フィッツジェラルド/ヘミングウェイ往復書簡集
竹:またヘミングウェイが出てきましたね。
茂:だから要するに、お金持ちは確かに教養があったりとか。ちょっと振る舞いが違ったりするじゃないですか。服をたくさん持ってるとか。住んでる家が違うとか。それはイマージェント(emergent / 出現した)なビヘイビア(behavior / 行動、態度、振る舞い)だとするじゃないですか。お金持ちの。いろいろ違うよね、っていったときに確かに「彼らは、たくさんお金を持っている」。
元に戻るんだけど、パラメーターのスケールアップによって何か全然違うことがビヘイビア、イマージェントとするっていうのが。あの論文の最後は笑えるよね。
北:面白いですよね。洒落てます。
茂:だから、LLMってまさに、それが起こったって。実験科学っていうのは、確かに良いです。だから、さっき言った外国の方、天才を呼ぶっていうのも、10年、20年、30年で、それを3年、5年、10年とやっていくと、なんかイマージ(出現)するかもしれない。
竹:なんか浮かび上がってくる、かもしれないですよね。
北:うん。うん。うん。
茂:それじゃ、このPIVOTも何か一つ、いっちょかみで・・。何かやったらね。
北:かなり貢献してますよね。PIVOTって割と1軸に捉えられるじゃないですか。
竹:そっから浮かび上がってくる一般意志なのか何かが、ちょっとオカルトチックなんですが何か出てくるはずだ、って確信があるんですよね。
北:めちゃくちゃありますよね。竹下さんとか佐々木さんが、人に対する興味とか尊敬が、PIVOTっていうメディアなんだと。いうふうに若干やっぱり感じますよね。
竹:多分、昔の雑誌はテーマを決めて当てはめてるだけなんですよ。
北:あーそうでしたね。
竹:でも今は人から浮かび上がっている何かを多分、捉えようとしてるのがPIVOTなのかなって思ってるんですよね。
茂:そういう意味でいると全て、ここからイマージする可能性がありますね。
竹:ありますね。
茂:ところで、どうですか?ロードマップとしては、どういうこと考えてんですか?量子コンピュータの会社の。言える範囲で。
北:はい。今年が、ちょっと内容複雑なんで、ちょっとはしょりますけれども。量子コンピュータって、とにかくデカくしていくのが難しいんですよね。今まで256Qビットって話しましたけども。これを間違える量。今って大体1回計算すると0.3パーセントぐらい間違ったりするんで。それを0.00…っつって10個ぐらい並べて、しか間違いない、0.000000…1%しか間違えない機械を作って…

茂:クォンタム・コネクション(Quantum Connection: 量子のつながり) の、何かこうアルゴリズムを変えるってこと?
北:まさに。量子誤り訂正技術を実装する。スケールして実装する。まさに量子誤り訂正技術の内容自体も遥かに良くする
茂:で、北川氏はその理論的なところの担当?
北:いや、僕はもう。
茂:あ、もうマネジメントなんだ。
北:僕は、そうなんす。僕は、だから理論家として10年やって、経営として10年やったんで。両方わかるということで経営として手伝ってる・・。
茂:わーじゃあ、ちょっと一癖も二癖もある人たちがマネージする・・
北:逆にこれ面白くて、僕からすると僕は心の底から尊敬する研究者とかの方々を、いかにサポートするか、なんですね。
これは本当に、何か僕は心の底から絶対自分じゃできない仕事をチームとしてやる、っていう話なので完全にサポーターに回る感じです。僕自身も当然、理解はできるんでやるんですけども、結局ま、しょぼいわけじゃないですか。そんなね、もう。本当の天才たちが、そこにいるんで。
なんで、だからそういう意味では僕はさっきの場作りの面白さというものを体験させてもらおうかなと。だから、僕はちゃんと場が作れる経営者なのか、っていう。
竹:人間ってややこしい面倒くさいじゃないすか。そういうのは得意なんですか?マネージしたりとか。
北:やっぱり、この10年間やってたんで、かなり得意な方だと思うんです実は。そもそも興味があるんで。あと「人に対して尊敬したい」っていう念が基本的には、すごい強いですね。
竹:あ、そこがベースなんですね。
北:人への尊敬が僕は、その場作りをしたい、という気持ちの根源になってますね。
竹:楽天に行ったのは、私なんかデータを把握したいのかなって思ったんですけど…
北:元々はそうですね。
竹:それより、もうちょっと半ゾーンのマネジメントの方が好き、ってことなんですね。
茂:なっていったんだよね。
北:そうですね。
茂:最初はね、単純にもうオタクだったよね。
北:(笑)
竹:経歴を見るとデータが欲しくて行かれたのかなと思ったら…
茂北:最初の頃は。
北:仰るように変わったんですね。ただ、基本的にやったことないことをやりたい人間なんで。やってると、あ、これが本当に価値あることなんだな、って思えるようになったって感じですね。
茂:そろそろ時間になってしまったんですけど何か北川さん、最後に何かメッセージないですかね。これだけは言いたい、ってこと。
北:までも今日良いテーマ出ましたよね。この
「日本人は人を尊敬できなくなってるんじゃないか」
っていう。
竹:それ、すごく面白いっすね。
北:はい。このテーマを是非お2人と、これからも詰めていきたいっすね。
茂:そうですね。それでPIVOTの何かメディアとしての役割も見えてきちゃったんじゃないですか?
竹:ありがとうございます。そう言っていただけまして。
北:ビジョンみたいなものが(笑)。
竹:茂木さん、どうですか?最後、何かコメントを。
茂:そうですね。いや僕は、やっぱり北川さんって会うたびに変わってるんですよね。それがすごいなーと思って。やっぱり変われるって僕はすごい…
北:あ、そうなんですね。自分は感じないっすね。
茂:ポケモンで言うとメタモンみたいなもので。だから本当に、、何か今度また会うときはどういうふうに変わってるのかな、って。めちゃ楽しみですね。(メタモン / 出典:pixiv百科事典)
北:ちょっとね。日が空きすぎるんで。ちょっと開かない時に会いましょう(笑)
茂:ですね。これはボストンでグリーンモンスター見ながらビール飲める時期に行きたいですね。ぜひ。冬は寒いんで。

グリーン・モンスター/ 出典:Wikipedia
竹:もうアメリカ行くっていう・・。
北:2、3ヶ月後にビザが下りれば・・。
茂:楽しみにしています。
竹:はい、ということで北川さん茂木さん、どうもありがとうございました。
茂北:ありがとうございました。
【対談を通して感じたこと】
筆者(編集者)は、研究者のお話を聞くのが好きです。とてもおもしろかったです。まだ理解しきれていないと思うので、理解を深めていきます!。特に、番組に出ている方の人となりを知ることができるのは良いですね。恐れ多くも、北川さんに親しみを感じました(「友達、いなかったんで」「新しいことをやるのが好き」「本当の天才が、そこにいるんでサポートに回る」というところ)。

茂木さん、北川さんは、他己紹介がとっても上手でした!

知識人のお話は本当にすごいです。何がすごいって、これまでの経験、具体的な知識、話を頭の中で処理して伝える力。そして、リラックスムードを作る力!
期待を裏切らず、驚きがいっぱいです。
これは、すごい対談じゃないの・・?
世界なんとか会議を垣間見たくらいのすごい対談じゃないの・・?
くらいの衝撃でした。
なんとなく見て楽しめますが、突き詰めて考えるためレポートにまとめました。
AIについてのお話は新しくて面白いけれど、テキストにしてみると8割わかっていませんでした。実は深い、大切なお話ばかり。
驚くのは、茂木健一郎さんも、北川拓也さんも、竹下隆一郎さんも、考えを整理してお話するプロなのはもちろん、その空気が柔らかいことです。筆者はいざ感想を書こうとすると、とっても緊張してドキドキしました。
「日本人は尊敬することができない」「褒めることができない」
さすが問題提起の上手い北川さん。尊敬し、人に伝えることは難しいです。心の底からすごいと思っても、語彙力が足りません。
実は筆者は、「人について上手に伝えることができない」というコンプレックスから、文章の練習を始めました。壁は3つです。
1. 北川さんの言う、尊敬する力(尊敬 or 愛がないと、そもそも伝える情熱がない)
2. 知る力(時間、もしくは頭を使うので時に苦痛を伴う)
3. 伝える力(お粗末。ひどい。月並みで落ち込む。)
ここで、北川さんが先日シェアされた「尊敬は努力」という言葉を思い出しました。
─── 中略 ───
私の経験では、尊敬とは努力の賜物だ。
尊敬する、ということは
1. その人の生き様や行動、歴史をしっかりと見て理解すること。
2. 自分が「すごい!」と思える事柄が多く存在すること
が必要だ。
前者はその人の話を聞いたり調べたりしないとわからない。時間がかかる。
後者は自分の経験や努力がないと広がらない。サッカーをやったことがないとサッカー選手の凄さがわからない。物理を齧ったことがないとまるでノーベル物理学賞のすごさはわからない。ビジネスを理解して初めて経営者のすごさがわかる。
ものごとの価値を理解することはそれ自体がすごい大切で、努力が必要なのだ。
その価値理解を起因に他人への尊敬が生まれるので、より広い世界を知れば知るほど、本来は尊敬できる人が増える。
─── 中略 ───
2023.05.27|@takuyakitagawa
このtweetを読んだとき、なんとなくそうだなあ…と思ったのだけど、本レポートを書き終わって、本当にそうだ、その通りだと思いました。
場づくり
茂木さん、北川さん、竹下さんの御三方は、秩序だって礼儀をわきまえています。話に登場する人や、見ている人にぶつからないよう気を配りながら、最初から最後まで危なげなく楽しめます。北川さん、茂木さんの外国のお話は、ディズニーランドに行ったみたいな気持ちになりました。
この場にいた全員が楽しげで、上機嫌でした。見ている間、ずっと。阿吽の呼吸があって、誰かのちょっとした言葉を落とすことなく、フォローし、上手にやり取りします。この信じられないような安心感ある場が、一体どうしてできるのでしょう。
それに筆者は、なぜか北川さんのお話に深く影響を受けると感じます。どういうわけか北川さんの言葉は、おまじないにかけられたみたいに「魔法がかかった」状態になります。北川さんの言葉を見たり聞いたりすると、自分の態度が変わってしまうのです。このことは多分、北川さんのマネジメント能力と関係していると思うのです。
たとえば、
もっと多くの時間を well beingについて考え、実践する時間にしていきたい。それは同僚や家族との時間の質を上げることなのかもしれない。
2023.04.17|@takuyakitagawa
人に対する尊敬は、自然と出てくる感情ではなく、努力である。
2023.05.27|@takuyakitagawa
という言葉に対する共鳴です。
北川さんの言葉には、納得感がある・・
5月はその一歩を踏み出したら、環境が一変して寝込み、、、。寝ても寝ても眠い、、、。という現象が起きました。
あなたにの周りで、『魔法のような効果』を感じるものは、何でしょう?
音楽、写真、絵、読書、偉人の言葉、、、『魔法のような効果』を感じるものに出会うことはあると思うのですが、あなたにとっての『魔法』は何でしょう?
筆者にとっては研究者の言葉が、まさにそれでした。研究者は私たちに意味深く、かつ実用的な知恵を授けてくれます。世界を変えるために粘り強く何かを創造している人たちがいるんだ、ということを知ることができます。自らの成長に投資しなくちゃ、と思います。話の内容を理解したいと思うし、意識も変わっていきます。きっと、他の人の意識も変えているのでしょう。
情報取得は、この10年で劇的に変化しました。以前の「対面」は過去のもの。zoomが定着、YouTube動画が拡散、ChatGPTなどのAIがなんでも教えてくれるようになりました。
知識人はカフェで話しているかのように目の前(の画面)にいて、視聴者である私たちは、あたかもその人生を味わう友達のように感じます。この仮想的ともいえる空間にいる間、私たちの態度や気持ちは変化していきます。PIVOTに限ったことではないかもしれませんが、知識人の出演するサイエンス・ビジネス系の番組はこれから、もっともっと熱くなっていくのでしょう。
知識人は私たちが、より良く生きるためのアイディアを授けてくれます。テーマがあって、問い、答えを追求する過程で、私たちの心を動かし態度や行動を変えていきます。

©Clem Onojeghuo
強い絆となるのは「態度と行動の変化」
「つながり」という言葉を多く聞くようになった昨今。最も強い絆となるのは「態度と行動の変化」だと、コピーライティングの権威に教えてもらいました。
その人を見たとき、自分をもっと好きになり、自分とまわりの世界をもっとプラスに、または創造性豊かにとらえるようになり、もっと生き生きしてきたら、見ている人との絆を築けたといえる。これは昔ながらのつながりや、どんな絆の形より強いものになる。
この「態度と行動の変化」をうまく定義する言葉があるのか分かりませんが、北川さんの仰った「尊敬」に通じるものを感じました。
「尊敬することができない」ということ
「フツウ」の人が心の底から尊敬を与えることができるでしょうか。どんな人であれ、「フツウ」はふつう、できないですよね。
誰かと関係性を作る最初の一歩は、北川さんのいう「心の底から尊敬する」人に出会って、自分もその影響を受けたいと心の底から思うことかもしれません。
ウェルビーイング研究者の石川善樹さんは、本物のリーダーに出会うと、人は自分を好きになると言います。
「生き様がすごい人」に出会うと、人はどうなるのか?
(中国の起業家)ジャック・マーが話していると、みんな彼を好きになる
生き様1.0:話していると好きになってもらえる!
生き様2.0:国を好きにさせている!個人、会社を超えて、中国を好きにさせている。
生き様3.0:自分のことを好きになる!「ジャック・マーにもできたのなら、私にもできるかも?」と思わせる
ポイントは、「フツウ」を超える何かを感じ取ること、そして「フツウ」であることだと思いました。
つながりは「カルチャー」の共有
また、PIVOTを観て初めて「つながりは“カルチャー”の共有だ」と感じました。たとえば、番組内で通じる、独自の言葉、共通の理解、合意したアイディアや考え方。
初めて観たときは慣れないIT用語に違和感がありましたが、それを理解し、同じ映像を少しでも共有できた気持ちになる瞬間は快感です。ただの情報交換ではなく、人生を共有して味わうことができた感覚です。

PIVOTに出ている知識人の皆さんの問いと答え、国家機密みたいな情報、友人の共有やヴィジョンの共有は、とても面白いです。関係性を作っていくには、その世界を理解したい思いと、その世界にいて自分のできることを見つけていくことでしょうか。
『ビジネスに不可欠なサイエンスとテクノロジーの知識をとことんまで追求していく番組PIVOT』。番組、ゲスト、視聴者、そして友人たちと関係を丁寧に結んでいるのだと感じました。北川拓也さん、茂木健一郎さん、竹下隆一郎さん、素晴らしい番組を見せてくれて本当にありがとうございます。
茂木さんの「あの、おでんみたいなメガネをかけた成田悠輔…」、おもしろかったです。「でも、成田悠輔の論文はめちゃくちゃ面白い。」とお墨付きをいただく成田先生。改めてすごいです!
※画像:© 記載以外全てPIVOTより
北川拓也氏のtweet紹介
北川拓也さんのツイートや解説もおもしろいです。
ぜひ Check it out!
PIVOTレポート 茂木健一郎氏vs北川拓也氏 前半はこちらです!
未来は、どんなAIが登場するのでしょうか・・?
»【ChatGPTの次の次は量子AI】
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