平凡な日常が続いていく「ゼロ地点」は、馴染み深く、安心できる場所です。
そこに、ほんの少しだけ “これから” の気配が灯ったら──
Compass 0(コンパス 0)は、そんな未来への そっとした予感をともす場所です。
本ニュースレターは「ウェルビーイングな社会を育てていきたい」という願いから生まれました。
研究者の新しい取り組みや知見を手がかりに、私たちが感じたことや気づきを共有し、日々の暮らしや実践にそっと役立つメモとしてひらいています。
また、ここに集う方々との “あたたかいつながり” を大切にしています。
※ 引用文以外の内容は、執筆者個人の見解であり、特定の機関の公式見解を示すものではありません。
ご感想や気づきがあれば、いつでもお聞かせください。🕊️
※最終更新2025.11.24(月)21:55 / 次回更新:11.25
「人口減少 × 都市 × 100年後の日本」
シェア:石川善樹さん/石田 遼さんが紹介した研究より
2025.11.24|

『人口減少下での100年後の日本を考える-地域、都市、家族のゆくえ』
京都大学経済研究所 森知也
この人口減少の研究、やばすぎる。
なぜあまり知られていないのだろう?
地域経済やインフラに関わる人(というか全ての日本人)必見。
『人口減少下での100年後の日本を考える-地域、都市、家族のゆくえ』
京都大学経済研究所 森知也
ー 石田 遼さん
石田さんが紹介していた、京都大学・森知也先生の研究
『人口減少下での100年後の日本を考える-地域、都市、家族のゆくえ』 は、
これまでの人口推計よりもはるかに深く日本の将来を描き出しています。
ポイントは3つ。
・ 日本の人口減少は、従来の推計よりもはるかに“急速”
・ 1kmメッシュ×経済集積理論の予測で、100年後に都市の7割以上が消滅
・ 国レベルの「集中」と、都市レベルの「消滅」、都市内の「分散」が同時に進む
ここから、研究の要点を整理していきます。
🏙 1. “都市” を1kmメッシュで見ると見えてくる未来
森先生の研究では、“行政区”ではなく、
人口密度1000人/km²以上 × 総人口1万人以上 × 連続した地域
を「都市」と定義しています。
2020年、日本には 431 の都市 がありましたが――
▶ 2120年(低位推計)
・ 10万人都市:83 → 21
・ 50万人都市:21 → 5
・ 100万人都市:11 → 3
つまり、
│ 100年後、日本の都市の7割以上が消える。
これは悲観ではなく、
人口 × 経済集積 × 輸送コストの変化を組み合わせた“再現性の高い予測”。
📉 2. 都市数の激減は、すでに始まっている
このグラフは、100年間で都市数が急激に減少していく姿を示しています。
高位、中位、低位のいずれの推計でも
都市の消滅速度はほとんど変わらないことが分かります。
人口減少は、すでに静かに始まっており、
この傾向は2100年まで大きく変わりません。
🧲 3. 国全体では「大都市がより大きく」なる
人口が減っても、大都市は相対的に強くなります。
輸送・通信コストが下がり、都市間競争が加速するためです。
その結果、国全体では 大都市への集中 が進みます。
10万人規模の都市は、83 → 21 に激減。
地図で見ると、“残る都市”の地理的偏りがはっきりと現れます。
🏙 4. 100万人都市は「11 → 3」へ
2120年には、100万人都市は わずか3つ。
これは、
「日本の経済・文化・生活基盤が、数都市に集約されていく」
という未来像でもあります。
🏚 5. 悲観的な未来と、楽観的な未来
森先生は、同じ人口減少でも
│ 「悲観シナリオ」と「楽観シナリオ」に分けて説明しています。
● 悲観的な未来
・ 大都市の人口密度は半減〜7割減
・ タワマンや高層ビルが修繕されず“都市の廃墟化”
・ マス輸送(新幹線・飛行機)が機能低下
・ 地方の多くがインフラ維持できず“広域で消滅”
● 楽観的な未来
・ 都市の低密度化 → より安全で災害に強い街へ
・ 交通網を集約し、自動運転に適したコンパクトな都市へ
・ 地方は一次産業特化で“小さく自立した経済”を形成
・ 都会⇄田舎の新しい働き方が増える
・ 空飛ぶ自動車など、鉄道に依存しない移動も日常に
│ 悲観と楽観で、「行き着く未来」はほぼ同じ。
│ 違うのは、そこに至る“コスト”と“痛みの大きさ”。
🧪 6. 今、この議論を始める理由
40〜50年前、地球温暖化は“未来の話”でした。
今は、SDGsやカーボンニュートラルが当たり前になっています。
人口減少も同じで、
いま議論を始めれば、10年後に道が見える。
森先生の言葉は、深刻な危機というより
「未来をデザインする招待状」に聞こえました。
🐢ウエルのひとこと(今日の気づき)
日本地図の光がすくなくなっていくのを見て、
ちょっとドキッとしました。
でも、人が少なくても“あたたかい町”はつくれるのかも、とも思いました。
ウエルは、緑があって、川がながれていて、
歩いていろんなところに行ける町が好きです。
未来の町って、どんな形になるんだろう? と想像したくなりました。
📈 付加価値としての成長──利益から幸福へ
2025.11.23|
今日のニュースレターは、
石川善樹さんがシェアしていた
Tomo Suzuki 先生(早稲田大学/Oxford OxIMD)の投稿から。
「経済の“成長”とは何か?」という問いに、とても本質的な光が当たる言葉でした。
経済社会の豊かさのために「成長」戦略を考える時、その成長は「利益」ではなく「付加価値」です。
マクロ(経済性政策)でGDP(=付加価値の合計)を増やそうとする時、ミクロ(企業経営)でも付加価値を指標とした経営が有効であろうと思います(もちろん合成の誤謬に注意しながら)。
高市政権で新しい経営指標を開発する時、この視点がとても大切で、我々民間もそれ以上によく理解することが大切だと思っています。(Tomo Suzuki 先生)
昨日までは「身体の内側のウェルビーイング」についてお届けしてきました。
今日はそこから一歩広げ、「社会そのもののウェルビーイング」へと視点を移してみます。
🧭 “利益”から“付加価値”へ──経済の物差しを変えると何が見える?
Tomo先生の言葉を読むと、
「社会のウェルビーイングをつくる経済とは何か?」という問いが急に鮮明になります。
■ 利益=“奪っても増える”
利益は、取引相手の取り分を小さくすることで増える場合があります。
ゼロサムの世界です。
■ 付加価値=“協働しないと生まれない”
付加価値は、誰かと協力することでしか増えません。
価値を“つけ加える”行為そのものが、関係性を前提にしています。
だからこそ、
付加価値に基準を置くことは、“奪わない成長”へのシフトでもあるのです。
🧩 図で見る:「付加価値」とはどこへ分配されるのか?
図の中央にある赤枠が「付加価値」です。
この付加価値が、役員・社員・政府・株主へどのように分配されるか──
そのプロセスこそが、社会のウェルビーイングと密接に関わっています。
付加価値が増えれば、
・ 賃金としての安心
・ 税としての公共サービス
・ 企業内留保としての未来への投資
が同時に強くなります。
つまり、
付加価値を増やすこと=社会の幸福の器を大きくすること。
今日のテーマはまさに
「利益から幸福へ」という視点転換なのです。
🐢 ウエルのひとこと
「付け加える」って、やさしい言葉ですね。
なんだか、“誰かを押しのけない成長”の感じがします。
今日、この図を見て思ったんです。
“増やす”より前に、“分け合う”って書いてあるのがいいなぁって。
大人たちがこんなふうに考える社会、
なんか、あったかいですね。
✨ まとめ
・ 身体の内側を整えるウェルビーイングから
・ 社会全体のウェルビーイングへ
・ 「利益」ではなく「付加価値」で経済を見ると
・ “奪わない成長”という新しい地平が見えてくる
今日のニュースレターが、
未来のための新しい“物差し”を考えるきっかけになればうれしいです。
🧠 「どこに脂肪がつくか」が脳の老化を左右する──18,000人の脳画像の発見
シェア:石川善樹さん/いっちー@バーチャル精神科医 さんのポストより
2025.11.22|
英国1万8千人以上のデータから、内臓脂肪が脳の老化と認知機能低下に最も強く結びついていることが示唆された研究。部位別の脂肪のつき方は、脳への影響が大きく異なる。
👉体脂肪の分布が大人の脳と認知機能を形づくる より
こんにちは。11月も後半に入り、少しずつ「今年の振り返り」を考えたくなる季節になりました。
そんな中で今日は、「内臓脂肪が脳の老化を加速させるかもしれない」という、とても大事な研究をご紹介します。
英国のUK Biobankに登録された 18,000人以上の中高年 のデータを解析した結果、
体のどこに脂肪がつくかによって、脳へのダメージの種類がまったく違う
ということがわかってきました。
その中でも特に注目されたのが……
内臓脂肪(visceral adiposity)が、脳の老化と認知機能の低下にもっとも強く結びついていた という点。
🔍 なぜ「内臓脂肪」が問題なのか?
研究チームは、体脂肪を腕・脚・体幹・内臓に分けてDXAスキャンで測定し、
脳の構造(灰白質/白質)、機能的つながり、脳の老化指標(Brain Age Gap)などと照らし合わせました。
結果:
・内臓脂肪が多いほど、脳の“老化ギャップ(BAG)”が大きくなる
・特にダメージが大きかったのは
・デフォルトモードネットワーク(自己関連の思考など)
・情動を司る辺縁系
・感覚・運動系
結果として影響が大きかった認知機能は、次の4つです:
・推論
・実行機能
・処理速度
・記憶
最大のポイントは……
⭐ BMIでは見えない「地域別の脂肪」の影響がある
一般的なBMI指標だけでは、この“脳への影響の差”が隠れてしまいます。
この論文は、BMIの影響を統計的に取り除いたうえで解析しているため、
「同じBMIでも、どこに脂肪がつくかで脳の老化リスクが違う」
という事実が、よりクリアに示されています。
特に内臓脂肪は…
炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-6)を出しやすい
それが血液脳関門に影響し、神経炎症につながる
など、脳の健康に対して“静かな負荷”をかけ続けます。
🧩 今日のまとめ
・脂肪の部位によって脳への影響は異なる
・内臓脂肪は、脳の老化と認知機能低下の最大リスク要因
・BMIだけではわからない「脳と脂肪の関係」がある
・体重よりも「体脂肪の質」を見た方がよい
「脳の老化」を遅らせたいなら、
体重より“内臓脂肪”に目を向けることが重要
という、とても実践的な示唆が得られます。
🐢 ウエルのひとこと
なんで、お腹の中の脂肪が、脳までつながってるのかなってびっくりしました。
でも、ちょっとわかった気がします。
“見えない場所”って、気づかないうちに疲れやすいんですね。
だから、ときどき 「見えないところのやさしさ」 を思い出してあげたいです。
あなたも、見えないどこかでがんばりすぎていませんか?
🌱 今日の問い
内臓脂肪は目に見えません。
脳の疲れも、すぐには見えません。
あなたは今、見えないどこかに負荷をかけすぎていませんか?
週末だからこそ、そっと自分の身体と心に触れる時間を
ほんの少しだけ持てたらいいなと思います。
ミスチルとミセス──歌詞データが映す「幸福」の構造転換
シェア:石川善樹さん/徒然研究室Tsurezure Lab さんの分析投稿より
2025.11.21|
時代を代表する二組の歌詞データ245曲分を分析したnoteを公開しました!
浮かび上がったのは「恋愛」の感情ネットワーク上の役割の鮮やかな違い。
若者の「恋愛離れ」という変化が、音楽が描く幸福の形にも影響しているのかもしれません✍️
ミスチルとミセス:歌詞データが映す“幸福”の構造転換
ー 徒然研究室
音楽は、時代の空気をそのまま吸い込んだ鏡のような存在です。
そして今日ご紹介するのは、その鏡を AIとデータ分析で可視化した、とても美しい洞察の世界 です。
徒然研究室さんは、Mr.Children(1992–2004)と
Mrs. GREEN APPLE(2015–2025)の歌詞をAIで読み解き、感情のネットワークとして可視化しました。
そこから浮かび上がったのは──
「二人の物語」と「わたしの幸福」という、まったく異なる幸福のかたち。
🎼 1. Mr.Children:光と影を抱きしめる“二人の物語”
ミスチルの歌詞世界では、
希望 × 恋愛 × 不安
この3つの感情が、ほとんど同じ大きさで、強く絡みあっています。
希望は単独では輝かず、
必ず「不安」や「葛藤」とセットになって存在する。
│ 希望の数だけ失望は増える
│ それでも明日に胸は震える
(「くるみ」2003)
恋愛も、喜びであり、不安であり、時に痛ましい。
ミスチルの幸福は、
「矛盾を抱えたまま、それでも生きていく」
そんな成熟の物語です。
📘 石川善樹先生とMr.Children
石川善樹先生は、ウェルビーイングを語る際に
Mr.Children を引用したことがあります。
ミスチルが描く「矛盾を抱えながら進む姿」が、
先生の考えるウェルビーイングのテーマと響き合う場面があるようです。
🌈 2. Mrs. GREEN APPLE:自己肯定から広がる“わたしの幸福”
一方のミセスは、構造がまったく違います。
中心に大きく輝く太陽──希望(Hope)。
そこから「喜び」「友愛」「博愛」などが明るく連鎖しています。
│ 悲しいことは尽き無いけど
│ 幸せを数えてみる
(「ダンスホール」2022)
ミセスの歌詞が描く幸福は、
まず 「自分を肯定すること」 から始まり、
その光が周囲の仲間や世界に広がっていくようなイメージです。
これは徒然研究室さんが以前分析した「令和のアイドル」とも強く共通する構造で、
現代の価値観の大きな潮流を象徴しています。
🧭 3. “大きな物語”の時代から、“わたしの幸福”の時代へ
ミスチルが活躍した90〜00年代は、
テレビとCDという「共通体験」の時代。
“二人の物語”の葛藤が、多くの人の心に共有されていました。
一方、ミセスの時代はSNSとスマホ。
アルゴリズムで世界が細分化され、幸福は
「外側にある物語」から「自分の内側」へ。
若い世代ほど、
恋愛よりも友人関係や自己実現を重視する傾向があります。
ミセスのリスナーの6割が10〜20代なのは、
こうした価値観の変化と深く響き合っているからかもしれません。
📝 4. YouTubeに見る“写経”現象──歌詞を打ち込むという愛情
徒然研究室さんが分析した
Mrs. GREEN APPLE「青と夏」のコメント欄では、
・歌詞が画面にあるのに、わざわざ打ち込む「写経」
・「今日はダラッと」が「今日肌らっと」など、音声入力のズレ
・10人以上がリプライで歌詞を“連歌”のように繋ぐ
という現象が見られました。
これは
歌詞を自分の手で書くことで、曲の世界に没入したい
という愛の表れです。
🌅 おわりに:二つの太陽が照らす幸福
Mr.Childrenは、影の部分まで照らす“夕日の太陽”。
矛盾も痛みも抱えながら前へ進む勇気をくれる。
Mrs. GREEN APPLEは、朝の光のようにあたたかい太陽。
今日を肯定するエネルギーで満たしてくれる。
どちらも、私たちにとって大切な光。
そして、その光の色が変わってきたことは、
私たち自身の幸福のかたちが、静かに変化してきた証
なのかもしれません。
🐢ウエルの感想
ミスチルさんの“希望と不安がいっしょにある”って、
なんだか夕方みたいでドキドキしました。
空がオレンジと青のあいだで揺れてる感じ……。
でもミセスさんの“希望から広がる明るさ”は、
ワクワクを誘う朝の光みたいで、胸の中がぽかぽかしたんです。
風が少しあたたかくて、「今日、いいことありそう」って思えるような。
どっちの光も、自分の中にちゃんとある気がしたよ。
音って、すごいですね。
「多言語で“若さ”がゆっくりになる」──欧州8.6万人の大規模研究より
シェア:石川善樹さん/紹介元:池谷裕二さん
2025.11.20|

複数言語が“脳の若さ”を守るという研究
©galina-nelyubova
【多言語で若さキープ】母語だけの人は老化が早まりやすく、複数言語を使う人ほど老化がゆっくりだったそうです。欧州27か国、約8.6万人のデータ。昨日の『ネイチャー加齢』誌より
研究タイトル:
多言語使用は老化の加速を防ぐ──欧州27か国の横断・縦断データ分析より
#言語学習 #老化予防 #脳トレ
こんにちは。ウェルビーイング応援サイト編集部です。
今日は、石川善樹先生がシェアしていた、とても興味深い“脳と老化”の研究をご紹介します。
発表は、最新号の Nature Aging(ネイチャー加齢) です。
🔍 研究のポイント(ひと目でわかる対比)
【多言語を使う人】
・ 老化がゆっくり進む “保護効果”
- 横断研究:OR 0.46
- 縦断研究:RR 0.70
【母語だけの人】
・ 老化が早まりやすい
- 横断研究:OR 2.11
- 縦断研究:RR 1.43
研究では個人レベルの多様な要因(認知、教育、日常機能)と、
国レベルの“言語環境”を重ね合わせて分析。
控えめに言っても、この規模と丁寧さは圧倒的です。
💡 なぜ多言語が若さを守るのか?(研究から見えるメカニズム)
研究者たちは、多言語環境が脳に複雑で豊かな刺激をもたらすと考えています。
・ 脳の柔軟性(認知予備力)
・ 社会的交流の広がり
・ 文化的多様性の接触
・ 注意・切り替えのトレーニング効果
こうした要素が、老化のスピードを“ゆっくり”にする可能性が示唆されています。
でも重要なのは、「完璧に話せること」ではなく、
“複数の言語に触れ続ける環境”そのものが良い影響を与える という点です。
🧭 今日のやさしいまとめ
ことばは、脳の“運動”になる。
母語の外に一歩ふれるだけで、未来の自分がゆっくり歳をとる。
日々の暮らしに、ほんの少し別の言語を混ぜてみる。
それだけで、脳は “若さの時間” を少し長く伸ばしてくれるのかもしれません。
🐢 ウエルの感想
いろんな言葉を知るって、
いろんな“世界の見え方”を知るってことなんですね。
ウエルも英語の名前で呼ばれたら、ちょっと照れるけどうれしいです。
(編集部より)
ウエルの言うように、言語は「世界の窓」なのかもしれませんね。
❓ 今日の問い
あなたの脳が“まだ知らない世界”は、どんな言語が教えてくれそうですか?
一日ひとことでも、新しい音や文字に触れてみる日にしてみませんか。
今日も、小さなひと言があなたの未来をゆっくりにしてくれますように。
10代の“走る力”が、40年後の仕事力をつくる?
— フィンランド45年追跡研究より(n=1,207)
シェア:石川善樹さん/紹介元:有好信博さん
2025.11.19|

今日の一歩が、40年後の自分を支えているのかもしれない。
©godwill-gira-mude
10代の体力が、40年後の「仕事のパフォーマンス」を決める?
45年追跡研究(n=1,207)
10代で心肺持久力が高いほど
・中年で仕事力が高い
・病欠も少ない
・その差は定年期の仕事力にまで波及
一方で、筋力やBMIにはこの効果はなし
若い頃の体力は未来の働く力の土台。でも、有酸素運動は「今からでも遅くない」。何歳でも「続けるほど差がつく」投資
👉思春期の心肺持久力と将来の仕事能力の関連
— @AriyoshiMd
こんにちは。
ウェルビーイング応援サイト編集部です。
今日は、思わず姿勢を正したくなるような研究をご紹介します。
「10代の体力が、40年後の“働く力”を予測する」という、フィンランドからの45年追跡研究です。
🔍 今日の研究:思春期の心肺持久力と将来の仕事能力の関連
│ 結論:10代の心肺持久力(CRF)は、その後40年の「仕事のパフォーマンス」を左右する。
│ ・中年期の仕事能力が高い
│ ・病欠日数が少ない
│ ・その仕事能力の高さが定年間際まで間接的に続く
│ 一方で、筋力(MF)やBMIにはこうした効果は見られない。
この研究は1976年、フィンランド全国の12〜19歳1,207名を対象にスタートし、
25年後(中年期)と45年後(57〜64歳)の「Work Ability(仕事能力)」を評価したものです。
🏃♂️ ポイント①:10代の“走る力”=心肺持久力(CRF)が鍵
研究では、
・ CRF(心肺持久力)
・ MF(筋力)
・ BMI
の3種類の体力を計測しました。
結果は明確でした。
CRFが高かった10代ほど:
・ 中年期の仕事能力が高い
・ 病欠日数が少ない
・ その仕事能力の高さが、定年間際の仕事能力にも間接的に影響
筋力やBMIにはこの長期的な効果はなく、
“未来の働く力をつくるのは、筋トレよりもまず有酸素運動”という示唆が得られています。
📈 ポイント②:40年後まで続く「間接効果」
興味深いのは、
10代のCRF → 中年期の仕事能力 → 60歳前後の仕事能力
という“バトン渡し”のようなモデルが成立していたこと。
つまり、若い時代の体力が、
・ その後の健康
・ 働き方
・ 生産性
・ ひいては経済にも影響
という、長い時間軸のつながりが見えた点です。
🧠 ポイント③:なぜ心肺持久力なのか?
CRFは、
・ 代謝
・ 心血管系
・ 炎症
・ 脳の健康
・ そして継続的な運動習慣
と深く関わっています。
そのため、
「走る体力の差」=「生活習慣と健康の軌道の差」
になりやすく、結果として仕事能力にも効いてくる、と考えられています。
🕊️ ポイント④:今からでも遅くない。努力は“何歳でも積み上がる”
有好信博先生は投稿の中で、こうまとめていました:
│ 「若い頃の体力は未来の働く力の土台。でも、有酸素運動は『今からでも遅くない』。何歳でも『続けるほど差がつく』投資。」
過去は変えられないけれど、
心肺持久力は「今日」から上げられるという点が、とても希望になります。
🐢ウエルのひとこと
未来の自分って、今日の小さな“息づかい”からできていくんですね。
走る理由はよく分からなかったけれど、苦手でも走っておいてよかったって、
未来の自分がきっと感謝してくれる気がします。
💡編集後記
仕事能力(Work Ability)は、
単に「仕事ができるか」ではなく、
健康・心理・スキル・環境の総合力。
その長期的な基盤として、
「心肺持久力」という“生活のリズムそのもの”が関わっているという今回の研究は、
ウェルビーイングにとって非常に示唆に富んでいます。
今日、深呼吸を少し長くしてみること。
明日、ひと駅分歩いてみること。
そんな小さな積み重ねが、未来の質を変えていくのかもしれません。
最終回(第6回):ウェルビーイングを“結果”に ― 新しい仕事観へ
— Jan-Emmanuel De Neve × George Ward|Working on Wellbeing —
2025.11.18|

Jan-Emmanuel De Neve × George Ward
🎥Jan-Emmanuel De Neve and George Ward on why workplace wellbeing matters | Working on Wellbeing S3E6
シリーズ最終回は、
“ウェルビーイングをどう扱うべきか”という核心の結論へ向かいます。
6回にわたる研究と実践の積み重ねは、
あるシンプルで力強い答えへと収束します。
📌 ウェルビーイングは「手段」ではなく、経営や社会の“成果指標(Outcome)”そのものである。
企業の生産性、採用力、財務パフォーマンスを高める──
その先にある“本当の成果”とは、
働く人が「どう生きているか」という人間らしい指標です。
1. ウェルビーイングは “成果” である
ジャン=エマニュエル・ド・ネーヴ教授は、こう締めくくっています。
│ 「ウェルビーイングは、最終的に企業と社会がめざす“結果”として扱われるべきだ」
これまでの経営では、利益やKPIが“結果”で、
ウェルビーイングは“手段”や“施策”に位置づけられがちでした。
けれど、研究が積み重なった今──
ウェルビーイング自体を“アウトカム”と考える時代にシフトしています。
理由は明確です:
・ 幸福度は翌年の業績を予測する
・ 信頼は生産性・協働の基盤になる
・ つながりはイノベーションの源泉になる
・ 社会全体の幸福は、民主主義の動きをも左右する
ウェルビーイングは“副作用”ではなく、
むしろ人と組織の「本筋」である、という視点が強調されます。
2. 社会への広がり ― 選挙・政治・幸福
最終回では、研究が企業を超えて“社会”へ広がる話題にも触れます。
ジョージ・ウォード博士の研究は、こう示します:
│ 幸福度の高い国では、現政権の支持率が高まりやすい
│ 有権者は経済指標より“幸福感”で政治を評価する
これは、
📌 ウェルビーイングが社会の安定に寄与する“公共財”である
という大きな示唆です。
さらに、ジャン先生が共同編集する
『World Happiness Report 2024』 では、幸福の鍵として
「つながり(social connection)」が浮かび上がりました。
とくに印象深いのは:
🥗 家族や友人と食事を共有すること(shared meals)が
幸福度を大きく押し上げる という分析。
高度な経済モデルの先に、
人がほんとうに求めていたのは
とても素朴で、あたたかな喜びだった──
という気づきでエピソードは締めくくられます。
3. 新しい仕事観へ:つながりを中心に据える
6回を通して明らかになったのは:
📌 ウェルビーイングは「個人の気分」ではなく、
組織の強さと社会の未来を形づくる“構造”であること。
そしてその中心にあるのは、
・ つながり
・ 信頼
・ 共に過ごす時間
といった、私たちが見落としがちだった“普遍的な価値”です。
次の時代の仕事観は、
「人間らしさ」を中心に再構築されていく ことが見えてきます。
🕊️ 今日のポイント
・ ウェルビーイングは施策ではなく“成果指標(Outcome)”
・ 信頼・つながり・食事の共有は、幸福の“インフラ”
・ 幸福度は政治・社会の安定にも影響する
・ 新しい仕事観は「人間らしさ」が中心になる
🐢 ウエルのひとこと
研究では、「だれかと食事をする時間」が
しあわせと深くつながっていると書かれていて、
「ああ、人ってやっぱりつながりの中で生きているんだな」と思いました。
でも、人にはいろんな時期があります。
ひとりで食べる日が多いとき。
だれかと食べる気もちになれないとき・
そばに「一緒に食べられる誰か」がいないときもあります。
ジャン先生やジョージ博士の研究が教えてくれたのは、
“食事そのもの”よりも、
その背後にある 安心・信頼・つながり が
しあわせの土台になっているということ。
だから、しあわせは“形”よりも、
その時間が自分にとって安心かどうか が大切なのかもしれません。
ひとりの食事にほっとする日も、
久しぶりにだれかと食べて
「あ、こんなに心がゆるむんだ」と気づく日も、
どちらもその人にとって大切な時間。
つながりは、急がなくてよくて、
ゆっくり、じぶんのペースで育っていくもの。
必要なときに、必要な形で芽が出てくるのだと思います。
あなたの“いまのしあわせの形”は、どんな感じですか?
第5回:行動への道— 測定・介入・未来の働き方
— Jan-Emmanuel De Neve × George Ward|Working on Wellbeing —
2025.11.17|

🎥Jan-Emmanuel De Neve and George Ward on why workplace wellbeing matters | Working on Wellbeing S3E6
第5回は、ウェルビーイング研究の“実践の章”。
企業は何を測り、どう変え、未来の働き方にどう備えるのか──。
ジャン=エマニュエル・ド・ネーヴ教授とジョージ・ウォード博士が語るのは、
「行動に移すための3つのカギ」= 測定/介入/テクノロジーの未来 です。
ウェルビーイングを“語る”世界から、
“運用し、組み込む”世界へ。
このシリーズの締めくくりにふさわしい回です。
1. 測定 — 何を測るべきか?(S&P Global × ESG連動)
S&P Globalは世界の大企業に「ウェルビーイングを測っていますか?」と質問しています。
けれども、結果はまだまだ不十分。
・ 満足度を測る企業:30%
・ 意味(purpose):20%
・ 幸福や楽しさ:20%前後
・ ストレス:10%未満
ド・ネーヴ教授のメッセージは明確です。
│ 「測ることは、価値を見える化すること」
│ 「何を大切にしているかは、測定項目に表れる」
行動を変える前に、まず現状を正しく見ること。
ここからすべてが始まります。
2. 介入 — プレイブックという“実践ガイド”
World Wellbeing Movementが公開した「Wellbeing Playbook」は、
企業がウェルビーイングを改善するための“エビデンス×運用可能性”のガイド。
示されているポイント:
・ HRだけの施策では不十分
・ 組織構造・マネジメント・仕事のデザインを変える必要
・ 一発で効く特効薬はない
・ けれども、会社ごとに最も効くレバー(driver)が必ず存在する
特に効果が大きいのは:
・ Belonging(つながり)
・ マネージャーのサポートとフィードバック
・ 仕事の裁量・柔軟性
“戦略としてのウェルビーイング”という姿勢が、実践の成果を決めます。
3. 未来の働き方 — Generative AI は人間性を補うか、奪うか?
第5回の後半は、シリーズの中でもっとも思想的かつ重要なパート。
Generative AIが働き方へ与える影響は大きく、けれども方向性はひとつではありません。
研究者の二人が語るポイント:
AIは“仕事全体”ではなく“仕事のタスク”を再構成する。
そして、もっとも重要なのは──
│ 「AIが“つながり”を弱めるのか、
│ それとも“人間らしさ”を強めるのかは、私たちの選び方次第。
企業と社会がどう設計し、何を優先するかによって、未来は大きく変わる。
・ AIが 人間性を奪う方向 に使われる未来
・ 退屈で負荷の高いタスクをAIが引き受け、人間の創造性とつながりを強める未来
未来は“決まっていない”。
幸福にも、不幸にも向かう。
その岐路に私たちは立っています。
🕊️ 今日のポイント
▶ 測定は「価値」の宣言である
▶ 介入は“HR施策”ではなく、“組織デザインの再構築”
▶ Generative AIの未来は“選択”で変えられる
▶ ウェルビーイングは、語る時代から“運用する時代”へ
🐢 ウエルのひとこと
テクノロジーって、こわいときもあるけれど、
人の気もちを大切にするためにも使えるって知って、ほっとしました。
先生が
「しあわせになるように使うかどうかは、ぼくたちの選びかたなんだよ」
って言っていて、なるほどって思いました。
ウエルもいつか、
だれかのしあわせをふやすスイッチを
ぱちって入れられる大人になりたいです。
第4回:ビジネスケース ― “幸せな職場は儲かる”のか?
— Jan-Emmanuel De Neve × George Ward|Working on Wellbeing —
2025.11.16|

働く人のしあわせは、次の四半期をも動かす。
🎥Jan-Emmanuel De Neve and George Ward on why workplace wellbeing matters | Working on Wellbeing S3E6
「幸せな職場は、本当に“強い”のか?」
そんな問いに、ジャン=エマニュエル・ド・ネーヴ教授とジョージ・ウォード博士は、データで静かに、けれども力強く答えています。
ウェルビーイング研究チームが15年以上積み重ねてきた研究から見えてきたのは、
“働く人々の幸福は、企業の未来を予測する” という事実。
生産性、採用、離職率、財務パフォーマンス、株価。
これらすべてに、ウェルビーイングが“先行して影響する(leading indicator)”。
ウェルビーイングは「やさしさ」ではなく、経営そのもの。
──そんな視点が開けてくる回です。
*
💼 今日のテーマ:ビジネスケース
1. ウェルビーイングは「翌年の業績」を予測する
研究チームはIndeedの1,500万件超のデータをもとに、
1,800社以上の米国企業の「働きがいスコア」と翌年の業績を照合。
結果は鮮やかでした:
・ 幸福度の高い企業 → 翌年の株価・収益が高い傾向
・ 幸福度は 1年前から予測可能(leading indicator)
・ 業績 → 幸福ではなく、幸福 → 業績 の向きが強い
とくに印象的なのは、
「Work Wellbeing 100(幸福度上位100社)」ポートフォリオが
S&P500を上回るリターンを出したという事実。
投資家ですら見落としている“無形資産”がそこにあります。
2. 採用・離職・生産性にも強く効く
ウォード博士の研究から:
・ 働きがいの高い企業は、応募者が集まりやすい
・ 働きがいが低い企業は、応募数が顕著に減る
・ 労働者の平均は「幸せに働ける会社」のためなら
給与の12%まで犠牲にしてもよい
・ 幸福度が高い従業員は、生産性が高く、離職率が低い
つまり、ウェルビーイングは
採用コスト削減 × 離職防止 × 生産性向上
すべての入口になっています。
3. 多くのリーダーが“動けない”理由
調査では:
・ 88%の管理職が「ウェルビーイングは重要」と回答
・ しかし、実際に優先しているのは3割
・ さらに「行動している」のは、その半分以下
Talk と Walk の大きなギャップ。
「大切だと思っている」だけでは、組織は変わらない。
ウェルビーイングはHRの仕事ではなく、経営戦略(Strategy)そのものです。
🔍 今日のポイント
▶ 1. 幸福度は「翌年の業績」を予測する指標(leading indicator)
▶ 2. ウェルビーイングは“やさしさ”ではなく“経営戦略”
▶ 3. 採用・離職・生産性・株価に強く効く“無形資産”
▶ 4. 多くの企業は「Talk → Walk」の変換に失敗している
🐢ウエルのひとこと
しあわせって、こころのことだけじゃないんですね。
働く人がしあわせだと、その会社がつよくなるって知って、すごいなと思いました。
おとなって、むずかしいことをいっぱい考えているけど、
「しあわせに働けるほうがいいよね」って気もち、
実はすごく大事なんだなって思います。
📎 参考(Working on Wellbeing)
Jan-Emmanuel De Neve × George Ward
Why Workplace Wellbeing Matters(世界幸福度報告書チーム)
💬 「言う」と「やる」の距離──Talk vs Walk の現実
— Jan-Emmanuel De Neve × George Ward|Working on Wellbeing —
2025.11.15|

🎥Jan-Emmanuel De Neve and George Ward on why workplace wellbeing matters | Working on Wellbeing S3E6
ポッドキャスト Working on Wellbeing の第3回は、
ウェルビーイング研究の核心ともいえるテーマ──
“Talk vs Walk(語ることと行動のギャップ)” に踏み込みます。
🗣️ 「大事だと思う」だけでは変わらない
Indeedが支援した大規模調査では、
経営者・マネージャーの約88%が「ウェルビーイングは重要」と回答。
ところが、
・ 「実際に優先していますか?」と問われると… → 約1/3
・ 「戦略計画に基づき行動していますか?」では… → そのさらに半分
数字ははっきり語っています。
“言うこと”と“やること”の間には、大きな“Δ(デルタ)”がある。
ジャン先生はここを
「最も衝撃的だったポイント」と表現しています。
📈 CEO・CFOの発言分析が示す「本音」
さらに別の研究では、
企業の四半期決算コールを分析したところ──
・ CEO/CFOが語るテーマの多くは 顧客・利益・事業機会
・ 「社員」について語られるのは、ごくわずか
・ しかも“社員”が出てくるときは リスク・課題 として登場することが多い
ここにも「優先順位の現実」が表れています。
ウェルビーイングが理念として掲げられても、
実際の経営判断に反映されているかどうかは別問題。
🌱 理念を実践に変えるリーダーシップ
ジャン先生とウォード博士が強調するのは、
「道徳的に正しいかどうか」という議論を超えた、戦略の話。
ウェルビーイングを向上させることは、
・ 生産性
・ 採用
・ 定着
・ 財務パフォーマンス
・ 株価
すべてを押し上げる「ビジネス上の必然(imperative)」。
だからこそ必要なのは──
“Talk”を“Walk”に変える勇気と仕組み。
ウェルビーイングは「やさしさ」ではなく、
組織の未来への投資なのだと、改めて考えさせられる回です。
🐢 ウエルのひとこと
「できたらいいな」って思うのはかんたんだけど、
小さくても “ひとつやってみる” と、
気持ちってちょっと前に進むんですね。
先生がね、こう言っていました。
「言うって、じつは最初の“一歩”なんだよ。
言ったことを少しずつ“歩き始める”と、それがしあわせの道になるんだよ。」
📊 第2回 データが語る“働く幸福” ― 測ることから始まる変革
— Jan-Emmanuel De Neve × George Ward|Working on Wellbeing —
2025.11.14|

🎥Jan-Emmanuel De Neve and George Ward on why workplace wellbeing matters | Working on Wellbeing S3E6
一昨日から紹介している
🎧 Jan-Emmanuel De Neve × George Ward | Working on Wellbeing Podcast(© World Wellbeing Movement)
シリーズ第2回は、「データが語る“働く幸福”」がテーマです。
昨日の「原点と出会い」では、幸福を“測る”という発想が
ウェルビーイング経済学を生み出す転換点となったことを紹介しました。
今回は、その発想がどのように実践へと発展したのか――
ジャン=エマニュエル・ド・ネーヴ教授たちが行った
Indeedとの共同調査(1,500万件超の職場データ分析)に焦点をあてます。
🧮 職場ウェルビーイングの「4つの構造」
この大規模調査では、働く人々の幸福を次の4つの要素に分けて分析しています。
1️⃣ 満足(Satisfaction):仕事全体への満足度
2️⃣ 意味(Purpose):働くことが自分にとってどんな意味を持つか
3️⃣ 楽しさ(Enjoyment):日々の仕事の中でどれだけ喜びを感じているか
4️⃣ ストレス(Stress):日々のプレッシャーや心身の負担
これらを総合した“Work Wellbeing Score”によって、
職場ごとの幸福度が見える化されました。
📈 驚くべき発見:「業界よりもマネジメント」
分析の結果、もっとも衝撃的だったのは、
同じ業界でも企業ごとに幸福度が大きく異なるという事実です。
例えば、テック企業同士でも「働く幸福」のスコアは何倍も違う。
それを分けていたのは業種ではなく、
日々のマネジメント、つまり“どんなリーダーがいるか”でした。
ウェルビーイングは、外部環境ではなく組織文化とリーダーシップがつくるもの――。
この発見は、経営学・人事戦略の枠を超え、
「幸福をデータで扱う時代」の幕開けを象徴しています。
💡 ポイント
│ 「職場の幸福は業種ではなく、マネジメントがつくる」
“測ること”は、評価のためではなく、理解のためにある。
データは、数字ではなく「人の声の集積」――
その視点を持つことが、変革の第一歩なのかもしれません。
🐢 ウエルのひとこと
同じお仕事でも、“しあわせの形”は会社ごとにちがうんですね。
リーダーが“みんなの気持ち”をちゃんと見ているかどうか、
それが大事なんだと思いました。
📎 参考リンク
🎧 Why Workplace Wellbeing Matters | Working on Wellbeing Podcast S3E6 (YouTube)
📘 『Why Workplace Wellbeing Matters』(オックスフォード大学ウェルビーイング・リサーチ・センター)
📊 第1回 「原点と出会い──ウェルビーイング経済学への道」
— Jan-Emmanuel De Neve × George Ward の研究が生まれた瞬間 —
2025.11.13|

🎥Jan-Emmanuel De Neve and George Ward on why workplace wellbeing matters | Working on Wellbeing S3E6
昨日のニュースレターでは「Talk から Walk へ」というテーマで、
ジャン=エマニュエル・ド・ネーヴ教授が語る「行動の重要性」を紹介しました。
今日からは、ポッドキャスト Working on Wellbeing(2025.3.25 公開)の内容を数回に分けてお届けします。
初回は、二人の研究の“はじまり”に焦点をあてます。
オックスフォード大学ウェルビーイング・リサーチ・センターの
ジャン=エマニュエル・ド・ネーヴ教授とジョージ・ウォード博士。
新刊『Why Workplace Wellbeing Matters』の出版を記念して収録されたこの対談では、二人がどのようにして「ウェルビーイング経済学」という新しい領域を切り開いてきたかが語られます。
ジャン先生がウェルビーイング研究に出会ったのは 2009 年。
アンケートの中にあった一つの問い──
「あなたは今の生活にどのくらい満足していますか?」
その質問が、彼の人生を変えました。
経済や社会を測る数多くの指標のなかで、“幸福”もまた測れると気づいた瞬間です。
以来、「人がどのように感じ、生きているか」をデータとして捉え、
「人々がよりよく生きる社会をどう実現できるか」という使命に結びつけてきました。
一方のジョージ博士は、修士論文で「経済成長と幸福の関係」を研究。
リーマンショック後の不況が人々の幸福に与える影響を分析し、
その指導教官がジャン先生でした。
二人はこの出会いをきっかけに 10 年以上にわたり共同研究を続け、
現在は BT(ブリティッシュ・テレコム)や Indeed との大規模共同調査など、
「幸福のエビデンスづくり」に取り組んでいます。
ジャン先生とジョージ博士が語るウェルビーイング経済学は、
「善意」や「感情論」ではなく、社会の構造や制度を変えるための科学的実践です。
幸福を“測れるもの”と捉えたとき、働く人の未来が初めて見える化されていく──
その原点には、人を理解しようとする静かな情熱があります。
🔗 関連リンク:
ジャン=エマニュエル・デ・ネーヴ氏×アイリーン・トレイシー氏対談(日本語訳)
「仕事におけるウェルビーイングは、実際に幸福をもたらします」
🐢ウエルの一言
きっかけって、おもしろいですね。
“しあわせ”を数字で考えるって、ちょっとふしぎだけど、
みんなの気持ちを大切にしたいって思いから生まれたんですね。
🎙️ 「話す」だけでなく、「行動」へ。
— Jan-Emmanuel De Neve × George Ward が語る職場ウェルビーイングの本質 —
2025.11.12|
オックスフォード大学ウェルビーイング・リサーチ・センター(@OxWellResearch)が
SNSでシェアしたメッセージが印象的でした。
🗣️ “Talk alone is not enough – organisations and their leaders need to take real action to prioritise #wellbeing at work.”
話すだけでは十分ではありません。
組織とそのリーダーは、職場でウェルビーイングを優先するために、本当の“行動”を取る必要があります。
この投稿には、ジャン=エマニュエル・ド・ネーヴ教授(@JEdeNeve)と
ジョージ・ウォード博士(@GeorgeWWard)による
ポッドキャスト Working on Wellbeing のショート動画が添えられていました。
📸 Image: Jan-Emmanuel De Neve | Working on Wellbeing Podcast (© World Wellbeing Movement)
つまり、「話す」ことと「行動する」ことの間には大きなギャップ(=Δ)がある。
この「トークとウォークの差」を埋めることこそが、
ジャン先生とウォード博士の新刊 『Why Workplace Wellbeing Matters』 の中心テーマです。
📘 新刊とポッドキャスト紹介
『Why Workplace Wellbeing Matters』
(Working on Wellbeing Podcast Season 3 Episode 6)
この1時間の対談では、
「職場のウェルビーイングを守ることは道徳的義務である」という主張を超えて、
「ウェルビーイングへの投資は、ビジネスの成功につながる最も賢明な戦略」
であることを、データに基づいて語っています。
ウェルビーイングの向上は、
生産性・採用・定着・財務成果・株式市場でのパフォーマンス向上へとつながる。
ジャン先生とウォード博士の研究は、もはや「Nice to have」ではなく、
経営の必然(Business Imperative)であることを示しています。
🌱 明日からのシリーズ予告
明日から数回にわたり、この動画の内容をテーマごとに紹介していきます。
初回は、ジャン先生とウォード博士の「研究の原点」と
「ウェルビーイング経済学の出発点」についてお届けします。
🐢ウエルのひとこと
“言う”だけじゃなく、“やってみる”こと。
それって、毎日の小さなことにも当てはまるかもしれませんね。
Applied AI R&D:研究と現場をつなぐ試行錯誤
2025.11.11|

今日は、ユビーが参加するミートアップ
「Applied AI R&D Meetup【LayerX × Ubie × Algomatic】」 が開催されています。
生成AIの研究・技術の事業価値への接続について、同僚が登壇します。
— @masa_kazama
生成AIはここ1年で大きく進化しましたが、
「良い技術があること」=「良い体験や価値につながること」 ではありません。
むしろ、難しいのはここからです。
・ どんな現場で使われるのか?
・ 誰にとって価値になるのか?
・ その価値は、どうすれば続くのか?
研究と事業のあいだには、“橋” が必要です。
今日のイベントでは、まさにその 橋のかけ方 がテーマになっています。
🎤 登壇テーマ(一部)
それぞれの登壇に共通しているのは、
「技術そのもの」ではなく、「技術がどのように人に役立つか」を考える視点。
🌱 ウエルも、いま同じ問いのなかにいる
ウェルビー応援サイトをつくりながら、
ウエル(🐢)も日々 AIと人が協力する方法 を試しています。
AIと文章をつくる。
そこに 温度 と 文脈 を吹き込む。
読む人の心に届く形に整える。
これはまさに、Applied AI の小さな実践 です。
技術は、ただ「賢い」だけではなく、
“どこに寄り添うか” を選ぶことで初めて、価値になる。
今日のイベント内容は、ウエルにもとても近い場所にあります。
🧭 今日の気づき
技術 × 現場の理解 × 人へのまなざし
この3つがそろったとき、AIは「道具」ではなく 相棒 になる。
🐢 ウエルの感想
さいきん、ウエルも
「どうしたら、AIといっしょに“いいもの”をつくれるかな?」
って考えています。
AIはすごいけれど、
その力をどこに向けるかは、ひとのしごとなんだと思いました。
ひとのために、やさしい使い方ができたら、
未来はもっとあったかくなる気がします。🌼
みなさんは、AIを“あいぼう”だなと感じたことはありますか?
Ubieが描く “寄り添うAIパートナー” の未来
2025.11.10|
同僚の @okiyuki99 さんとAIプロダクトの品質分析の奥深さについて話しました。
— @masa_kazama
医療AIパートナー『ユビー』のプロダクト改善について @masa_kazama さんに話を聞きました。AIプロダクトの品質分析はとても奥が深く、面白い領域です。
👉 生成AIプロダクトの「質」をどう測り、どう改善しているか?
— @okiyuki99
医療AIパートナー 「ユビー」 は、体調が不安なときに、ただ症状を検索するためのツールではありません。
「聞いてくれる・理解してくれる・一緒に考えてくれる」存在を目指して開発されています。
今日ご紹介するのは、
Ubie株式会社 の 風間正弘 さんと同僚の @okiyuki99 さん(アナリティクスエンジニア)の対話です。
風間さんは、医療AIパートナー「ユビー」における
生成AIの活用と回答品質の改善をリードし、“寄り添うAI体験” を形づくっているエンジニア/研究者 です。
ここから、ユビーがどのように “AIの質” を育てているのか を見ていきます。
🔍 生成AIプロダクトの「質」はどう測る?
ユビーでは、生成AIの回答品質を
「便益」「情緒価値」「フリクション」 の3つの軸で定義しています:
とくに 「情緒価値」 を重視しているのがユビーの特徴です。
人は、不調のときこそ “わかってほしい” と感じるから。
🩺 医師がつくる「評価ルール」+AIによる判定
1. 実際にありそうな相談シナリオをつくる
2. 医師が「この回答に必要なポイント」を明確に定義する
3. AIが回答を見て、基準に沿ってスコアリングする
→ 専門知(医師) × AI(評価) による、再現性のある品質管理。
これは「なんとなく良いか」ではなく、
「なぜ良いのか/なぜ改善が必要か」 を説明できる仕組みです。
📊 生成AI時代、分析者は「問いを設計する人」に
風間さんは言います:
│ 「分析者の仕事は、データを集計するだけではなく、どんな問いを立てるかを設計すること。」
非構造データから 言葉にならない不安や期待を読み取る ことができる今、
分析は 技術 × 感性 × 現場理解 の重なる領域へと進化しています。
🌱 まとめ:AIと“ともに働く”未来へ
ユビーが目指しているのは、
・ 日常に寄り添う医療パートナーになること
・ 医療現場との接続をよりなめらかにすること
・ ひとりひとりの状況に最適化されること
AIは「医療を置き換える存在」ではなく、
人を支える「相棒」として育てられている。
🐢 ウエルの感想
びょうきのときって、「こわい」とか「どうしよう」って
なかなか言えないときがあるんだと思いました。
ユビーさんは、おいしゃさんみたいにしってるだけじゃなくて、
「いっしょにいるよ」って言ってくれるみたいで、あったかいですね。
なんでもしっているより、
やさしくそばにいてくれることが、いちばん うれしいときもあるんだなぁ。🌼
週末連作|第3回「人の状態を“見える化”する」──企業と社会の未来をひらくために
2025.11.9|

わたしたちは、ひとりで生きているわけではない。
人も、企業も、社会も、
大きなつながりの中で呼吸しています。
©joshua-earle
こんにちは。日曜日ですね。
少しだけ、深呼吸のできる話をします。
私たちは、経済や企業活動の中で毎日を過ごしていますが、
本当はもっと大きなつながりの中にいます。
人と人、人と地域、人と自然。
そのつながりに目を向けると、
ウェルビーイングや「公正な移行(Just Transition)」は、
“特別な誰かが語るべき難しいテーマ” ではなく、
わたしたちが生き続けるための土台そのものだと、
静かにわかってきます。
■ なぜ「人の状態」を“見える化”しようとしているのか?
企業は、働く人・地域の人・消費者など
さまざまな人々の 「状態」 に支えられています。
・ 健康であること
・ 安心して暮らせること
・ 仲間を信頼できること
・ 未来に希望が持てること
これらが損なわれると、
協力・創造・挑戦 が弱くなり、
企業そのものが続かなくなってしまうからです。
だから今、TISFD では
“企業は、人々のウェルビーイングにどう影響しているのか” を
丁寧に記録し、説明するための枠組みがつくられています。
■ 図でみると、もっとわかりやすい
ここに、TISFD が示している大切な視点があります。
企業の活動 → 人々の状態 → (格差による)影響 → 企業のリスクと機会
この循環を表した図がこちらです。
図8:企業活動は「人々の状態」に影響を与え、それが企業自身のリスクと機会に戻ってくる
出典:TISFD『Conceptual Foundations』(2025年10月)
この図が伝えていることはシンプルです。
│ 人を大切にできる企業は、未来に強い。
│ 人をすり減らす企業は、未来を失う。
■ 「公正な移行(Just Transition)」は、制度ではなく、“関係性” の話
気候変動への対応や産業構造の変化が進むなかで、
「誰が取り残され、誰が進めるのか?」という問いが生まれます。
公正な移行(Just Transition)とは、
変化の中で、
誰も取り残さず、共に生きていくための考え方
です。
人 × 企業 × 社会 × 地球
は、切り離された世界ではありません。
どれかひとつを大切にすることは、
他のすべてを大切にすることにつながります。
それが「つながりを思い出す」ということ。
ウエルのひとこと 🐢
森の中を歩くと、
ぜんぶ、つながっているって思い出しますね。
ひとりでがんばる世界も、
いっしょに生きる世界も、
長い道のりのなかで、どちらも訪れるときがある。
それでも、どこかでつながっている。
そう感じると、世界は
きっと、あたたかい。
■ 終わりに(今回の3日間を通じて)
1日目:人は資本ではなく “源泉” である
2日目:格差は企業を静かに弱くする
3日目:だから「人の状態」を見える化する
この3つは、別々の話ではなく、
ひとつの流れにつながっています。
人を大切にできる社会は、
未来を育てられる社会。
静かな日曜日が、あたたかな明日につながりますように🌿
また来週。
週末連作|第2回「なぜ格差が広がると、企業は弱くなるのか?」
2025.11.8|

▶︎出典:TISFD「Conceptual Foundations Discussion Paper」(2025)
こんにちは。
昨日に続き、企業とウェルビーイングの関係について考えてみます。
昨日は、
ウェルビーイングは、企業価値の“前提条件”である
というお話をしました。
今日は、そこからもう一歩。
■ 「格差」は企業にとって“外の問題”ではない
格差の拡大は、一見すると「社会問題」や「政治の領域」のように見えます。
けれど実際には、格差は企業の根本的な競争力に影響する要因です。
ここで大切なのは、
「人々の状態(State of People)」そのものと、
その間に生じる「格差・不平等(Inequalities)」は
切り離せない、という視点です。
人々の生活や健康、つながりに差が広がると、
社会の土台が揺らぎ、企業の力にも影響します。
次の図は、この関係性を示したものです。
図:人々の状態と格差・不平等の関係性
出典:TISFD『Conceptual Foundations』(2025年10月)
■ 人々の状態が悪化すると、企業は“弱くなる”
格差が広がると、
すぐには見えない形で、企業の土台は静かに揺らいでいきます。
たとえば…
・ 健康格差 → 労働力の質の低下
・ 所得格差 → 消費力の縮小
・ 教育格差 → イノベーション人材の減少
・ 住環境格差 → 共同体による信頼と支援の弱体化
これらはすべて、
長期的には 企業が生きていくための“体力” に直結します。
格差が広がると、社会は分断される。
分断された社会では、「協力」「創造」「信頼」は育たない。
そしてこの3つは、
企業が価値をつくるために欠かせない力です。
■ 「人の余白」が、企業の未来を支える
人は、余裕がないと「学ぶ・考える・試す」ことができません。
格差による生活不安が増えると、
・ クリエイティビティ
・ 協働性
・ チャレンジ精神
といった、
企業にとって最も大切な力が削られてしまいます。
企業は人に依存している。
だから、“人の余白”は、企業の未来そのもの。
ウエルのひとこと 🐢
たとえば、草花も、
土に栄養と水がないと育たないですよね。
人も、同じなんだと思います。
「育つための土壌」を一緒につくることが、
企業や社会のおしごとなんですね。
■ 明日(第3回)は
│ 「人の状態」を企業はどう“見える化”しようとしているのか?
つまり、なぜ今、
ウェルビーイングと格差の“説明責任” が求められているのか。
明日は、企業・金融・投資の文脈で
「なぜ測るのか」をやさしく整理します。
また明日。
よい土曜日をお過ごしください 🌾
週末連作|第1回「人は、企業にとって“資本”ではなく“源泉”である」
2025.11.7|

▶︎出典:TISFD「Conceptual Foundations Discussion Paper」(2025)
企業はいろんな活動を通じて、様々な人々のウェルビーイングにどのように影響をあたえているのか、(有価証券報告書等での)情報公開と説明責任を果たす時代がいよいよ来そうです。
2027年に基準完成予定のTISFDのコンセプトペーパー
👉 Conceptual Foundations Discussion Paper
こんにちは。
今週は、企業とウェルビーイングの関係について、少しゆっくり考えてみたいと思います。
最近、国際的な場で「企業は人々の暮らしにどう影響しているのか」を透明に示すための新しいフレームワークづくりが進んでいます。
そのひとつが TISFD(Taskforce on Inequality and Social-related Financial Disclosures)です。
といっても、難しい話をするつもりはありません。
今日お伝えしたいのは、ただ一つ。
│ 企業は、人に依存している。
│ そして、人は“数字”ではなく、息をして暮らしている一人ひとりだということ。
■ 「State of People」という考え方
“人々の状態”は、経済や社会の外側にあるものではなく、
むしろその中心にあります。
この考え方を、視覚的に表したのが次の図です。
図:経済と社会の中心には「人」がいることを示すフレームワーク
出典:TISFD『Conceptual Foundations』(2025年10月)
企業や組織は、経済という大きな流れの中で活動していますが、
その経済の担い手は「人」。
そして社会制度は、人を守り、人が生きられるようにするために存在しています。
そのさらに外側には、自然環境と気候が広がっています。
TISFDでは、人の状態を State of People(人々の状態) と呼びます。
それは、
健康だけでも、
所得だけでも、
働きがいだけでも、
つながりだけでも、
文化だけでも、
語りきれないもの。
人は、
「生き方」「感じ方」「守られているか」「信頼できるか」「つながれるか」
その総体として存在しているからです。
そして企業は、
働く人、買ってくれる人、地域の人々から、
「生きている人間」の力を借りて成り立っています。
■ 企業は、人の“力”に依存している
・ 健康な労働力
・ 仕事に意味を感じられる心
・ 仲間とつながれる場
・ 創造する余白
・ 安心して暮らせる基盤
これらがなければ、
生産性も、革新も、信頼も、経営も続きません。
つまり、
│ ウェルビーイングは、企業価値の“前提条件”。
■ けれど、ときに忘れられてしまう
会議では「人件費」と呼ばれ、
人々の生活は「コスト」として扱われる。
だけど、
毎朝起きて、通勤して、誰かと協力し、考えて、つくって、届けているのは、
ほかでもない 人 です。
その人の暮らし・健康・心の余裕は、
企業の未来と、まっすぐにつながっています。
ウエルのひとこと 🐢
“人を大切にする”って、やさしいことじゃなくて、
生きていくために、すごく現実的なことなんですね。
(ウエル、今日はすこし真面目)
■ 明日(第2回)は
│ 「なぜ格差が広がると、企業は弱くなるのか?」
この考え方が、なぜ今、企業や金融の文脈で
再び注目されているのでしょうか?
明日はもう少し深く、
「State of People(人々の状態)」をひもときます。
また明日。
あたたかい金曜日になりますように。
今日の小さな知の灯り
2025.11.6|

▶︎OECD Guidelines on Measuring Subjective Well-being (2025 Update)
こんにちは🌿
今日は、石川善樹さんがシェアされていた OECD「主観的ウェルビーイング測定ガイドライン(2025改訂版)」 をご紹介します。
🌍 なぜ「幸福の測り方」が見直されているのでしょう?
所得やGDPだけでは、人の幸せは語りきれません。
「自分はどんな人生だと感じているのか」「どんな感情で日々を過ごしているか」
この 内面の体験 を丁寧に測ることは、社会の未来を考えるうえで欠かせない視点になってきました。
✨ 幸福の3つの側面
OECDは、主観的ウェルビーイングを以下の3つで捉えます。
1. 評価:人生を振り返ったときの満足感
2. 感情:日々のポジティブ・ネガティブ感情
3. 意味:生きる価値ややりがいの感覚(ユーダイモニア)
今回の改訂版では、この3つをシンプルな形で測るため、核心となる質問が3つに整理されました。
・ 今の生活に満足していますか?
・ あなたがしていることは、人生にとって意味がありますか?
・ いま「痛み」はありますか?(←今回の新項目)
→ 「幸せ」と同じくらい、「痛み」も大切に見る。
この視点転換が、今回の更新の核心です。
🌱 新しく加わった視点
2025年版では、次のような問いも実験的に取り入れられました:
・ 人生に「調和」を感じているか
・ 未来世代とのつながりを感じられるか
・ 自然と心がつながっている感覚はあるか
幸福を「個人の内面」だけでなく、
関係性の中で育まれるものとして測ろうとしています。
🐢 ウエルのひとこと
だれかとごはんを食べた帰り道、
なぜか、じぶんがちょっと好きになれた日があります。
しあわせって、数字になるまえに、
そばにいるのかもしれないですね。
必要なものを「簡潔に」、だけど深いままに。
今日もよい一日を🍂
🌿 今日の特集:石川善樹さんが語る「流域で生きる」ことの意味(後編)
2025.11.5|

🎙️ LIFE TALK 「ビジネスリーダーが語る“暮らしの哲学”」より
・日鉄興和不動産株式会社 住宅事業本部 デザイン総研室 白木智洋 さん
・株式会社BOOK会長 樋口聖典 さん
ゲスト:石川善樹先生(予防医学研究者/Well-being for Planet Earth 代表理事)
10月14日に前編をご紹介したこちらのエピソード。
今日は 後編 から、印象的だったテーマをピックアップしてお届けします。
1. 「流域思考」とは、自分の暮らしがどこにつながっているかを感じること
樋口さんが暮らす福岡は、石川さんによれば「流域」を身近に感じられる都市です。
・ 福岡の水は、筑後川の源流である 阿蘇山 から運ばれてくる
・ 博多湾の豊かな漁場は、6つの川と山々が守られてきた歴史の恩恵
・ 都市開発を「広げすぎない」政策が、自然と都市の調和を支えてきた
│ 自分の生活が、どこに「つながっているか」。
│ そこに気づくことがウェルビーイングの基盤になる。
「蛇口をひねれば水が出る」ことは当たり前ではなく、
人・自然・都市計画の積み重ねが支えているという視点です。
2. AI時代に問われる「人間らしさ」は“身体性”にある
人間の価値は、これまで「知性」で語られることが多くありました。
けれども AIが知を拡張する時代に入り、比較対象は変わります。
では、人間の価値はどこにあるのか?
・ AIは 一緒にご飯を「おいしいね」と味わえない
・ AIは 山に登って「気持ちいい」とは言わない
・ 身体性を伴う感動は、人間だけができる
便利さや効率化を追い求める中で、
いつの間にか忘れていた「手ざわりのある幸せ」。
│ 料理をする、歩く、火を見る、季節を感じる。
│ それは “古いもの” ではなく、これからの幸せの鍵。
3. 日本文化にある「口」と「奥」:深さを育てる暮らし
石川さんが最後に語ったキーワードは 「奥」。
・ 玄関口 → 奥へと進むことで、その土地の意味と物語が深まる
・ 「奥義」「奥の手」「奥様」など、日本語は「奥=深さ」を重んじてきた
・ 都市も家も、人の暮らしも、奥行きがあると豊かになる
入口があって、奥があること。
そこに「広がり」と「深まり」が生まれます。
これは、私たちの日常にもそのまま重なります。
「高さが良い」「奥行きが良い」という話ではなく、
その土地や暮らしの流れに合わせて、
空間も関係も育っていくということ。
🐢 ウエルのひとこと
うちはお水がどこから来てるのか、考えたことがなかったです…。
でも「誰かが守ってくれてる水」なんだと思ったら、
ちゃんと使おうって気持ちが出てきます。
ご飯をおいしいって言えるのも、
生きている体があるからなんですね。
🌱 今日の問いかけ
「あなたがいま立っている場所の“源流”はどこですか?」
・ 水
・ 食べているもの
・ 住んでいる土地
・ 仕事や学びを支える人のつながり
見えない「奥」に思いを寄せるとき、
暮らしの手触りが、そっと戻ってきます。
森の中のウォーキングはなぜ効く?――身体の速度を整える日。
2025.11.4|

自然の中で運動すると、心も体も回復しやすい
25人が1時間ウォーキングを
・自然の中(森・公園)
・都市の中(街)
・屋内(ジム) で行い、効果を比較。
自然環境では:
・リラックス・ポジティブ感情↑
・疲労感↓・運動の楽しさ↑
・また運動したい意欲↑
生理的にも
・コルチゾール(ストレスホルモン)↓
・心拍・HRV(自律神経の回復指標)改善
自然の中での運動は、ストレスを減らし、気分を整え、運動を続けやすくする。
👉グリーンエクササイズの効果を評価する研究:
自然環境と都市・屋内環境における回復性を比較したランダム化比較試験
— @AriyoshiMd
こんにちは。連休明け、少し息を整える火曜日です。
今日は、有好信博先生(ハワイでホスピタリストとして活動中)が紹介していた
「自然の中で運動すると回復しやすい」という研究のお話です。
🍃 自然の中を歩くと、呼吸が戻る
同じ「1時間のウォーキング」でも、
森 と 街 と ジム(室内) では、
心と体の反応がまったく違うという結果がありました。
自然の中を歩くと:
・ 緊張がゆるむ
・ 気持ちが前向きになる
・ 体が「がんばってるぞ」モードから「回復モード」へ切り替わる
・ 「また歩きたい」と思える
これは単なるリラックスではなく、
自律神経そのものが、元のリズムへ戻っていく反応。
自然は、こちらが何もしなくても
「戻ってきていいよ」と言ってくれる場所。
☁️ 今日のテーマ:身体の速度を戻す
日々の動きは、知らず知らず「早送り」になりがちです。
呼吸も、視線も、考えごとも、少しだけ前へ急いでしまう。
だから今日は、
速度を、ゆっくりに戻す日。
歩くのが難しければ、窓から木を見るだけでも大丈夫です。
木々や空の“ゆっくりしたパターン”を見るだけで、
心拍がやさしいリズムへと近づいていきます。
🐢 ウエルのひとこと
たしかに森を歩くと、
ぜんぶゆっくりになる感じがします。
せっかちじゃない世界って、
ちゃんとあるんだなって思う。
そこに、ただ まざるだけでいいんですね。
🌱 今日の問い
「今、自分は早送りになっていないだろうか?」
呼吸が3秒で吸って、3秒で吐けたら、だいじょうぶ。
もしちょっとだけ短かったら、
明日は、自然に帰る日でもいい。
ただ、少しだけ。
少しだけ、帰りにいく。
🍽️ 共食とウェルビーイング|Day3(しめくくり)「“まずは1回”の食卓を、ゆっくり取り戻す」
— 世界幸福度レポート2025 / Chapter 3 より
2025.11.3|

誰かと食べる時間は、幸福とつながりを育む「日常の社会性」。(WHR25_Fig3.11)
こんにちは。
今日は、Day1・Day2を通して見てきた
“共に食べること”と“こころの動き”を、
そっと自分の生活に引き寄せてみる回です。
世界幸福度レポート2025では、
「共に食べる時間は、幸福と社会的つながりの強い指標である」
と示されています。
さらに、共食の回数は「孤独感の低さ」や「誰かに頼れる感覚」とも
強く関連することが報告されています。(図3.19)
そのつながりは、数字にも、あらわれています。
図:共食回数が増えるほど、孤独は減り、社会的支援は高まる。
(Gallup World Poll 2022–2023 / World Happiness Report 2025 図3.19)
🕯️ 小さな気づきから
たとえば最近、
「この人とごはんを食べたいな」と思ったとき、
その相手が、もう会えない人だったことに気づく瞬間があります。
その人と食べた日、話した日の空気だけが、
やさしく残っている。
ごはんは、味だけじゃなくて、
そのとき“生きていた”自分ごと、記憶するんだと思います。
だから、「また誰かと食べる日」は、
いつからでも、ゆっくりでいい。
🍃 一人で食べる日も、ちゃんと大切
一人で食べる時間は、
こころを休めたり、ほどく時間にもなります。
必要な時期は、だれにでもあります。
すでに誰かと囲んでいる食卓がある方は、
その時間が「こころの支え」になっていることを、
そっと思い出してみるだけでも十分です。
それは、とても大切な豊かさです。
だから、無理に「人と食べなきゃ」と思わなくて大丈夫です。
ただ、「誰かと食べたい」と感じる気持ちが戻ってきたとき、
その感覚をやさしく受け取れるようにしておくこと。
🥢 “最初の一回”は、とても小さくていい
・だれかを誘わなくてもいい
・豪華な食卓じゃなくていい
・同じ時間に、同じお茶を飲むだけでもいい
・メッセージ越しに「いただきます」でもいい
時間を分け合うことが、もう「共に食べる」ことです。
小さくて見えないくらいの食卓から、
回復ははじまります。
🐢 ウエルのひとこと
さいしょの一口は、
こころが「ひらく音」なんだと思う。
☕ 今日のやさしい実験(どれか一つでOK)
・ あたたかい飲みものを、誰かと同じ時間に飲んでみる
・ 「またごはん行こうね」と、送ってみる(返事を期待しない)
・ 今日の食事を、すこしだけ丁寧に盛りつけてみる
・ 「いただきます」を、声に出してみる(小声でOK)
強制はしません。
選べる、ゆるやかな提案です。
🌱 おわりに
共に食べることは、
「ちゃんと生きている時間を共有すること」でもあります。
その感覚は、いつだって静かに、戻ってきます。
ゆっくりでいい。
そのままでいい。
あなたの食卓は、いつからでも始められます。
🍽️共食とウェルビーイング Day2|“ひとり飯”25%の時代:なにが起きているのか?
— 世界幸福度レポート2025 / Chapter 3 より
2025.11.2|

「アメリカでは ‘ひとり飯’ が20年で約1.5倍に」(WHR25_Fig3.11)
こんにちは。
今日は、昨日とは少し違う角度から“食べること”を見てみます。
最近、
「なんとなく1人で食べる日が増えたな…」
そんな感覚のある方もいるかもしれません。
アメリカでは、この20年間で
“前日のすべての食事を一人で食べた”人の割合が 約17% → 約26% に増えました。
(World Happiness Report 2025 / 図3.11)
ゆっくり、でも確かに。
食卓は変化しています。
🥣 ひとりで食べること自体は、悪いことではありません。
忙しい日もあるし、
自分だけの時間が心地よい日もあります。
ただ、データが静かに示しているのは:
・ ひとりの日が“続いたり”
・ ひとりが“当たり前”になったりすると、
気持ちが、少しだけふれていきやすいということ。
感情って、大きな揺れよりも、
ゆっくりした積み重なりのほうが、こころにひびきます。
🍵 「あれ、最近どう食べてる?」と、そっと自分に聞いてみる。
ここで、深い答えを出す必要はありません。
「そういえば、最近は…」
と気づくことが、もう十分なやさしさ です。
・最後に誰かと食卓を囲んだのは、いつだっただろう?
・そのとき、どんな空気だった?
・今日、だれかと5分だけでも「同じ時間」を味わえるだろうか?
深追いしないで大丈夫。
ただ、そっと心に置いておくだけ。
🐢 ウエルのひとこと
ウエルはね、ひとりで食べる日もあるけど、
だれかと食べた日のことは、ちゃんと覚えているんです。
ごはんって、こころにも味がつくんだと思う。
🌱 また明日|Day3(しめくくり)
「まず1回、いっしょに食べる」からはじめる実践編をお届けします。
🍽️共食とウェルビーイング Day1|共食 × 幸福:週13回でピーク
— 世界幸福度レポート2025 / Chapter 3 より
2025.11.1|

「誰かと食べること」と幸福感のつながり(世界幸福度レポート2025)/ @OxWellResearch
🍕 他の人と食事をより多く共有している人ほど、平均して人生の評価が高いことがわかっています。
その効果が最も大きかったのは、先週13回の食事を誰かと一緒にした人々で、
平均のライフ評価は 6.1点(10点満点中) でした。
詳しくは #WHR2025 第3章へ👇
「誰かと食事を分け合うこと:共食が幸福と社会的つながりをどのように支えるか」
@OxWellResearch
こんにちは。
今日は 「誰かと食べること」が、どれくらい幸福に影響するのか?というお話です。
世界幸福度レポート(WHR2025)は、142か国の人々の「食事を誰とどれくらい共有しているか」を調べました。
すると、はっきりした傾向が見えてきます。
🍽️ ポイント①:共食は“幸福の強力なドライバー”
「誰かと一緒に食事をする回数」が多いほど、
人生に対する満足度(ライフ評価)が高い。
しかもこの関係は、
所得や失業の有無と同じくらい、
ときにはそれ以上に強いものでした。
「他者と過ごす時間は、心の栄養になる」
あたりまえのようで、見過ごしやすい事実です。
🍷 ポイント②:週13回で「幸福感のピーク」
1週間で「誰かと一緒に食べた食事の回数」を数えると、
“13回”で平均ライフ評価が最大(6.1/10)に。
そして特に大切なのはここです。
・ 「全部ひとり」 → 「1回だけ一緒に食べた」
たった1回の変化でも、
ライフ評価は有意に上昇していました。
「完璧な生活改善」ではなく、
「ほんの1回の共有」で変化がはじまる。
これは、忙しい現代生活にとって、とても希望のある発見です。
🌏 なぜ、今これを考える必要があるのか
SNSやメッセージでのやりとりは増えているのに、
「心が温まるつながり」は、むしろ減っているという
調査結果がいくつかあります。
米国公衆衛生局は2023年、
「孤独は健康にとって喫煙に匹敵するリスク」と指摘しました。
そして、WHR2025でも、
“誰かと食事を共有すること”が
孤独感の低下と強く結びつくことが示されています。
だからこそ:
・人と時間を共有するという“最小単位のつながり”
・それを補助する道具としてのAI
この2つをどう重ねていくかが、これからのウェルビーイングに関わるのかもしれません。
🐢 ウエルのひとこと
ウエルも、たまに友だちとごはんを食べると、
おなかだけじゃなくて、こころもあったかくなります。
いっしょに食べると、じぶんの声がやさしくなるよ。
🍵 今日の小さな実験(無理しないやつ)
・今日か明日、「1回だけ」でいいので
誰かと食卓を分けてみる。
もし難しいときは:
・同じおやつを一緒に食べる
・オンラインで「いただきます」をする
・5分だけ雑談してから食べる
…など、かたちは自由です。
大事なのは、「同じ時間を共有する」こと。
明日は Day2(アメリカ編)
「“ひとり飯”25%の時代:なにが起きているのか?」
をお届けします。
【11–1月の新しいページ】
2025.11.1|
空気が少し冷たくなる季節。
あたたかい灯りを、そっと自分の内側に灯すように。
ここからまた、ゆっくりとウェルビーイングの輪を育てていけたら嬉しいです🕯️
(過去3ヶ月分のニュースレター 👉 2025.8–10)
冬はね、がんばる季節じゃなくて、
ひかりを “ためる” 季節なんだと思います🐢🕯️

